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マレーナさんと僕(1回目/全3回)

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マレーナさんと僕(1回目/全3回)

リアクション

 
 Scene1.夜露死苦荘へようこそ


 その下宿は、シャンバラ荒野のただ中にあった。
 木造の、築数十年は経過しているだろうと思しきオンボロ2階家。
 白アリと修繕の跡も著しく、耐震構造にうるさい日本であれば、十中八九「取り壊し」されるはずの古アパートである。
 
 その「夜露死苦荘」に、後田 キヨシ(うしろだ・きよし)が到着したのは、冬の朝のことだった。
 すでに日は天上にあり、シャンバラの大地を明々と照らしている。
 
「ふぅ、ここか……」
 馬車から降り立ったキヨシは、御者に厚く礼を述べると、バックひとつで下宿に向かった。
「おしっ、頑張るぞぉおおおおおおおおおおおおっ!」
「夜露死苦荘」を見上げて、ガッツポーズ。
 念のために、荷物の中身を調べてみた。
 受験生らしく本と参考書と、空大の資料しかない。
 あとは「必勝」のハチマキか。
 いや、懐からのぞく、その写真は……。
「ま、マレーナさん……」
 キヨシはこっそり撮った写真を胸元に当てると、幸せそうにニヤけた。
「管理人さん! 本日からはずう〜〜〜〜〜〜〜〜っと、一緒っす!
 よろしくお願いしますっ!」
 下宿に向かって一礼。
 彼の傍を、他の下宿生達が、不審そうな眼を向けつつ玄関から入って行く。
 
 こうして、浪人生・後田キヨシと楽しい仲間達(?)との桃色の下宿生活は、幕を開けたのであった。