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リアクション
同日 同時刻 迅竜 ブリッジ
「しっかし、艦長がいないってのも落ち着かないもんだね」
操舵手の席でルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)は呟いた。
「仕方ないだろう。迅竜は対・エッシェンバッハ派の要。その艦長が対策会議に出ないでどうする」
「ま、その間は俺らがこの艦を守らねえとな」
答えたのはダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)とカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)だ。
『その通り。こっちでも警戒してるけど、敵はいつどこから来るかわからない。警戒を怠らないでいてくれ』
通信で会話を共有している夏侯 淵(かこう・えん)もArcemから話に入る。
「わかってますって。その為の俺達ブリッジクルーってもんだ」
小気味良く答えるルース。
「時にダリル、カルキ。連中、来ると思うか?」
相変わらずの落ち着いた様子でルースは二人に問いかける。
「何を今更」
「来るに決まっているだろうが」
「なあに、聞いてみただけだ。俺達迅竜機甲師団はもちろん、本丸の空京大学の周囲には各校――九校すべての防衛部隊が布陣してる」
「そうだな」
「しかも、これまでの戦いで連中への対策も確立されつつある。しかも、極めつけに俺達の技術力も向上しつつある。今や第三世代機だって配備されてるんだ」
「……ルース。いったい何を気にしている?」
「ダリル。これは軍人の勘……要はロジカルな確証と裏付けがあるわけじゃないんだが。何か気になるもんでね」
「……聞かせてくれ」
「俺達の軍事力は順調に成長してる。しかも、今回は時と場所がこれなだけに、こちとら総力戦の構えだ」
「だとしても、連中にしてみればこちらの要人を一網打尽にできるまたとない好機。それを逃す手はないだろう」
「もちろんそうだ。ただ……」
「ただ……?」
「連中の今までの動きを考えると、まだ何か腹に一物を抱えてるというか……まだ奥の手を隠してるような気がするのさ」
「なるほど」
「まあ、あれだ。たとえその用意がなくとも、連中は来ると思うがね」
「同感だ――」
「ああ。間違いなく――」
問答の果て、何の申し合わせもなくルースとダリルの言葉が重なる。
「「――奴等は来る」」
直後、まるで二人の言葉を待っていたかのように接近警報がブリッジに鳴り響いた。
「おいでなすったようだぜ、ダリル! カルキ!」
「そのようだ! ――ブリッジより全艦へ! 第一種戦闘配備! 敵、エッシェンバッハ派所属の機体を迎撃せよ! 総員出撃!」