天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

ノクターン音楽学校

リアクション公開中!

ノクターン音楽学校

リアクション


エピローグ


「……大変素晴らしい数々のイベントであった。次が最後だというのはすこしばかり寂しい」
 郁乃たちのステージが終わり、カリキュラム上ではステージイベントは次で最後となっている。そのことに寂しさを覚えつつコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)はそう呟く。
「私の空虚な胸にも響き渡るような……そうは思わないか、ラブ?」
 感想を求めてパートナーであるラブ・リトル(らぶ・りとる)にそうコアは問いかける。
「……ラブ?」
 だが、その問いかけに答えは帰ってこない。ラブがいた場所を見るがそこにはラブの姿がなかった。
「いったい何処へ……むっ!? あのステージに上っているのはまさかラブ!?」
 パートナーの性格を考え間違いなく問題を起こすだろうとコアは止めようと思う。しかし悲しいかな。コアが止めようとした時にはすでにラブがステージに上がりきり、同時にステージの幕が上がっていっているのだった。

(ふっふっふ……。この可愛くて歌って踊れて可愛くてキュートで愛らしくて可愛くて歌が超絶最高に上手いラブちゃんをさし置いて開校イベントの最後を飾らせたりはしないわ)
 上がっていく幕を待ちながらラブは気合を入れる。そして幕が上がり、ステージに立つものの顔が見えるかどうかのところで声を上げる。
「うーっふっふ♪ このスーパーアイドル(自称)のラブちゃんこそが、ラストライブを飾るに相応しいとあたしは思うのよね! だからその場所を譲りなさい! さもなくば歌勝負よ!」
 ダダンと効果音がなりそうな感じでラブはそう言う。こう言えばどんな形であれラブがラストライブへと関わることができるという必勝の二段構えだった。
「あ、はい。ラストライブではありませんが、どうぞよろしくお願いします」
 そう言ってラブへマイクを渡すのはミナホ。
「……って、あなた誰?」
 マイクを受け取りながら首を傾げるラブ。本当ならそこには熾月 瑛菜(しづき・えいな)がいるはずなのだ。よく見るとパートナーのアテナ・リネア(あてな・りねあ)等バンドメンバーもおらず、代わりにアルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)鬼龍 愛(きりゅう・あい)の姿があった。
「この村の村長です。……とりあえず、このステージで歌ってください」
 そう言ってステージを降りようとラブから背を向けて歩き出すミナホ。
「ミナホさん、よろしいのでございますか?」
「すみません、私から誘ったのに……」
「いえ、アルティアは歌うのが好きなのでございます。だから、ステージで歌うことを楽しむだけなのでございます」
 アルティアはその言葉の通り、歌うことは好きだ。ただ、だからといって一人でステージに出ようと思うわけでもない。歌うのは別にステージじゃなくてもいいのだ。ステージを眺めているだけでアルティアは満足できた。それがこうしてステージに立っているのはミナホに頼まれたからだ。
「? おねえちゃん?」
「大丈夫ですよ。あいちゃんがここで頑張ればきっとおとうさんが見つけてくれます」
 愛にそう言ってミナホは完全に舞台を降りる。
「……えーっと……とにかくあたしは歌えばいいわけ? うーん、なんだか面倒なことになったわね」
 ラブとしては瑛菜との決闘をイメージしていただけにこんな形でマイクを渡されても困る。と言っても、そこは曲がりなりにもアイドルなだけあってすぐに気を取り直した。
「それじゃ、誰もが知ってる歌をアイドルっぽく歌うわね」
 そう言って伴奏もなしにその声一つで歌い始めるラブ。それにあわせるようにアルティアも透き通った声で合わせて歌う。
(がんばるの)
 愛はそう思いながらタンバリンを鳴らす。ステージに出たい。それはもともと愛のわがままだ。はぐれた父親に見つけてもらうため、ステージで目立てばいいんじゃないかと子供ながらに思った。それを形にしてくれたのがミナホだった。そのミナホは途中でいなくなってしまったが、そのミナホのためには頑張りたいと。

「……愛ちゃん、こんな所に」
 その頑張りを貴仁は見ていた。そしてそのステージが終わったら愛を褒めて叱って……精一杯愛してやろうと決めた。






「ミナホ、あんた歌わなくてよかったの?」
 ステージの裏。ラブたちが歌っている中。ステージを降りてきたミナホに瑛菜はそう声をかける。
「歌わなくてと言うか……多分、あの場にいても私は歌えなかったですから」
「ミナホちゃん、歌いたかったんじゃないの?」
「はい。歌いたいと思いたかったです。…………時間ですね。開校イベントの最後を飾るライブです、頑張ってください」
 瑛菜もアテナもミナホの言葉に引っ掛かりを覚えたが、観客を待たせるわけにもいかずステージへと上がっていく。
「……歌ってください。私だった子の願いの分まで」


