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アリサ・イン・ゲート -Rest Despair

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アリサ・イン・ゲート -Rest Despair
アリサ・イン・ゲート -Rest Despair アリサ・イン・ゲート -Rest Despair

リアクション

 約束の日


<<よろしいですかアリサ>>
「ええ」
<<アリスはどうですか?>>
「いつでも」
<<それでは始めますがよろしいですか?>>
「すこし待って」
 アリサはアセトにあるものを渡す。
「これは?」
「あなたのバッテリー用に作られた超小型の核融合炉。あなたは依代としてずっと生きなければならない。私たちが死んだ後もその何代後も。あなたは死ぬことは許されない。――いえ、あなたはあなたが飽きるまで生きるの」
 アセトは融合炉を受け取る。
「もとより、その責務は果たすわ。それに、しばらくはまた死ぬのは嫌だから」
 アセトが笑う。
 アリサはアセトから離れ、世界を救うべく精神を集中させる。
 アリサから今を生きる全ての人に向けて、メッセージが送られる。

「「αネットワーク接続を開始します」」


 【第三世界】を救うべく、考えられた方法は以下のようなものだ。

 アリサによるαネットワークをBMIで増幅強化し、能力の効果範囲を全ての人間の意識をリンクさせ、ネットワークの最大展開をする。
 意識のネットワークは互いの存在を認識する人から人へと繋がっていき、その規模を拡大させていく。
 そのネットワークは人々の脳をニューロンとした更に巨大な演算能力を持つ脳(OS)を形成した。ネットワークに繋がった人々の脳の未使用領域の1%を演算、記憶媒体として利用し世界の状態記憶とシミュレーション演算に割り当てる。
 この非ノイマン型の有機分散コンピューティングを発案者はβネットワークと名づけた。
 さらに、アリスの人格基礎データをインストールされた機晶姫たちが並列思考により繋がる事によって、ネットワークの管理サーバーとなる。機晶姫たちのシステム管理とシミュレーション出力は技術開発で更に強化されたRAR.が行う。
 アリスはアリサを中継してβネットワークへリンクし、アドミニストレータとなる。そのアドミン権限を機晶姫達に移譲し、ネットワーク管理を彼女たちに開始させた。
 このサーバーシステムをELAN(ハイエンドレベルアリスネットワーク)サーバーと名づけた。
 βネットワークは演算処理と記憶媒体として機能し、ELANはβネットワークが行った演算を集積管理し、【第三世界】の新たな構築をシミュレートする。
 そして、ELANによって出力された世界の構成プログラムをアセトの持つ『大いなる者』の残滓が作り出すナノマシン群にインストールされ、世界へと散布された。
 ナノマシンは光を帯び世界を構成する物質へと変化する。
 ナノマシンにより大地と海と空が形成され、【第三世界】は新たな姿へとその存在をシフトアップした。
 さらに、集積された無意識が奇跡を作り出す。
 世界が再び再構築されていく。その中に見知った誰かの新たな人生までもが描き加えられる。
 土地ができ、国が生まれ、街が作られ、そこに生活人々が歩み始める。
 手を繋いで歩く三人。間には無邪気に笑う女の子。すれ違うクマのシュシュをつけた子が元気に母を呼ぶ。そんな光景が補完された世界のどこかに作られた。
 それは誰かが望んだ他人の幻影だが、今たしかに存在し始めた。


 その日。
 中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)は【ノース】の世界樹に生命が満ちるのを目の当たりにする。
「あら、綺麗な光」
 目を覆い、闇に閉ざした視界の中に光が写り込んだ。
 光は大樹の中を流れている。大地をめぐる無数の根が光の川を作り幹へと収束する。収束した光の束が枝から葉へと伝わり、空へと放たれ世界に降り注いでいる。
 綾瀬は言う。
「この世界で唯一生きているものとして私に見えていたあなたが、ようやく本当の姿を見せてくれましたね。とても美しいですわ」
 座ったテーブルに世界樹の実のケーキと紅茶が運ばれてくる。それを運んできた人もまた生命の光を携えていた。
 綾瀬はカップを掲げる。
「あなたという世界の『大いなる存在』に祝福を」

担当マスターより

▼担当マスター

黒井 威匠

▼マスターコメント

 長い間このアリスシリーズと【第三世界】に連なる物語に参加していただきありがとうございました。
 最後に出来る限り無茶なシナリオをやれたことと幕を閉められたことが幸いです。
 ほんとこんなクソッタレで仲良く楽しくワイワイとか縁遠い私の作品。楽しんでいただけたでしょうか?
 特に長く語ることはございませんが、長いことこの私に付き合っていただきありがとうございました。
 もし機会があればマタどこかで。
 黒井威匠でした。