リアクション
シャンバラ教導団 軍病院
「蓮華、凄いことになったぞ。金団長が直々にお見舞いにいらしてくれたんだ!」
ベッドの横でパイプ椅子に座り、スティンガーは声を弾ませた。
だが、声をかけられた蓮華は殆ど反応を示さない。
本来ならば泣いて喜ぶはずの彼女も、今は虚ろな目をして呆けたままだ。
まるで魂の抜けたような状態だが、彼女の心が何の反応も示さなくなったわけではない。
反応を示そうにも、五感からろくに情報が入ってこないせいで、いわば彼女の魂は反応に困っている状態だった。
先日、パーティの最中に倒れて以来。
蓮華はずっとこの調子だった。
スティンガーがベッドを半分立てることで半身を起した蓮華。
彼女に鋭峰が歩み寄る。
「董蓮華。貴官の働きには感謝している」
間近でかけられる鋭峰の言葉にも、蓮華は反応を示さない。
それでも鋭峰は言葉をかけ続ける。
それが、蓮華の心に届くと信じて。
「貴官はよくやってくれた。だから今は休め。その身体を癒し、再び戻ってきてくれることを、私は心より願っている」
いつもとは違い、優しげな声で告げる鋭峰。
そして彼は蓮華の前に立ち、最敬礼する。
「董蓮華。度重なる任務誠にご苦労だった。貴官の働きに、私は敬意を表する」
静かな病室に聞こえるのは鋭峰の声のみ。
やはり蓮華は何一つ反応を示さない。
そう思えた直後、蓮華の頬を涙が伝う。
「蓮華……!」
それに気付き、スティンガーが思わず駆け寄る。
鋭峰も大きく頷いた。
「ここに来る途中で医者の所見を聞いてきた。安心しろ、彼女はまだ完全には壊れていない。完治の見込みは十分にある」
「団長……!」
「大丈夫だ。彼女は我々教導団の医療技術を以て全力で治療させる」
思わず涙ぐむスティンガー。
彼はそれを堪えて立ち上がると、最敬礼する。
「感謝します。団長」
「礼には及ばん。当然のことをしたまでだ」
最敬礼したまま鋭峰を見送るスティンガー。
病室を出る際、鋭峰は振り返った。
「相談を受けていた盾竜の件だがな」
「はい」
「あの機体を受け継ぐに相応しいパイロットに託した。だから安心して身体を癒せと董蓮華に伝えてくれ」