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午後の部 ビーチバレー大会


「ではルールを説明するでありんす!
 1チーム6人のチーム戦じゃが、2チームしかないため勝てば優勝じゃ!」
「攻撃アビリティ以外は、使用を許可されております。
 当然ながら、妨害行為はお断りですわ」

 再びハイナと房姫から、勢いよくルールが紹介される。
 昼食も済み、相変わらず水着姿でやる気満々に見えるが。

「わたくし達は本部席より応援しておりますので」
「房姫と一緒に涼みながら観戦するでありんす〜♪」

 やはり、加わる気はまったくなかった。

「ビーチバレー?
 ちょっと私も混ぜなさい!」

 放送の直後、参加者の輪にリーズ・クオルヴェル(りーず・くおるう゛ぇる)が加わる。
 つもりではなかったのだが、聴いていて闘争心に火が点いたよう。
 ちょうど最後の1人を探していたトコロで、利害は一致していた。
 
「どんなアタックもサーブも取ってやるわよー!
 かかってきなさい!」
「こちらも、参加するからには全力で挑みます!
 勝利は渡しませんわっ!」
「のぞむところよっ!」

 エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)と睨み合い、早くも火花の飛び散るフィールド。
 勝ち気な性格故、分かっていても挑発し返さなければ気が済まない。
 同じレシーバーとしてのプライドも、エリシアは感じているだろうか。

「進めるでござるよ!
 初見も多そうなので、自己紹介の時間を設けるでござる。
 じゃあリーズ達はこっちで、エリシア達があっちに入るでござるよ」

 マイクは、進行役の佐保へとまわった。
 指示に従い、コート内にメンバーは集合する。

「リーズよ、よろしく」
「あたしは弁天屋菊。
 菊って呼んでくれ!」

 リーズとがっちり握手を交わす、弁天屋 菊(べんてんや・きく)
 水着ではなく『晒』と『褌』を纏い、背中には『弁天の刺青』が彫られている。

「あたしは過去、とある美衣弛馬鈴(びいちばれい)の大会で準優勝したんだ!
 腕前をみせてやるぜ」
「ちなみに、そのときのペアがガガだよ!
 ガガはいつでもスタンバイできてるよ!」

 菊とガガ・ギギ(がが・ぎぎ)は、確かな実力の持ち主。
 仲間にして、これほど頼もしい者はいない。
 勝利へ向かって、いけいけムードが高まった。

「改めて、わたくしはエリシアですわ」
「セレンフィリティよ、セレンでいいわ」
「パートナーのセレアナよ。
 今日はよろしくね」

 対戦相手を横目に、ネットの向こうでも話は進む。
 シャンバラ教導団の指定水着で、お揃いに決めてきた2人。
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、ツインテールに青のリボンが印象的だ。
 たいして、ショートウェーブのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
 左手の薬指に、お揃いの指輪が光る。

「わたくしは明倫館の友人から今日のことを聴いてきました。
 お2人は、どうしてビーチバレーに参加することになったのですか?」
「明倫館へ遊びにきていたの」
「私達、この6月に結婚してね。
 新婚旅行中なのよ」
「そしたらちょうど、ハイナが『暑いのはいやでありんす』とか言って今回の企画をするって聞いたのね」
「似ていませんわ、セレン……」
「ほっといて!
 で、どちらに参加しようかとコイントスで決めた結果……ビーチバレーに決まったのよねっ!」
「まぁハイナ達とも、付き合い長いしね。
 セレンとの想い出が増えるならと、私もついてきたってわけ」
「すごいですわ、おめでとうございますっ!」

 本当に楽しそうに話すセレンフィリティに、セレアナは思わず苦笑してしまう。
 予想だにしなかった経緯に、自分まで嬉しくなるエリシア。
 一気に和み、幸せな空気に包まれた。

「両チームとも、全員の紹介は済んだでござるな。
 ここからは主審に任せるでござる。
 なお、審判団の指示に逆らったら退場となる故、気を付けるでござるよ」
「ルールは基本的に、6人制のバレーボールと同じですが、あまり細かいことを気にするつもりはありません。
 明らかな反則行為は採りますけどね。
 ローテーションもお任せしますが、サーブだけは2本ずつで交代してください。
 なにか質問はありますか?」

