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我を受け入れ、我を超えよ

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我を受け入れ、我を超えよ

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 神崎 優(かんざき・ゆう)は自分と瓜二つの存在と向かい合っていた。
 二人の違いと言えば、もう一人の優から隠し切れていない霊力が溢れている位だ。

 受け継がれ流れる血・神薙の血(この血の影響で他者より霊感が強い状態を隠しもしない優が近づいてくる。

『お前は我を受け入れ、克服したと勘違いしているようだがそれは間違いだ。お前は我が力が周りに影響を与えないようにとただ押さえ込んでいるだけだ』

 歩いてきた優が足に力を入れ、持っていた刀で斬りかかって来る。

『その証拠にお前は俺を恐れている。だからこうしてお前の前に現れているのだ!』
「確かに俺は今でもお前を恐れている。周りに影響を与えてしまうのではないかと……」

 振り下ろされる刀を避けつつ、視線は目の前の優から外さない。
 自分から攻撃もせず、避け続ける。

「その為に孤立した事もある。憎んだ事や呪った事もある。だが今は感謝している。この力のお陰で掛け替えのない人と出会う事が出来た」

 口角を上げ笑ってみせる優。
 霊力を隠さない方の優は、笑ってみせた優を見て一瞬目が大きくなる。
 すぐさまそれを消し嘲笑う。

『お前は本当に神薙の血がただの霊感が強くなる為のモノだと本気で思っているのか? この力は声なき者や姿亡き者達を使役し、己が力とするもの』
「違う! 俺はこの力を使役し操って己の力として使うのではなく、声なき者や姿亡き者達の声を、想いを聞き、受け入れ共に手を取り合う為に使う!」

 迫りくる刀を避け、己の想いを伝えようと声を張り上げる優。

『……何を恐れる。我を受け入れこの力を存分に使うが良い』
「いいや。この力は手を取り合うためのモノ、その為にあると思う」
『押さえ込めば込む程、反発が強くなるだけだぞ』
「だからもう恐れたりはしない。抑え込んだりしない。お前の全てを認め受け入れる」

 微笑み、想いが伝わるように願い、すっと手を差し出す。
 出された腕を斬り落とそうと振り上げる優。
 振り下ろされる時ですら、手を差し出す優の表情に恐れは浮かんでいない。

 振り斬られた刀は差し出された腕に当たる直前、鍔から先の刀身が掻き消えてしまう。
 差し出された腕が落ちることなく、鍔と柄だけになった刀をみる優。

『その言葉、忘れるな』

 それだけ言うと、鍔と柄だけの刀を持って霊力を隠さない方の優は消えていった。

「もちろん。絶対に忘れはしないさ」



◇          ◇          ◇




 部屋の中に入ると装置の起動音以外になんの音も聞こえない。
 あちこちで己と向き合う試練が起き続けていることなど、音も傷もない無機質な部屋までは届く事はないだろう。

 いくつもの試練を見せていたこの部屋で、十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)はもう一人の自分が出てくるのを待ち構えていた。

 宵一とそっくりなようでどこか違う存在の宵一が現れる。
 現れた彼は、凶悪な目つきで己を見、そして己と同じ禍々しい光を放った神狩りの剣を持っていた。

「最悪だな、アレも持って出てくるなんて」
『……どうしてお前は本能のままに戦わないんだ? 賞金稼ぎとして、世のため人のために戦うのが、少し面倒に思っただろう? たまには欲望の赴くままに、暴れまわりたいと思っていた事があるはずだ』

(俺の弱い心というのは、暴力を振るう事で得られる快感なのだろうか? いつの間に俺の心にそんな心が生まれてしまったのやら)

 声にせず向こうが言ってくる言葉を思案していると、また向こうが口を開く。

『賞金首どもに慈悲をかけてやる事なんざないのに、お前は殺意を抑えてなる命を奪わないようにしている。――殺してしまえばいいのに。自分の気持ちに正直に生きる事もできないお前に、生きる意味はない。ここで引導を渡してやるぜ』

 にやっと笑い、神狩りの剣をこちらに向ける。

「……違う、違う。正直に生きる事はそういう事じゃない。誰も彼もが、欲望のままに生きたいと思っている。だがそれをすると大切なものを失ってしまう」
『それの何が悪い』
「まだ俺は大切なものを失いたくない。ここで弱い心と立ち向かい、自分の信念のままに生きる事の強さを思い知らせてやろう」
『ふん、良いだろう。勝った方の言葉が正しい、実にシンプルな事だ。受けて立とう』

 チャージブレイクとゴッドスピードで素早さを上げ、守りを捨てた攻撃がぶつかる。
 鍔迫り合いが続き、同時にバッと離れまた剣と剣が攻め合う。

 奪われていく体力。
 勢いと剣の重さ、力が剣に乗せられて何度も交わっては距離を取る。

「さすが、俺といったところか」
『そうだな。だが、勝つのは俺だ!』
「(来たな!)」

 撃ち出されるアナイアレーションに合わせて宵一もアナイアレーションを放つ。
 中央で激しく交じり合う剣と剣は、周囲を巻き込んでクレーターを生み出す。

 それでも互いにぶつけた剣を離す事なく睨み合う。

「これで終わりだ!」

 アナイアレーションにチャージブレイクを乗せ、凶悪な目つきをした方の宵一の神狩りの剣が折れる。
 そしてそのまま剣圧で宵一が吹き飛んでいった。

『うぐ……』

 仰向けに倒れた宵一の首に神狩りの剣の剣先を当てる。

「勝負あり、だな?」
『………そのようだ。お前の勝ちだよ』

 負けを認めた宵一の首から剣を離す。
 上半身だけ起こした宵一の表情は満足げだ。

『生きる強さ・信念、確かに受け取った。だが、次に勝つのは俺だ』
「返り討ちにしてやるさ」
『ま、せいぜい頑張って生きる事だな』

 空間が壊れていき、元の部屋へ戻っていく。
 あちこちに出来たクレーターや傷も消えていき、宵一もあわせて消えていった。

 残ったのは、神狩りの剣を持つ宵一と設置されている装置だけである。