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水着と海と触手もの リターンズ

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第二章 


 今から約五分前くらいのこと。

タコは次々と墨を吐き出して、配下を増やしていった。
 討伐に向かっていた秋月 桃花(あきづき・とうか)荀 灌(じゅん・かん)も触手に背後をつかれてその身を拘束されていた。
「は、離してくださいっ!」
 桃花は両手足を縛られて大の字にされて、豊満な胸を突くように弄ばれて顔を真っ赤にしていた。
 その羞恥心を煽るような触手の動きは乱暴に弄ばれるよりも桃花の心を強く揺さぶった。
「ちょ……やですっ! どこ触ってるんですかっ!」
 荀灌の方は桃花とは対照的に脇や足の指に至るまでなで回されていた。体中の敏感なポイントをしらみつぶしに探されているようで、荀灌の中には小さな恐怖さえ宿っていた。
「ヴォヴヴ!」
 頃合いとみるや、タコは二人に向かって墨を吐きかけると触手を解いて地面に下ろした。
 そして時間は今に至り、芦原 郁乃(あはら・いくの)は二人と対峙する羽目になる。
「えっと……桃花、荀灌?道開けてくれないかなぁ…」
「なりません郁乃様、タコ様に近づかせるわけにはいきません」
桃花が庇うように立ち塞がると、荀灌が楽しそうに笑った。
「お姉ちゃんもタコ様をまもりましょう?」
「どうしてもダメ?」
「「だめです」」
「そっか……それなら、覚悟してね?」
 郁乃はスッと目を据わらせると、浜で事前に仕入れておいた縄を持って構える。
「まずは桃花、いくよっ!」
郁乃は疾風迅雷と千里走りの術で浜を駆けると、一気に桃花へと距離を詰めた。
「っ!?」
「もらった!」
 郁乃は魔障覆滅によって目にも止まらぬ速さで桃花に向かってロープを巻き付け、出来たのが、
「亀甲縛り&脚一本縛りッ!」
「それは深夜枠っ!」
 後ろで見ていた蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)が思わず突っ込む。
「そんなことはいいから、桃花をお願いね。次は荀灌だよ!」
 そう言って郁乃は荀灌に向かっていく。
「スピード勝負なら私だって負けませんよッ!」
 荀灌は真っ向から郁乃に向かっていき、郁乃に跳び蹴りを見舞うが――それは空蝉の術で身代わりになったミニダコだった。
「なっ!?」
「早いだけじゃわたしには敵わないよ!」
 背後から郁乃の声が聞こえたが荀灌は振り返る暇も無く身体を縄で拘束されて、
「後手菱縄&片脚梯子あぐら縛り!」
 霰もない格好で浜に転がってしまう。
「だからそれも深夜枠っ!」
 マビノギオンは桃花を引き連れて縄で縛られた二人を並べるとバケツの水をぶっかけると、拘束を解いてやった。
「桃花! 荀灌! 大丈夫?」
 郁乃が声をかけると、二人は目に正気の光りを宿して立ち上がると郁乃の方を見つめた。
「ありがとうございます。助かりました。……ところで助けられたので文句を言ってはいけないのでしょうけれど……郁乃様、どうしてこのような恥かしい縛り方をしたのでしょうか? 説明してくださいますか?」
 桃花は笑顔のまま早口でまくし立てるように郁乃に詰め寄った。
「え? あ、あれはその場のノリというか……あれ? 桃花怒ってる?」
「いやですねぇ……怒ってなんかいませんよ?」
 桃花は笑顔のままで言っているが、笑顔の隙間から明らかに怒りの感情が滲んでいた。
 郁乃は助けを求めるように荀灌を見るが、向こうも怒っているようでそっぽを向かれてしまう。
「さあ、どうかご説明を」
 いつの間にか正座していた郁乃は桃花を見上げながら、曖昧な笑みを浮かべ、先ほどよりも危険な今の状況をどう打開しようかと冷や汗をかき始めた。


