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昔を振り返り今日を過ごし未来を見よう

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リアクション

 1年後、2025年。結婚式会場前。

「キロスさん!今日こそ、結婚式を挙げましょう! 準備は全て整っています」
 アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)は呼び出した婚約者のキロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)に幾度となく口にした結婚式への誘いをかけた。表情は喜びではなくいやに真剣で闘志に燃えていた。
「……あぁ、そりゃ別に構わねぇが。お前は大丈夫か?」
 婚約者たるキロスは誘われる度に幾度となく口にした返事を繰り返してからアルテミスを心配した。
 なぜなら
「心配は無用です。これまで毎回邪魔されてきましたが今回は完璧に結婚式を挙げられるはずです!」
 今日この日まで事あるごとにキロスと結婚式を挙げようとするも全て身内の自称悪の天才科学者や双子の悪戯や不幸な事故や天災などで失敗に終わっていたのだ。それが並ならぬアルテミスの闘志とキロスの心配の理由である。ちなみに妨害を考えキロスには当日まで挙式の事は伝えていなかった。
「それに念には念を入れましたし、今回は……」
 アルテミスはおもむろに和風のお守りを取り出してキロスに見せた。
「……お守りか」
 唐突なお守りの登場にキロスは思わず聞き返した。
「そうです。結婚式が無事に遂行出来るよう用意しました。キロスさんの分もありますのでどうぞ」
 アルテミスはそう言って色違いのお揃のお守りを取り出し差し出した。
 受け取ったキロスは
「……用意がいいな」
 並ならぬ用意の良さに感心していた。何せお守りどころか式の準備をしていた気配など微塵も感じなかったので。これもまた妨害を防ぐための用心である。
「用意はそれだけじゃありません。昨日、あちこちの有名どころのお祓い師に会い結婚式が成功するように祓って貰いましたから。お守りはその時に買いました。毎回の事で呪われているのではと思えるほどだったので」
 アルテミスは昨日の事を振り返りながら言った。和洋関係無く有名なお祓い師に片っ端から会い、祓いまくって貰ったのだ。
 他の人が聞けばアルテミスの話は笑い話かもしれないが
「まぁ、確かにそう思ってもしかたねぇよな」
 キロスは笑わなかった。花婿として毎回失敗した結婚式に参加しアルテミスの落ち込む姿を目にしてきたから。
 お守りをしまってから
「しかし、今回大丈夫です!! 悟られずに準備は完了しお祓いまでしていますので」
 アルテミスは今まで以上に期待と成功への並ならぬ熱意に溢れていた。触れたら消し炭になるほど。
「……そうか。とりあえず始めようか」
 キロスもお守りをしまい、アルテミスの先導で式場に入った。
 そして、二人はドレスアップをし、式に臨んだ。

 結婚式会場。

 結婚式は粛々と執り行われ無事に愛を誓い合い、指輪交換を済ます事が出来た。
 とうとう残るはただ一つとなった。
 それは誓いの口付け。
「……(残るは誓いの口付けだけです。今回は絶対にキロスさんと新たな人生の一歩を歩めるはず……お祓いもして貰ってお守りもあるんですから)」
 ウェディングドレス姿のアルテミスは最後の手順とあって尋常ではないほどの真剣さと妨害に対する警戒に満ち満ちていた。本来であれば幸せに表情がゆるんでいるだろうに。
「……(このまま無事に終わればいいが……しかし、アルテミスの奴すげぇ顔だな)」
 キロスはこれまでの失敗した結婚式以上に真剣過ぎるアルテミスに苦笑しつつ式の無事を祈っていた。
 互いの唇が重ねられようとした瞬間
「!!!!」
 何の前触れもなく床が激しく震え始めた。
「キ、キロスさん、こ、これは……地震……揺れていますよ」
 突然の揺れにアルテミスは足を踏ん張りバランスを崩して倒れるのを防ぎながら周囲を警戒。
「……いや、違う、床が沈んでいるんだ」
 同じく足を踏ん張り耐えていたキロスは異変が頭上ではなく足元である事に気付いた。
「……もしかして……地盤沈下……そんな……選りすぐって選んだ式場なのに……ああ、また今回も……」
 キロスの言葉でアルテミスは足元に視線を向け床が地面に呑み込まれつつある状況に予想外の災害に愕然とし挙式が失敗した事を悟った。
「アルテミス、ここを出るぞ。この勢いだと一時間もせずに沈む」
 キロスは尋常ではない地盤沈下の速度から式場が呑み込まれると判断し茫然と突っ立っているアルテミスを急かした。
「あ、はい。逃げましょう」
 キロスに声をかけられ我に返ったアルテミスはキロスと共に式場を脱出するべく急いだ。

 脱出中。
「……(ああ、お守りも買ってお祓いもして貰ったのに……なんでキロスさんと結婚が出来ないんですか……お祓いでも無理なほどの強力な呪いでもかかっているのでしょうか)」
 式場の出入り口を目指してキロスと共に急ぐ中アルテミスは胸中で結婚式失敗についてぐるぐると頭の中で考えていた。
 そうやって頭の中がよそ見をしていたため
「!!」
 アルテミスは足をもつれさせ転げてしまった。
「大丈夫か、アルテミス?」
 気付いたキロスは床に座り込む婚約者の元に駆けつけ、無事を確認すると
「……足が……ひねってしまったみたいで……不覚です」
 アルテミスは足首をさすりながら眉をよせてあまりにもみっともない姿に元気を失ってしまう。
 すると
「……」
 キロスは黙ってアルテミスをお姫様抱っこをして出入り口を目指して駆けた。
「キ、キロスさん? 迷惑は掛けられませんから……」
 アルテミスは抱っこされて当惑するも
「大人しくしてろ」
 キロスにぴしゃりと言われ
「……はい(まさか、こんな時にキロスさんにお姫様抱っこされるなんて……少し幸せです)」
 アルテミスは大人しくするしかなかった。改めて出入り口を目指すキロスの横顔を見上げお姫様抱っこの状況にちょっぴり幸せを感じ密かに頬を染めていたり。
 そのままアルテミスはキロスに抱っこされたまま会場を脱出した。

 脱出後。
「何とか無事に脱出出来たな。少し遅れていたらオレ達も土の中だった」
「……はい」
 キロスとアルテミスは地面に沈み行く会場を何とも言えぬ顔で見送ると共に自分達の生死が紙一重であったと知った。
「……アルテミス、今回もまた……」
 視線を沈む会場から腕の中の婚約者に向けたキロスは挙式失敗を何とか励まそうと気遣いの言葉をかけようとするが無用であった。
 なぜなら
「つ、次こそは、キロスさんと結婚式を挙げてみせますからねっ!」
 沈み行く会場を前にすでにアルテミスは決意を新たにしていたからだ。

 今回も結婚式は失敗に終わった。二人の幸せはいつ訪れるのだろうか。