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リアクション
彼らがアセトに追いつく。
『雷霆』前にアリサをさらうアセトを追って来た者達が集まる。
だが、アリサは既にアセトの近くにはいない。
「ドールズとの戦闘でもシつこかったけど、それが君たチ人間の本質?」
アニス・パラス(あにす・ぱらす)が憤慨する。
「アニスはしつこくはないもん! でもアリサは返せ−!!」
興奮するアニスの肩をスノー・クライム(すのー・くらいむ)が抑えて言う。
「アセト、あなたアリサに何をしたの? それにその黒い靄は――」
「スノー。安心して、アリサには眠ってもらっているだケ。この子アノままだとここまで来れそうになかったから。
それと、これはわかると思うけどドールズを形成していたナノマシン群――その形状を模した『大いなる者』の残骸」
燕馬が眉をひそめる。
「おまえは何を言っている? それにおまえは『大いなる者』の一部と同化して消滅したと聞いたぞ」
「そのへんの説明をシないといけないかしら? 知らないからしょうがないけど」
アセトが語り始める。
「わたしは確かに、あなた達に徹底的に破壊されタわ。『大いなる者』の一部である切り離された絶望の感情、『最終兵器』アペルプシアとともに。
でも残念なことに、わたしとアペルプシアは完全には消滅できなかった。殆どバラバラになったわたしの構成素材をアペルプシアはナノマシン群ノ模倣をして再構築した。宿主を修復し活動を再開するために。
それも『大いなる者』本体が倒されたことによって半端におわったけど。その結果、主本体を失ッたアペルプシアはわたしを主本体としテ隷属し、今なお存在し続けているわけ」
「そして、それがこの【第三世界】が存在し続けている理由でもある」
『雷霆』からダリルが出てくる。彼に向かってルカルカが言う。
「……知っていたのね?」
「知ったのはRAR.をインストールして思考を同期化してからだがな。
皆が知っている通り、重層世界は賢者たちの封印によって『大いなる者』が内部に創りだした精神的世界だ。だが、この【第三世界】は元から『大いなる者』が自らの一部を切り離していたために、現実世界に一番近い位置にあった。そして本体から離れていたことにより、重層世界が消滅しても【第三世界】だけは完全な消滅ができなかった。現在の【第三世界】の状態は、アセトに残る『大いなる者』の残滓が緩慢な死を迎えている為の有り様だ」
「つまり、わたしガ世界依り代で、世界はわたしの存在によって保たれているわけ。わたしが消滅するか全ての残滓が死に絶えた時、この世界は消える。本来ならもっと早くこの世界は消滅するはずだったけど、RAR.が世界の有り様をアペルプシアに代わって演算し続けている。でもその処置もそろそろ限界。理由はあなた達がこの世界に介入したことにより、多くの演算に誤差が出ている。だから、わたしとRAR.はこの世界の延命の為に新たな処置を施すことにした」
カルキノスが尋ねる。
「で、つまりはそのつまり……なぜそれにアリサが関わるんだ?」
アセトが答える。
「彼女にはわたしの代わりに次の依り代となってもらいます」
サツキが形相を変えて言う。
「それ、本気で言っているの?」
アセトは頷く。
「正確には、アリサには依り代となってもらうと同時に、彼女の能力αネットによって発生する思考のクラウド化。脳の余剰領域が作り出す演算領域の確保によって世界の現状維持を半永久的にシてもらいます」
唯斗が言う。
「ふざけるな! ならアリサの意志はどうなる!」
「思考という観点なら彼女の意識は思考クラウドの中を漂うことになでしょう。意識の自由は保たれる。ただ、体という部品にかんしては超長期的な延命のために自由は保証できない。あらゆる延命処置のために四肢の排除とスリープ処理は不可欠でしょうね」
美羽が喚く。
「なにそれ! 実質アリサに自由はないじゃん!」
ベアトリーチェが続ける。
「それどこか、死ぬことも許されない……ヒドすぎます!」
ヴェルリアが尋ねる。
「アセト、あなたはなんとも思わないんですか!」
アセトは言う。
「非道だとは思います。ただこれが最も確実な方法なのです」
フレリアが嘲る。
「よく言えるわね。機械のくせに……」
「なんと言われても構いません。あなた達には。ですが、これはわたしとわたしの世界のために、この世界の全ての人の存在のために、アリサには犠牲になってもらいます」
アレーティアが言う。
「詭弁じゃな。エゴの正当化にしか思えん」
サビクが言う。
「正直言ってボクは納得出来ないよ。だから返してもらえるかな」
彼らが構えるのを見て、ダリルが言う。
「結局こうなるか……予想はできていたが」
溜息を吐くダリルに、真司が言う。
「ダリル、おまえに聞く。――なんでおまえは“そっちに立っている”」
「もちろんエゴのためだ。俺は<<ワタシという存在を守るため>>にこっちに立っている。なぜなら既に俺は<<ワタシという存在>>と同一だからだ」
それは明白な敵意を込めた敵対の宣言だった。彼の声にはRAR.の声が重なっていた。
その宣言にルカルカが呑気に言葉を返す。
「それならしょうがないわね」
ルカルカと彼女のパートナーたちはダリルに歩み寄る。そして、
「なら、ルカたちはパートナーの意志を尊重するわ。残念だけど」
唯斗が言う。
「それは最悪なくらいに残念だ――ッ!」
互いのエゴを通すための戦いが始まった。
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