「タコ様バンザーイ!」
「偉大なるタコ様の邪魔立てをするゲスども、死にさらせぇぇぇぇ!!!」
「リア充はマジ死ねぇぇ!!」
「タコ様には指一本触らせないんだから!」
 浜辺に響き渡る声の主はミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)雅羅・サンダース三世のものだった。
 身体を墨で黒く染めて、巨大ダコを背にしながら近づく者を威嚇していた。
 それに待ったをかけたのは綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)だった。
「まったく……せっかく海水浴に来たのに、やれやれって感じね」
「愚痴を言っても始まりませんよ。ここはさっさと事態を収拾して、海水浴を再開させましょう?」
 アデリーヌはそう言って、ウォーターガンを手に提げるとさゆみも自前のウォーターガンを構えた。
「それもそうね。……それじゃあ、行くわよ!」
 さゆみは浜の砂を蹴り上げて雅羅たちに近づいていく。
「タコ様には近づけさせないよ! 覚悟―ッ!」
 ミルディアは叫ぶなりヴァーチャースピアで突っ込んでくるさゆみを貫こうとする。が、前に向かってくる槍に合わせてさゆみはバックステップを踏み、寸でのところで槍の切っ先が止まる。
 それに合わせてさゆみはウォーターガンの引き金を引き絞り、銃口から水が勢いよく発射された。
「わぶっ!?」
 ミルディアは顔に水をかけられたことで視界を奪われ、一時的に身動きが取れなくなる。それと同時に体中についた墨が落ちそうになる。
 が、
「ハッ! そんな攻撃でやられるわけねえだろ! 死んじまえよっ!! URYYYYYYYY────!!!!!!」
「黙って殺されちまえよッ!」
 ゆかりの【シュヴァルツ】【ヴァイス】とマリエッタのサンダークラップ、雅羅の援護射撃が一斉に二人目がけて襲いかかってきた。
「くっ!」
 さゆみとアデリーヌは咄嗟に回避することが出来たが、
「ぎゃん!?」
 背中を向けていたミルディアにサンダークラップが思いっきり直撃した。
「なにするの! ご主人様のご褒美ならまだしも知らない人の電撃なんて全然気持ちよくないんだから!」
 ミルディアは憤慨したような言葉を口にしているが、顔の方は喜色満面の笑みを浮かべていた。
「うっせえ! いいからとっとと武器構えろよこのブタ!」
 ゆかりに怒鳴られてミルディアはブツブツと文句を言いながら槍を構え直した。
 アデリーヌはその光景に嘆息した。
「一枚岩ではないのに、援護はキッチリするなんて厄介な相手ですわ」
「なら、強行突破するしかないわね」
 さゆみに言われて、アデリーヌは頷くとトリップ・ザ・ワールドを展開させると、さゆみもその中に入り、再度突撃を試みた。
「今度はさっきみたいにいかないよ!」
 言いながらミルディアは槍を突くが、トリップ・ザ・ワールドに切っ先を弾かれて、再び顔に水を喰らった。
「あううう!」
 一瞬身動きが取れなくなり、二人はそのまま前に突っ込んでいく。
「蜂の巣になりてえならそうしてやるよ!」
 続いてゆかりたちの一斉射撃が始まるが、それさえ意に介さずに愚直と呼べるほど真っ直ぐに突っ込んでいき、ウォーターガンの射程圏内に入った。
「もらった!」
 さゆみとアデリーヌが同時に水を発射させる。
「うっ!」
「きゃっ!?」
 雅羅やゆかりたちは顔に水がかかり、必死に顔を拭う。
 すると、身体にかかっていた墨が徐々に流れていき、四人の瞳が正気に戻っていくが、
「ヴヴヴヴ〜!」
 巨大ダコが雅羅に向けて墨を吐きかけた。
 雨のように降り注ぐ墨をさゆみたちはトリップ・ザ・ワールドで弾くことが出来たが、雅羅には再び墨が塗りたくられてしまった。
 墨のかかった顔で、雅羅は狂気を瞳に宿してさゆみたちを見つめた。
 それに合わせて、タコが触手を伸ばしていく。
「これは……少し作戦を変える必要がありそうですわね」
 アデリーヌが言うと、さゆみも一緒に後ろに下がっていき、雅羅はそれに向けて弾丸を発射していく。
 さゆみとアデリーヌが派手に動いているせいで、タコを含め、雅羅たちの視線は二人にのみ向かっていた。
 が、
「ッ! 誰!?」
 雅羅は咄嗟に銃口を背後に向けると想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)が立っていた。
 二人は慌てて両手を上げる。
「こんなところで何をしてるの?」
 雅羅が訊ねると、夢悠はさも当然のように反論した。
「それはこっちの台詞だよ「雅羅、今日は海水浴をしに来たんだろ?銃は降ろして、今からでも一緒に遊ぼうよ?」
 言いながら夢悠は一歩一歩踏みしめるように雅羅に近づき始める。雅羅は銃口を夢悠にだけ向ける。
 瞬間、瑠兎子はサイコキネシスを使い――雅羅の水着をずらした。
「きゃっ!?」
 あまりにも咄嗟のことに雅羅は銃口を向けるのを忘れて自分の胸を隠した。
「夢悠、今だよ!」
 瑠兎子が声をかけると夢悠は光術で周囲にいる人間の視界を奪うと、雅羅の両足を持ち上げるようにタックルした。
 雅羅は体勢を崩しその衝撃で銃を落とす。瑠兎子はそれを銃で蹴り飛ばしながら、雅羅の背後に回り込んで羽交い締めにした。
 そうすると、必然的に雅羅は自分の胸を隠すことが出来なくなり夢悠の視界にはそんな雅羅が映ってしまう。
「きゃあああああああああああああ!」
 雅羅はあらん限りの力で悲鳴を上げるが、夢悠は視線を落として両目を眇めてなるべく見ないように努めていた。
「見て見て夢悠! 雅羅ってかなり着やせするんだね。ほら、これ凄いよ!」
「ああああ! やめろッ! そういうこと言うな! いいからさっさと始めるぞ!」
 夢悠の掛け声と共に雅羅を拘束していた手が離れ、放り出された先は真っ青な海だった。
 水しぶきが上がり、雅羅は海面から顔を上げる。
「ちょ、ちょっとなんのつもりなのよ!」
「こういうつもりだよ!」
 瑠兎子は後に続くようにダイブすると雅羅の後ろに回り込んで胸を鷲掴みにした。
「んんっ……!」
 柔らかい胸が瑠兎子の手の平で形を変える。
 すでに海に落ちた事で墨はほぼ落ちていたのだが、執拗にまさぐってくる瑠兎子の手によって雅羅は正気を取り戻していたが、それでも手は止まらない。
「おい、さすがにやり過ぎだろ!」
「そんなこと言うけど、水着にタコの墨が染みてたらまた洗脳されるかもしれないじゃない。……というわけで、全部脱いじゃいましょう」
「ちょ、や、やだ! ホントにやめて……ッ!」
 雅羅が涙目になって抵抗するのを見て、夢悠は瑠兎子の頭を殴ってダウンさせた。
「ふぅ……ゴメン。大丈夫?」
「あ、ありがとう……」
 夢悠は手を差し出すと雅羅は起き上がった。
「ここは危ないから、他の人も連れて一度ここを離れよう」
 そう言って夢悠はさゆみが洗脳を解いてくれたゆかりたちを担いで戦闘区域を脱出する。
 瑠兎子はしばらくの間、水面を漂流を続けていた。