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リアクション
報告書がひと段落した私は格納庫にいた。
既に集まっていた仲間達に私は目配せする。
「また徹夜したでしょ? 無理しないで寝ていてよ。あなたに倒れられたら大変なんだから」
そう話しかけてくるのは高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)。
迅竜機甲師団に参加して以来、イコン関連の研究開発において私を相棒として助けてくれている博士だ。
「大丈夫。少し寝たから」
「また機体の改修用に図面を引いていたんでしょう? 確かに今はそれが必要な時だけど……無理はしないでね」
その気遣いに私は心の中で礼を述べた。
彼女はもちろん、星怪球 バグベアード(せいかいきゅう・ばぐべあーど)により、解析と分析は随分助けられている。
おかげで竜系列の修復と改修のプランも立ちつつある。
もっとも……唯一大破を免れた鎧竜だけは目途が経っていないが。
調べた所、リブラリウムには更に上質なものが存在するらしい。
鎧竜の強化にはそれが不可欠だが、一方でその精製法に関しては殆ど情報がなかった。
――高熱に晒しながら、とてつもなく強い力で鍛え上げる。
得られたのはそれだけだ。
そんなことをしてもし失敗すれば、唯一のリブラリウムを失うことになる。
それだけは避けねばならない。
しばらく打ち合わせをした後、鈿女博士は私に笑顔を向けた。
「さ、仕事の話は今日はここまで。たまには休みましょう」
そう言って彼女は私を食堂へと連れていった。
食堂ではパーティが開かれていた。
クエスティーナ・アリア(くえすてぃーな・ありあ)主導で親睦会が催されたのだ。
彼女とその執事であるサイアス・アマルナート(さいあす・あまるなーと)による、美味しそうな料理が所狭しと並ぶ。
本来ならコックとして乗艦する予定だった大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)も全面的に協力しているのだ。
しかも、アリア中尉のはからいにより、シュバルツタイプのパイロットも参加しているようだ。
私も鈿女博士とともに料理を味わうことにする。
やはり迅竜が誇る給仕班長が作った料理だけあり絶品だ。
料理に舌鼓を打っていると、鈿女博士は再び笑みを浮かべた。
今、迅竜が停泊しているのは海京。
そして鈿女博士曰く、多くの面々が海に泳ぎに行っているらしい。
やはりまたここでもシュバルツタイプのパイロット達が誘われ、参加してもいるようだ。
「水着、持ってるんでしょ? お洒落なやつ」
そう問いかけてくる鈿女博士に、思わず私も笑みがこぼれる。
たまにはこんな日も良いかもしれない。
微笑みを浮かべると、私は水着を取りに部屋へと戻った。
以上で私の報告書を終える。
願わくば、この戦いが一刻も早く、無事終わらんことを。
――イーリャ・アカーシ