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手を繋いで歩こう

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第15章 ドキドキが止まらなくて

 山葉 涼司(やまは・りょうじ)火村 加夜(ひむら・かや)が、恋人になって初めてのデートに繰り出せたのは、結ばれたバレンタインの1月後だった。
「わざわざ来てもらって悪い。少し時間が出来たから、食事でもどうかと思ってな」
 空京で用事を済ませた涼司が加夜を呼び出したのだ。
「うん。呼んでくれて嬉しい」
 そう答えた加夜は既に赤くなっていた。
 電話を貰えるだけで嬉しい。
 時々会って話が出来るとさらに嬉しくて。
 そして、彼の誘いでこんな風に2人きりで会えるなんて……。
 夢のようだった。
 誘いの電話がかかってきてから、加夜はドキドキが止まらなくて、顔も熱くて仕方がなかった。
「それじゃ、行こうか。食事の後は、展望台で夜景を見ようぜ」
 彼の言葉に、こくりと頷いて加夜は赤らんだ顔で、じっと涼司を見る。
「ん? あ、展望レストランの予約はとれなかったんだ。急だったもんで……」
「ううん、そういうのはいいの。あのね」
 加夜はにこっと微笑んで手をちょっと前に出した。
「手、繋いでもいいかな?」
「お、おう。繋いでもいいぞ……むしろ、繋ぎたい」
 言って、涼司の方から、加夜の手をとった。
 どくんと、また加夜の心臓が大きな音を立てる。
「場所決まっていないのなら、ホワイトデー大感謝祭の協賛店にしませんか?」
「ん、そうだな。カップル限定のメニューなんかも……いいかもな」
「大きなグラスに、ストローが2本だとか……。そういうドリンクメニューがありそうです、ね」
「あるかもなー」
 顔を合せて、2人は照れながら笑いあった。

 他愛もない話と、美味しい料理をお腹いっぱい食べた後。
 2人は展望台に上って空京の夜景を眺めた。
「あの、涼司くん。これ……売店で見つけたんですけれど」
 加夜は少しの間だけ涼司と離れて、お土産を見ていた。
「ん? なんだ」
 涼司が渡された小さな袋を開けて中を確認する。
「ストラップ?」
「はい……お揃いです」
 加夜は同じ携帯ストラップを2つ購入していた。
 ひとつは、涼司へ。
 もう一つは、既に自分の携帯につけてある。
「涼司くんとお揃いものつけれたら嬉しいなって……。ケータイってよく使うから、いつでも見れるし……」
 言って加夜は赤くなりながら微笑む。
「ん、ありがと。そうだな、早速つけさせてもらうぜ」
 涼司はすぐに袋からストラップを取り出して、自分の携帯電話につけていく。
「お揃い、だな」
 今までつけていたストラップを外すことはしなかったけれど、加夜のプレゼントは確かに涼司の携帯を飾っていた。
「はい、お揃い、です」
 加夜は赤い顔で頷いて、それから一緒に窓に目を向けて、
 軽く腕と腕が触れる距離まで近づいて、一緒に夜景を見下ろした――。

 夜景を楽しんだ後。
 2人は一緒に抽選会場に向かって、1回ずつ抽選を行った。
 涼司が当てたのは、5等の粗品。
 加夜は……。
「あっ」
 コロンと落ちてきた玉の色は、青だった。
「ペア……パジャマですか」
 2人で旅行に行けたらいいなと思っていた加夜だけれど、今はまだ涼司は時間を取ることができないだろうし。
 いつか、このパジャマを着ている姿を、互いに見せ合うことが出来たら……。
 そんな日を夢見ながら、景品を受け取って涼司と一緒に帰路につく。
「次はどこに行こうか。希望ある?」
「色々ありますけれど、すぐにこことは決められないです」
「そっか。それじゃ行きたい場所が決まったら、メールくれよな」
「はい」
 微笑み合う二人の腕が軽く触れた。
 涼司が加夜の手をとって、握りしめる。
 手を繋いで、一緒に、歩きはじめた。