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ぶーとれぐ ストーンガーデン 白と赤

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ぶーとれぐ ストーンガーデン 白と赤

リアクション



 終章 

◇◇◇◇◇

<ベスティエ・メソニクス>

 ストーンガーデンをめぐる奇妙な物語は、ここで終わりさ。
 この後、どうなったかは、今度の休みにでもマジェに行ってたしかめてくれたまえ。
 ガーデンでは、いまは、ちょうど、何十年、もしかしたら何百年も先の次のCALETVWLCHの日に合わせてだろうか、ハーレック興業をはじめ、外部の業者を使って、四つの棟と十二の塔の修理と移転(位置替え)が行われているところだ。
 おっと、あいさつが遅れたね。ノーマン・ゲインにはすっかり嫌われているらしいベスティエ・メソニクスだよ。
 旧友に三下り半を突きつけられるのはつらいものだが、しかし、よくよく考えてみると彼とは以前から、まったく気持ちが通じあっていなかった気がするんだよ。意外な盲点だね。
 きみも古い友人、知り合いと自分の関係をたまに整理してみると、思ってもなかった発見があるかもしれないよ。
 ああ、そうだ。
 聖杯は、最終的にラウールがアンベール男爵のところへ届けたらしいね。男爵はそれをどこともしれない場所に保管しているという噂だ。
 それから、ルールタビーユはCALETVWLCHを振るえなかったが、茅野菫は無事さ。
 細かい理屈はわからないが、ディオの願いは菫の命を救った。
 スコット商会はいまも、マジェのダウンタウンの娼館「牝牛の乳房」に本部を持ち、カフェ「尻軽女給」をたまり場にし、活動中だ。
 他のメンバーもだいたい、おっと、蛇足はこれくらいにしておこう。
 
 ん。
 
 僕の背後に誰かいるって。
 おいおい、この僕を脅かそうなんて、タチの悪い冗談だね。
 え。本気だって。
 かんべんしてくれたまえ。こんな、へんぴな場所に普通のものは来はしないさ。
 なに。ゴスロリ服の赤い目の女?
 まさか。
 彼もそれほどヒマではないだろ。

 うおっ。おおおおっ。
 ぐわああああああああああああああああ!

◇◇◇◇◇

<セリーヌ>

 どーも。お疲れでーす。
 わたしたちの住んでる廃教会で、真都里の送別会もかねた事件の慰労会をしてるんだけどさ。
 なんかもう、ムチャクチャなんで今夜はこのまま、宴会がすんだら寝ちゃうとして、明日の後片付けを考えると家出したくなってくるんですけど。
 北都がおいしいコーヒーをいれてくれて、天音も竜さんもそれに満足してて、ルディは、ヴァーナーに疲れを癒すマッサージの名目で、腰や背中を叩かれたり踏まれたりして喜んでて、ニトロはバンドを連れてきて、高崎とカラオケBOX気分で歌いまくってるし、ファタとかわい維新(誰だ、こいつは)と赤羽美央はガールズトークしてる。
 私が帰ってきたら、いつの間にか中に入り込んでいた、サイレントスノーとエルムと百人以上の子供たちは、親御さんが迎えにくるごとにじょじょに帰宅してもらってて、もう、残っているのは十人もいない。
 主役のはずの真都里は彼女らしいロレッタの横でデレデレしてるんだ。
 あいつ、両刀使いでしかも幼女好きなんてすごいよね。
 モーガンズはクリストファーの方がアカペラで美声を披露してくれてて、超美形のリカインも一緒に歌ってる。
 クリスティーとノーンと陽太は、わたしを手伝って、簡単な料理を作ったり、飲み物が切れないように配ってまわったりしてくれてんるんだ。
 レンは、少し離れた席に座って、一人で静かに飲んでるよ。

「セリーヌさん。助けて」

 お酒は飲んでないけど、雰囲気に酔ってナチュラルハイ気味のわたしに助けを求めにきた、この男の子は。
 きみ、誰、だっけ。

「ボクはミシェル・シェーンバーグミシェル・シェーンバーグ(みしぇる・しぇーんばーぐ)。パートナーの矢野佑一さんとシュヴァルツ・ヴァルトさんに会えるかもと思ってここへきたんだけど、二人はいないみたいで」

