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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

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 同時刻 空京大学付近
 
『“鼬”……いや、賢志郎。随分遠回りしたが、今日こそ決着をつけよう』
『ええ。紫月唯斗、僕もそのつもりです』
 
 互いにただ一振りの愛刀のみを手に相対する二機のイコン。
 
 片や紫月唯斗の駆る剣竜。
 片や鳴神賢志郎の駆る“ドンナー”bis。
 
 “ドンナー”bisの引き連れてきた大量の量産機。
 そのどれもが、今は離れた場所に立ち、ただ静かに二人の決着の行方を見守っている。
 
『俺との一騎打ちに応じてくれたこと、感謝する』
『武人と交わした約束を武人として守ったまでです』
 
 二機はまるで申し合わせたように、時を同じくして動き出す。
 双方ともに脇構え。
 まるで腰に佩いた鞘へと納刀するかのように愛刀を構える。
 
 互いの構えはまったくの同時に完成する。
 
 片や『』(うつほ)。
 片や秘剣・一文字斬り。
 
 奥の手とする奥義は違えど、構えは驚く程近い。
 そして、その技が体現する思想も――
 
『……』
『……』
 両者は静かに互いを見つめ合う。
 勝負は一瞬にして一撃で決する。
 これから二人が繰り出そうとしている技はそういうものだ。
 ゆえにこここからは、すべてを賭けた一撃同士のぶつかり合い。
 
『九校連・葦原明倫館――紫月唯斗。流派の名はない』
『鏖殺寺院・エッシェンバッハ派閥――鳴神賢志郎。同じく流派の名はありません』
 
 悠久にすら感じられる睨み合いの後。
 まさに刹那の一瞬で双方は動き、その白刃を閃かせた。
 
 そして――
 
『最高の仕合いだった。心より礼を言う、賢志郎』
『お見事です。紫月……唯斗――』
 
 白刃を振るい、残心を終えたのは剣竜。
 ただその一機のみであった。