 ネット脇の審判台に座る唯斗から、まずはルールの確認。
 言ってもろくりんピックのような公式試合ではないため、がちがちに縛りたくはない。
 授業で習う程度のルールで、クリアな運営を目指したい。

「大丈夫そうなので、代表者はじゃんけんをしてください」
「あたしがいくわ」
「あたしがいくよ」

 前へ出たのは、セレンフィリティと菊。
 ともに、ポジションでいえばウイングスパイカーにあたる。
 攻撃の要となる2人は、握手のあと、じゃんけんぽんっ!

「よし、サーブはいただいた!」
「コートはこのままでよろしくてよ?」
「不便なので、俺から見て右をAチーム、左をBチームにさせてもらいます」

 サーブ権は菊のチームに渡り、入れ変わりなくそのままのコートで拡がるメンバー。
 位置は準備段階から計算され、陽光の影響を最小限に抑えていた。
 Aチームはセレンフィリティ達で、菊達はBチームとなる。

「頼んだよ、卑弥呼」
「あたいに務まるかねぇ」

 ボールを受け取り、親魏倭王 卑弥呼(しんぎわおう・ひみこ)は開眼。
 ホイッスルと同時に、なんとジャンプサーブを放ってきた。

「きゃっ!」
「カバーっ!」

 【龍鱗化】で硬質化したエリシアの腕でも、痛いくらいの強力なサーブ。
 後方へ飛んだボールに追いつけず、Bチームの1点先取だ。

「ナイッサー!」
「もう1本っ!」
「これ結構、疲れるんだけどねっ!」

 チームメートからの声援を受け、2本目のジャンプサーブ。
 砂で不安定な足場も、卑弥呼は【野外活動】のおかげで問題なし。

「なんのっ!」
「セレンっ!」
「たぁっ!」

 今度はなんとか前に上がり、セッターがボール下へ。
 セレアナのトスを、速攻でセレンフィリティが打ち込んだ。
 ともに発動する【ビューティーブラインズ】で以て、苛烈にして猛烈な攻撃をお見舞いする。

「くっ……」

 頭から倒れながらも伸ばしたリーズの右手は、済んでのところで届かない。
 どちらも譲らぬ、一進一退の始まりとなった。
 サーブ権が、Aチームへと移動する。

「いけ〜エリシアっ!」
「ナイッサー!」
「サーブでとり返す……ふっ!」

 先取点のお返しにと、エリシアもジャンプサーブを繰り出した。
 【歴戦の必殺術】で見抜いた守備の『穴』へ、ボールを落とす。

「よしっ!」
「いいぞいいぞっ!」
「くそっ!」
「どんまいだよ!」

 声を出して味方を鼓舞することは、勝利を引き寄せるためにとても重要だ。
 どちらのチームも、試合に臨む姿勢でも譲らない。

「ウチの旦那様に、ダメな姿ばかり見せられないわ。
 次は絶対に拾うんだからっ!」
「やぁっ!!」

 【殺気看破】に【麒麟走りの術】も併発させて、腰を低く構えたリーズ。
 エリシアのサーブに、誰よりも速く反応する。
 今度は、その両腕でボールを捕らえた。

「菊っ!」
「あいよっ、喰らえっ!」

 【先の先】で読んだ軌道上に、【軽身功】で身を滑らせる。
 ガガの絶妙なトスに、ドンピシャで菊が頂点を合わせてきた。
 可能となった要因は【キャスリング】による、独特の身のこなしで自身の立ち位置を素速く変えたこと。
 更に【金剛力】を発動すれば、叩いたボールが砂浜を抉る。

「流石はガガ、いいトスだったよ」
「菊こそ、衰えてないじゃん」
「リーズもいい判断するね!」
「ありがとう、卑弥呼」

 互いの行動に満足して、菊とガガはハイタッチ。
 後衛のリーズと卑弥呼も、互いをねぎらった。
 しかし、試合は振り出し。
 昼下がりの気温とともに、コートの熱もどんどん上昇していく。