 矢野佑一。どっかで聞いたような。
 えーと、たしか。
 ああ。
 ルディのインターネットインチキ宗教ラジオにたまにメールをくれるリスナーさんが、そんな名前だった気がする。
 そういえば、彼から、ガーデンの事件が気になるから教会に行くかもしれない、とかって内容のメールが届いてたな。
 でもそのすぐ後で、他に気になることが見つかったので、ルドルフ神父にお会いできるのは、またの機会になりそうです。みたいなメールがきて。

「たぶん。彼らはここには来てないよ。
メールでしか知らないけど、矢野さんは深夜徘徊が趣味だったよね。
マジェには心霊スポットや夜歩くと不思議なめに会えそうな場所がたくさんあるから、そのどこかに行ってるんじゃないの」

「うん。そんな気がする」

 ミシェルは素直でかわいい子だね。12、3歳かな。

「だけど、だけどね。佑一さんたちのことは心配ないとして。
ボクはさっきからここで、あの人に体をさわられたり、ヘンな質問をされたりして、すごく困ってるんだ。ねぇ、セリーヌさん、あの人をどうにかしてよ。あの人、今夜はずっとボクといたいなんて言うんだよ。どうしよう。むぅ」

 ミシェルを苦しめている相手が誰なのか聞くまでもなく、そいつは平然とわたしたちのところへやってきた。
 南鮪がノーンの拉致罪でヤードの留置場にいるいま、捜査メンバー? の中で危険度ナンバーワンはこいつだよね。

「セリーヌさん。ミッシェルさん。仲良くお揃いですね。
お兄さんはお二人が喜ぶことなら、なんでもしてあげますよ。リクエスト、なんなりとお待ちしてます」

 風紀紊乱罪でつい数時間前までヤードに拘留されてたクド・スレイフ。

「ほんとに懲りない人だなぁ。ミシェルは男の子だよ。ヤードで絞られて、ついに男女の見境もつかなくなったわけ」

「ふふふ。甘いですねぇ。セリーヌさん。お兄さんの目はごまかせませんよ。
ミシェルさんは、セリーヌさんと同じにおいがします。つまり、あなたたちは同族なのですよ。
当然、ミシェルさんもお兄さんの守備範囲です。
ミシェルさん、さっきのお兄さんの質問、自分の中で一番かわいいと思うところはどこか? にこたえてくださいよ。
お兄さんが思ってるのところと同じなら、景品として」

 ブオッ。

 クドさんのパートナーのシスタ・バルドロウさんが、ライターの火をつけたまま、口に含んだお酒を霧吹きして、クドさんの顔面に火炎放射したの。

「メンドクせーから、クドのセリフは以下略な」

「おおお。お兄さん。熱いです。熱すぎますよ。今度は、顔が燃えてます」

 クドさんが顔をおさえ、うめている。

「るせー」


 酔っているのか、バルドロウさんは、今度は、ワインの大瓶を逆さにし、クドのさんの頭のてっぺんにバシャバシャと派手に降りかけた。

 ブオッ。

 再び、火炎噴射。ワインで濡れたクドさんの髪が燃えあがる。
 声もだせないのか、頭部を炎に包まれたクドさんが、口から黒煙をだしながら、無言で両手を振り回し、よたよたしてる。

「セリーヌさん。怖いよ。この人たち、なにやってるの」

「あ、ああ。うん。そ、そうだよね。ミシェルの反応は正しい」

 クドさんたちといると、こっちの感覚までマヒしてきて怖いな。
 いくらなんでも、頭部、顔面の炎上はヤバイよ。
 消火器、どこだっけ。
 あ、布でいいんだ。
 早く火を消さないと。

◇◇◇◇◇

<橘舞>

 百合園女学院の橘舞です。
 事件は無事、終わったんですよね。
 私にはよくわからないところもいっぱいあるんですけど、今回のパイの一件でブリジットをあんまりいい気にさせすぎると、よくないのがわかったので、事件の真相のくわしい説明はあえて聞かないでおくつもりです。
 でも、みなさんの笑顔とすっかり明るくなった街の雰囲気で、私にもすべてがうまくいったんだなってことは、わかりますよ。
 冬なのに、ガーデンもマジェも急に草木の緑が増えた気がするのは、気のせいですかね。
 私としてはせっかくお招きにあずかったのだから、セリーヌさんのところのお食事会に参加してもよかったのですけれど、推理研のみんなが冬のマジェの夜景を楽しみたいと言ったので、こうしてお散歩しているんです。
 来てよかった。
 ガス灯のともった十九世紀末のロンドンの街並みも、馬車の走る石畳も、クラッシックファッションの住民の方たちもいつもと変わらないんですが、マジェってこんなに暖かい感じのする場所でしたっけ。