「って、なんでラブちゃんステージ降ろされてるのよ!」
 流れで思わずステージを降りてしまったラブ。今度こそラストライブっぽいのでまたステージに上がろうとする。
「ダメだラブ。今はまだおとなしくしておくのだ」
「む、放しなさいよ」
 そのラブを捕まるのはコア。
「あたしはラストライブを飾るの」
「それなんだが、今やっているのはおそらくラストライブにはならない」
「? どういうこと」
「十中八九アンコールが入るだろう。ここで乱入するよりもそっちで乱入したほうが最後を飾った感じになると思うのだが」
「つまり?」
「譲歩するから今は我慢しろ」
「ぐぬぬ……ラストライブを飾るのは絶対にラブちゃんなんだからね」





「のぉ、菊媛。妾は、この学び舎の理念にはとても共感している」
 瑛菜とローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)が観客たちに挨拶をしている後ろでグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)上杉 菊(うえすぎ・きく)にそう話しかける。
「生前、戦乱の中に身を置いて来たゆえな――音楽を通じて共存を模索できるのならば、どんなにか素晴らしい事だったであろう。それが今日、かなうのだ。感慨深いものよな」
「ライザ様とわたくしは英霊。生前は25歳違いで生まれも全く違いました。おそらく、御方様との出会いや音楽を通じていなければ出会う事もなかったでしょう。音楽とは、誠に素晴らしきものとつくづく思います」
 本来ならあるはずのない邂逅。それを現実にしたのはこの地とローザマリア。そして音楽だと菊はそう思い伝える。
「うゅっ♪ みんなでいっしょに、たのしむのー!」
「うん。エリー、頑張って楽しもうね」
 エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)とアテナは仲の良さそうな様子で演奏が始まるのを今か今かと待っている。
 音楽を介した心の交流。それが始まるのを楽しみにしているのだ。
「っと、挨拶はここまでかしら。ライブ始まる前にこの映像を見て欲しいの」
 そのローザマリアの言葉を合図にステージの後ろに映しだされるのはニルミナスやノクターン音楽学校のPR映像だ。これはもともと宣伝の意味を込めて作られたものだが、同時にこの村やノクターン音楽学校の目指すべきところを分かりやすく映像にしたものでもあった。
(自分と瑛菜、生まれも育ちも何もかもが違う2人が、気づけばこうしてバンドを組んでいる……なんだか不思議ね)
 PR画像を瑛菜の隣で眺めながらローザマリアはそう思う。

 日本人の瑛菜
 アメリカ人のローザ
 
 容姿も所属校もバラバラで、音楽という共通点が無ければ交わることも無かったかも知れない2人。そんな2人を音楽は結び付ける事が出来た。

「ね、瑛菜。音楽の持つ無限の可能性。それを音楽学校の生徒に…………うぅん。もっとたくさんの人に知ってもらいたいわね」
「そのための道の一つがこの学校だろ?……あたしらならこの道の先にたどり着けるさ」
 ローザマリアの言葉に瑛菜はそう返す。
 そうしてPR映像は終わり、いよいよ演奏が始まる。
 それぞれの楽器を構えたことを確認してローザマリアは息を吸う。
(……大丈夫、あれだけ念入りにリハーサルしたんだから)
 何度も経験したこの緊張感。それを抑える一番の方法は経験とそれにともなう自信だ。

「「あたしの歌を聴けー!!」」
 
 瑛菜とローザの台詞が重なり、それを合図に彼女たちの演奏が始まるのだった。



担当マスターより

▼担当マスター

河上 誤停

▼マスターコメント

リアクション「音楽学校とニルミナスの休日」をお送りします。いかがでしたでしょうか。
今回、リアクションが大変遅れてしまい、申し訳ございませんでした。

今後の予定ですが、一応次のシナリオがニルミナスの最終シナリオという扱いにしようと思っています。
ニルミナスの大勢を決定づける話になると思いますのでよろしくお願いします。
滅亡エンド以外ではアフターシナリオとして1、2ほどガイドを公開できたらと思っています。ニルミナスでやり残したことがあればそちらで遂げていただけたらと。

今回の参加ありがとうございました。

▼マスター個別コメント