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ツァンダのとある地下室へ



「ううん……」
 目を覚ました十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)が見た物は、見知らぬ小部屋でした。
 大きな窓がないところを見ると、倉庫か、あるいは地下室のようです。
 身体を動かそうとして、自分がきつく椅子に縛りつけられていることに気づきました。これでは、身動きすることもできません。それに、なんだか頭がずきずきします。
 状況から考えると、誰かに殴られて拉致監禁されたのは間違いないようです。けれども、そうだとすると、いったい誰に……。
「ようやくお目覚めのようですわね」
 そう言って現れたのは、ヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)刀姫 カーリア(かたなひめ・かーりあ)コアトー・アリティーヌ(こあとー・ありてぃーぬ)の三人、十文字宵一のパートナーたちです。
「それでは、ただいまより、反省会を開始いたします」
 ヨルディア・スカーレットが、重々しく言いました。
「反省会? いったいなんのことだ?」
 十文字宵一が聞き返しました。
「宵一、あなたは、今までの冒険で一度でも私の光条兵器を使ったことがあったかしら?」
 問い質されて、十文字宵一が、うーんと考え込みます。いくら思い返しても、ありません。
「ない」
 きっぱりと、十文字宵一が答えました。
「というか、君は剣の花嫁だったんだ」
 何を今さらです。怒り心頭に発したヨルディア・スカーレットが、歌姫の戦ネギ『零式』で、べしべしと十文字宵一の頭を叩きました。
「い、痛い……」
「剣の花嫁としての私のアイデンティティを無視しておいて! というか、神狩りの剣とか訳の分からない剣ばっかり使って! ずるくないかしら!?」
 ヨルディア・スカーレットが、なおも問い質(ただ)しました。
「だって、格好良くて強いんだもん。神狩りの剣」
 ぺしぺしっ!
 問答無用で、ヨルディア・スカーレットが葱で十文字宵一をひっぱたきました。
「たまには、いえ、これからは、わたくしの光条兵器を使っていただきますわ。とりあえず、引き抜いてくださいませ」
「いや、今、両手使えないし」
 縛られていては、それは無理です。
「だったら、口でも何でも使えばよろしいでしょう」
 そう言って、ヨルディア・スカーレットが、胸を十文字宵一の眼前に突きつけました。
「いや、無理だって。だいたい、掴むとこないし……」
 ぺしぺしぺしぺし!!
「ねえ、アタシもアタシも」
 このまま気を失ったら反省会が終わってしまうと、コアトー・アリティーヌがヨルディア・スカーレットに替わりました。
「みゅ〜。お姉様はまだいいみゅー。お兄ちゃんは戦いのときは特攻ばかり。いつも無策で敵陣に特攻みゅ。つきあわされるこっちの身にもなってほしいよ」
 ギフトとしては、使ってもらえなくても装備はされます。そういう意味では、コアトー・アリティーヌはいつも十文字宵一と一蓮托生です。ある意味、たまったものではありません。少しは考えてから行動してほしいものです。
「いや、まあ……。生きるためには勝て! という教訓を師匠から受けてさ。気合いでいろいろできるかと……。ま、まあ、いろいろとごめん」
 誠意のない謝罪に、コアトー・アリティーヌがヨルディア・スカーレットから葱を借りてべしべしします。
「そうよね、宵一のドMなところは私も引くし……」
 本当に一歩引きながら、刀姫カーリアが言いました。
「だ、誰がドMじゃあああ!?」
 思いっきり十文字宵一が否定します。でも、今までの様子を見ていると、とても否定できません。
「でも、勝つためとか言って、自分の体力を減らすために毒りんごを食べたじゃない。ヨルディアにさんざんおしおきされても、しばらくしたら平然と復活してるし……」
 どう見てもドMにしか考えられないと、刀姫カーリアが言いました。
「本当にドMでないなら、こういう攻撃は喜ばないよね」
 そう言うと、刀姫カーリアは、ヨルディア・スカーレットとコアトー・アリティーヌと一緒に十文字宵一をくすぐり始めました。
「ひゃっはははは、こ、こら、何をする……」
 さすがに、くすぐったくて、十文字宵一が笑いだします。
「ほら、やっぱり喜んでいる」
 これはもう決定です。
「そんなことはない」
 ドきっぱりと、十文字宵一が言いました。
「ホントに?」
 三人が、再びくすぐりだします。
「ううっ、むむむ、はは、ひゃっははは、も、もっと……」
「嘘つき!」
 もう、何がなんだか。そのまま、三人は十文字宵一が気絶するまでくすぐり続けたのでした。