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リアクション
★第三章・2「それぞれの思いと妄そ(ry」★
「皆の盾となり、必ずや仲間達を無事に学校まで送り届ける! それが私の使命だ!」
荒野にたたずみ、そう声を上げたのは、白く輝くメタリックボディ。コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)だ。妙に荒野と似合っている。
キャンピングカーの上に立っているのは、車の中に入れなかったとか、そういう理由ではない。
護衛目的で参加した彼は、先頭車両にいた。車の中には高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)がおり、地形データをパソコンに打ち込んでいる。同時に簡単なマップまで作成していた。
「この機会に出来るだけのデータを集めてまとめておきたいところだけど、中々に厄介な地形が続いているわね。土のサンプルもとっておこうかしら。あと生物の生息地のデータもあれば……」
この車にはもう1人乗りこんでいる。ハーティオンと同じく車の上に立っているラブ・リトル(らぶ・りとる)だ。
(あたしの名前をこの地に残す発見をするわ!
だって、せっかく未開の地に来たんだから、1000年先まで語り継がれるあたしの足跡をキッチリ残しておかないともったいないもんね)
なので発見を逃してなるものか、と少しでも見晴らしの良い車上に立っている。
「いいか。一見危険性の低そうな動物に出会った場合も油断はしてはいけない! どのように攻撃を仕掛けてくるか判らな」
「ちょっとハーティオン、うるさい」
注意をしようとしたハーティオンを一言で黙らせたラブは、真剣な目を前に向けた。すぐ横に迫る壁のせいで視界が悪い。しかし悪いからこそ、晴れた瞬間に何か発見できるかもしれない。
一方で怒られてしまったハーティオンは、周囲を見た。未知は狭い。それは死角から襲われやすい、ということでもある。ここに来るまでにもオオカミや鳥に襲われた。なるべくセレスたちに気付かれぬようさっさと倒したが、これから先、もっと強い敵が出てくるかもしれない。
不安と緊張。期待。
そんな空気を吹き飛ばしたのは、視界が開けた時だった。迷路地帯を抜けたのだ。ハーティオンはすぐさま後方へと伝えた。
◆
「まったく、まだどんな危険があるか分からんのに……東シャンバラ女王代行殿は、気楽なものだな」
そんなことを呟きながら、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は、ずっと考えていた。光の正体。それは『Sサイズイコン扱いで、変形・合体して超強くなる、獣型ギフト』ではないか、と。
俺の体に融合している特殊な機晶石……感情というか勇気をエネルギーに変換するものは、実はニルヴァーナ産だった! とか。
「いやほら、機晶技術は相当凄いようだし、そんな機晶石が創られていてもおかしくないよな?」
1人うなづき、感動していた彼の元へ、ハーティオンからの連絡が来たのはそんな時だ。
どうも迷路は抜けれたものの、かなり足場の悪いところに出たらしい。タイヤを取りかえるためにも休憩をはさむ、とのことだった。
エヴァルトがたどり着くと、たしかに足場はかなり悪そうだった。拳ほどのものから長径一センチほどの穴があちこちに開いている。
鈿女が土のサンプルとして一部を削り取っているのを横目に、エヴァルトは双眼鏡であたりを見回す。見晴らしがいいからこそ、脅威を早く見つける必要がある。
そして、赤い瞳が細まる。
「右手から軟体オオカミを発見した。こちらに向かっている。数は……6。誰かいけるか?」
◆
「ああ、確認した。俺たちが一番近い。こっちは任せろ」
エヴァルトに短く答えて通話を切った斎藤 邦彦(さいとう・くにひこ)は、「やれやれ」と息を吐き出した。緊迫感皆無の調査隊だが、実は何度も戦闘になっていた。ただそれをセレスたちに悟られないようにしているだけで。
あからさまに警戒している態度では、場の雰囲気を悪くするかもしれない。邦彦はそう思ってだらけた空気を出している。……まあ基本、彼は普段から気だるそうな雰囲気を持っているが。
そんな邦彦も、仕事に関しては手を抜かない。真剣な目がオオカミをしっかりとらえていた。
ネル・マイヤーズ(ねる・まいやーず)は、得物を握りしめてオオカミの群れへと向かいながら邦彦をちらと見て、普段もこうだといいのに、と思った。
仕事に対する邦彦の姿勢には好意をもっている。だが普段が普段なだけに、どうしてここまで違うのか、と思うのだ。
「あまり派手に戦うなよ」
同じく隣を走る邦彦の言葉に、ネルは一瞬だけ後ろを振り返る。――楽しそうに騒いでいる面々が見えた。のんきなものだが、護衛を信頼しているからでもあるのだろう。
「……笑って済めばそれが一番、か」
「そういうことだ」
「確かにそれに越したことはないかもね。見習わせてもらうとするよ。でも、そっちは大丈夫なの?」
邦彦は二丁拳銃を構えた。どこかめんどくさそうな顔をしているが身にまとった空気は、歴戦の猛者、そのものであった。
「仕方ない。爆発物は、今回は封印だ」
◆
「ぼこぼこだー」
「ぼっこぼこですの」
「ぼっこぼこっていうとなんか違う意味にならない?」
「不思議ですね〜。生き物でも住んでいるんでしょうか?」
と、騒ぐセレスたちに苦笑していたイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)だったが、それを悪いこととは思っていなかった。
護衛、という役割からすればここまで自由に行動させることは間違いだろう。制限すべきなのだ、普通は。
だがそれでは調査の意味もまた半減してしまう、とイーオンは思った。それに何より、できる限り思うまま行動させてやりたい。
「ま、限度はあるがな」
普段と変わらぬ様子でセレスの傍にいる彼の元へ
『右手から軟体オオカミを発見した。こちらに向かっている。数は……6。誰かいけるか?』
『――ああ、確認した。俺たちが一番近い。こっちは任せろ』
敵の情報が入ってくる。しかし、イーオンはまったく表情を変えぬまま、セレスに声をかける。
「なあ、あれはどう思う、セレスティアーナ。奇妙な形だと思わないか?」
まったく別方向にある岩を指差した。まるでアリの巣のようになったその岩にセレスは「おー、面白いな」と目を輝かせる。
彼女が戦闘の場を見ないよう、そうやってイーオンが巧みに視線や意識をそらしているうちに戦闘は終わった。
このように、調査隊の安全は陰から守られていた。
休憩中、穴から水が出て驚いたセレスが混乱するハプニングがあった。どうやら地面の穴は地下から水が噴き出た跡らしい。
「へぇ。じゃあ補給できるのか?」
「……噴き出るのはランダムみたいだし、噴き出る量もまちまち。あてにしない方がいいわね。と言うより、危険ね」
地面を調べていた鈿女は首を振った。
水はちょろっとだけ流れたか思えば、鉄砲のように激しく噴き出すこともあった。いつどこからどのように飛び出すのか。少なくとも現状では不明だ。水質は問題なくとも、水の安定供給は望めない。
いつ水噴き出るか分からないその土地を車で抜けるのは危険と判断し、一行は回り道をすることになった。
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