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爆弾魔と博士と恐怖のゲーム

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爆弾魔と博士と恐怖のゲーム

リアクション

 四角い箱は高速回転を初めて1分。
 回転は強まるどころか、突然静止し地面へと転がり落ちた。
 夕は金魚のように口をぱくぱくさせて、絶句した。
「どうしてだ!! 恐怖心は95%超えていたはずだ! エラーか!?」
「――俺の勝ちだな。佐々木 夕」
「ペーパ! お前の仕業か」
 暗闇からゆっくりと、白衣を着たペーパが現れる。
 夕はペーパを睨み付けた。

「ふっ、ビルが真っ暗なのはお前達のおかげか」
 ペーパはふと、ダリル達へ振り向く。
 ダリルはそれに「ああ」と答えた。
「おかげで気付かれなかったわけだ。今、何が起きてるのかお前達は知らないのだろう?」
「何?」
「外を見てみろ」
 夕はペーパ達を警戒しながらも外を見る。再び絶句した。
 夜空には大きなモニターが映し出されていた。
 しかも、その真ん中ではノーンが1人で歌っているのだった。

   §

 1曲歌い追えたノーンが不安そうに助手を見上げる。
「こ、これで良いのかな?」
「問題ありません、その『アイドル24・ザ・マイク』は使うだけで、みなさんの心に響いてるはずです」
 ノーンの周りにはずらりとスポットライトが現れ、動くはずのないテレビカメラが動いている。
 これも、ペーパの発明品だった。
「……変な発明品だね?」
「一時期、アイドルの追っかけやってた博士が作った、くだらない発明品です」
 コハクが質問すると、助手はため息交じりで答えた。。
 今、コハクと吹雪は、ペーパに頼まれこのステージを名状しがたい者達から守っている。
 おかげで、ノーンは名状しがたい者達に襲われず、歌に集中することが出来る。

「これももらえないでありますか!?」
「かまいませんよ、どうせ使い道はありませんし」
 なぜか吹雪は興奮していた。
 きっと、またテロリストとしての使い道が思いついたのだろう。

「ただし、この発明品も失敗作です。歌が下手な人が歌うと爆発します」
「なっ……それは素晴らしいであります!!」
「…………面白い人ですね」

 そして、ノーンは”幸せの歌”を歌い、”クリスマスキャロル”を歌う。
 それは空京中に流れる。
 空京中の人々から恐怖心は消えていく。

   §

「なんなんだこれは……」
「俺の発明品だよ。素晴らしいだろ? ただ歌を歌うだけで世界中を征服できる」
 いつの間にかモニターに映し出された、恐怖心ゲージの数値は0(ゼロ)だった。
 つまり、もう恐怖心はなく、町にも名状しがたい者達の脅威は無いことを現している。
「馬鹿げてる!! 何故邪魔する、何故お前だって――」

 その時だった、突然ビルの電気が付く。
 同時にペーパのポケットから電子音が鳴り響く。
 ペーパは小さい端末機を取り出すと、そこにはゆかりの姿が映し出された。
「ふっ、ご苦労だったなゆかりとやら」
「ペーパ、あなた何をたくらんでるの?」
 ペーパは電波塔に向かわせていたゆかりへ、労いの言葉を掛ける。
 だが、ゆかりはペーパを警戒する。
 ゆかりが向かった電波塔にあったのは、爆弾との通信機、空京をホラータウンへと変貌させた装置だった。
 だが装置だけではなく、ペーパの警アンドロイド、DDM−23の姿もあった。
 巨大な装置を解除できたのは、DDM−23の助けもあったからこそだった。
「……まあ、いいわ。なんとかなったわけだし」
「良くない!! 私のバイキング返せーっ!!」
 通話口の向こうからマリエッタの叫び声がするところで、ペーパは端末機のスイッチを切った。

「ちっ……くそぉ! くそぉっ!!」
「逃げるぞ!!」
 夕は後ろへと振り返り、部屋から逃げ出そうとする。
 だが、その先には美羽が立って居た。
「往生際が悪いよ!!」
 美羽は夕の足下へ目がけて、キックを繰り出す。
 夕はそれを避けると、ポケットの中から拳銃を取り出す。
「いい加減うっとおしんだよ、契約者の奴らも!!」
 だが、その拳銃は一発の銃弾がはじき飛ばした。
 夕の真横で、銃を構えて立って居たのは平助だった。
 途端、夕の足下でルカルカが投げた”チョコボーム”がはじけ飛ぶ。
「っ!!」
「確保っ!!」
 あっという間に夕はダリル達に取り押さえられ、ルカルカの手によって手錠が掛けられた。