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現れた名も無き旅団

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現れた名も無き旅団

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 廃棄物製作からしばらく後。
「……用意が出来ましたよ。実験でさぞお疲れでしょう。ゆっくりしませんか?」
 お茶会の準備が出来たエオリアが皆に声をかけた。
「する。なんか疲れたぁ」
「良い匂いだな」
 双子は事件を続けすっかり疲れていたためあっさりとお茶会の方に行った。
「ありがとう(煽るのはもういいかな。魔法薬の数も沢山だし)」
 美羽と
「あたし達も休憩よ(煽るのはここまでね)」
「えぇ(廃棄物はもう増やす必要はないから何とかして実験を中止させないといけないわね)」
 セレンフィリティとセレアナも休憩に入る事に決めた。
 その時、
「うわぁぁぁ」
 テーブルがある方から双子の悲痛な悲鳴。

 皆が悲鳴の方向に注目し
「植物が踊りながら二人に巻き付いてる!!」
 美羽が踊りながら生長する植物に巻き付かれている双子を指し示した。
「……植物だって」
 植物を愛するエースはすぐさま双子の元に駆けつけ
「二人共。無事かい?」
 二人の安否を確認すると
「これが無事に見えるかよ! まだ何にも入れてねぇのに」
「それ、本当か。何か生長してるぞ、ヒスミ」
 双子は内輪もめを軽くしていた。
「まずは大人しくして貰わないと」
 エースは『エバーグリーン』で暴走する植物を操り双子を自由にした後、『人の心、草の心』を有するエースは植物に話しかけて彼らを落ち着かせた。

 救出後。
「ふぅ、助かったぜ」
「一体、何だったんだ。ヒスミが何もしていないなら……」
 双子は救い出され安堵するが、キスミは誰の仕業か気になるのか小首を傾げていたが、
「ハーブティーを淹れましたよ。冷めないうちにどうぞ」
 エオリアの言葉と美味しい匂いに思考を中断し
「ん、あぁ」
「分かった」
 さっさと席に着いてしまった。
 しかし、
「……エオリアまで何さらりと暴走しているんだ。巻き込まれたのが双子で良かったものの」
 双子に対する様子からエオリアの仕業だと見抜いたエースは彼らに聞こえないように小さな声で呆れとついでに双子に対してまた親しみのある酷い事を口走っていた。実は付近にある双子作の魔法薬にエオリアがハーブ混入しその効果で植物系の暴走が起きたのだ。
「ちょっとした悪戯ですよ」
 エオリアもまた双子に聞こえないよう小さな声で言うなり微笑していた。エースがいるので大事にはならないと知ってやらかしたのだ。
 その間。
「ん〜、このタルト、うま〜」
 ヒスミはベリーのタルトを頬張り
「このスコーンもいけるな」
 キスミはスコーンを口に放り込み、表情を和ませていた。
 エースも席に着き皆と共にそれぞれお茶やお菓子を楽しみ、すっかり一息入れた。ただし双子以外の皆同じ目的を抱きながら。魔法薬製作中止にし速やかに回収する事を。

 お茶会中。
「良く考えたら、意図した効果暴走の悪戯薬とか装置を作れるのはある意味大した才能だよね。意図しない効果ランダムな物でも作るのは難しいのに。ほら、魔法系の物はレシピから外れると出来上がるのは大抵ガラクタだろ」
 エースはハーブティーで喉を潤しながら双子にとって予想外の事を口走り出した。
「何だよ、急に褒めて気持ち悪いな」
「何か魂胆でもあるのか」
 双子は食べたり飲んだりを一時中断し、険しい顔でエースを見た。
「そんなものはないよ。君達の魔法的才能はただ褒めているだけだよ。俺だってたまには褒めるさ」
 エースはカラカラと笑うなり、スコーンを頬張った。本日別の目的はあれど口にした言葉は嘘ではない。
「……それだったらありがたく貰うけど」
「どうも」
 双子は軽く受け取るなり中断していた飲食を再開させた。

 しばらく後。
「この後、あんた達はどうするの?」
 セレンフィリティが何気なくこの後の事を訊ねた。廃棄物化した魔法薬を回収するタイミングを作り出すために。
「作った薬を試したいところだな」
「そう言えば、息抜きしようって事でロズの研究が途中だったな」
 何も知らぬ双子は呑気なものである。
「……途中のものがあるなら、次はそっちを片付けた方がいいと思うよ?」
 エースはやんわりと双子に退室を勧め
「そうですよ。ここの片付けは僕達が引き受けますから」
 エオリアは実験後で荒れた室内の片付けを引き受ける旨を伝え
「大事な事なら放っておくのはよくないよ」
 美羽は力強い主張で言葉裏で退室を促す。
「まぁ、大事と言ったら大事かな。ロズと約束した事だし」
「ヒスミ、思いついたぞ。行き詰まってた所!」
 ヒスミは万一発生時は自分達双子が何とかするというロズとの約束を思い出しキスミは何かを閃いた。

 それにより双子はお茶会の後、この実験室を退室しロズの方の研究に戻り残った五人は速やかに室内を片付け本日作製しやり過ぎた魔法薬全てを回収し、エリザベート達に引き渡した。ちなみに学校に来ていた名も無き旅団が立ち去った後である。
 研究から戻り魔法薬の試薬をしようとした双子は物が消えている事に気付き、顔色を驚き、怒り、疑問にくるくると変えていたが、魔法薬の廃棄を終了させたエリザベート達に事情を聞かされ納得し、五人への文句は消えた。
 代わりに
「俺達が名も無き旅団結成の切っ掛けだって、すげぇな」
「やっぱり、オレ達は最高の双子だな」
 とても調子に乗った上に
「でもつまんねぇ薬だったらどうなるのか見てみたかったな」
「だよなぁ」
 エースが予想した事を口走っていた。
「調子に乗るでない。面倒な事を起こしてからに。元はと言えば……」
 双子の様子にアーデルハイトは長い長い説教を始め彼らから本日の元気を吸い取った。明日になったらどうせケロリとしていると分かっていても。