「そう言えば、ブリジット。事件のことは私もよく理解していますから、なにも聞きませんけど、あなた、塔でマーリンさんにお会いした時、なにもきかずに、犯人はわかった、と行ってでてきてしまったそうですけど、そこでなにがわかったのです」

「パイの準備をしなくちゃならなかったし、あんなとこに長居しなくても、私の推理で十分に解決できる事件だって確信したんで、帰ってきたの」

「ならば、ブリが推理した犯人は舞になるのう。大正解じゃ」

 仙姫の言葉は冗談です。
 もちろん、私は犯人じゃありませんよ。
 マイナさんが街を撮影してて、蒼也さんが隣でいろいろ注文をつけてます。仲がいいですね。

「こんばんは。お揃いのようですね」

 私たちに挨拶してきてくれたのは、少女探偵のシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)さんと彼女のパートナーのシェリル・マジェスティックさん、それと。

 「私は、人形師兼探偵助手の茅野瀬衿栖よ。探偵のみなさん、よろしくね」

 「シャルちゃんのところもだんだん仲間が増えてきたね」

 ディオさんの言う通りですね。

 「アリアンロッドは今日は一緒じゃないのね」

 春美さんが意味ありげにつぶやきました。アリアンロッドさんって、どなたでしょう。

 「そうですね。彼女は当分は姿をみせないと思いますよ」

 「でしょうね」

 春美さんとシャーロットさんは笑みを交わしあいました。
 私にはさっぱり意味がわかりませんね。

「シャーロットさんも探偵活動をされていられるのだし、だったら、今後、事件があった時には、推理研と共同で捜査してもいいかもしれませんね。
レストレイド警部さんたちみたいに」

「それはムリでしょう」

 私の提案は、彼女自身に即座に否定されました。

「例えば、今回の事件、私がおそらくあなたちの誰よりも早く真相に到達していたのは、曾祖父の代からの人間関係や研究の成果があったからです。
みなさんは、この本を読まれたことがおありですか」

 さしだされた本の題名は、「The Dynamics of an Asteroid」(小惑星の力学)著者は、James Moriartyさん。
 私は読んだことがありませんね。天文学の本かしら。

「なるほど、あんたのハウスネームもダテじゃないってことね」

 ブリジットや私以外の推理研のメンバーのみなさんは、この御本を知っているようですね。

「曾祖父は、この本ですでに惑星の運行と光の力の合成によって、時間を自在に操れるケース生じるという仮説を論じています。
というわけでみなさん、私はおいそれとはあなたちのお仲間になるわけには行かないのですよ。
残念ながら」

 事情はよくわかりませんが、それは、本当に残念ですね。

FIN

担当マスターより

▼担当マスター

かわい家

▼マスターコメント

本リアクション公開まで、大変長らくお待たせいたしました。申し訳ございません。かわい家です。

まず単純に、また、みなさんにお会いできてとてもうれしいです。
この二ヶ月間、いろんなことがありました。
参加PLのみなさん、運営様に大変御迷惑をおかけしてしまい反省しきりです。

今回はさすがに代筆、進退も考えましたが、PLのみなさまの気持ちのこもったアクションと運営様のご配慮でこうして公開までこぎつけることができました。

本当にありがとうございました。

私としては、今後も蒼フロのGMを続けていきたい、と思っています。
次回以降があれば、ここ数回の失敗を踏まえ、完成、公開までのスピード面を重視し、改善を行いたいと考えています。

それはさておき、今年は明けてから半年間、みなさんのPCと共に生活できた感じで、すごく励まされました。
おおげさかもしれませんが、マジェスティックでのPCたちの活躍が日々の心の支えでした。

また、みなさまをミステリできるとうれしいです。
それでは、失礼します。

追記:6月16日(金)呼称等の誤記を訂正いたしました。申し訳ありませんでした。