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リアクション
第31章 楽しく笑い合って
ヴァイシャリー湖に浮かぶ島の一つに、観光用の施設がもうけられた島がある。
その島のコテージを一つ借りて、百合園女学院の生徒達が集まり、楽しくクリスマスを過ごしていた。
「繭ちゃん、アユナ今年も彼氏なしだけど! 皆と一緒のクリスマスに満足ー」
アユナ・リルミナルはコテージでのパーティの主催者である稲場 繭(いなば・まゆ)にぎゅっと抱き着いた。
「……日中は皆と過ごして、夜は彼氏と過ごせたら最高なんだど……ああ、ダメ。アユナまだそういうのは早いから。昼は彼氏と過ごして、夜は皆とがいい〜」
お酒を飲んでいるわけではないのだが、アユナは酔っぱらっているかのようにテンションが高かった。
「アユナさんってば……。昼も夜も、彼氏さんも一緒に過ごせるといいですね」
そう繭が言うと、アユナは元気よく頷いた。
「さて。クリスマスケーキ作ってきましたよー。美味しくできてるといいんですけど」
アユナの抱擁から解放されると、繭は箱をテーブルに置いて、中からショートケーキを取り出して皆に配っていく。
「アユナはから揚げ作ってきたよー。レンジでチンして食べようね」
アユナはから揚げの入ったパックを開ける。
2人だけではなく、集まった百合園生ひとりひとりが、何かしら料理か果物を持ってきていた。
テーブルの上には、沢山のクリスマス料理。
そして、飲み物が並んでいる。
少女達は、乾杯をして女の子だけのクリスマスパーティを始めた。
「アユナさん、これ……クリスマスプレゼントです」
繭はチキンを食べていたアユナに、そっと長い長方形の箱を差し出した。
「何、何?」
「十字架のネックレスです……気に入ってくれるといいんですけれど」
アユナは箱を開けて、自分の目で中身を確かめる。
そこには、可愛い少女の胸を飾るに相応しい、繊細な十字架のネックレスが入っていた。
「ありがと〜。嬉しい。とっても嬉しいよ」
アユナはとても喜んで、さっそくつけて。手鏡で確認し、にこにこ笑顔を浮かべている。
「アユナから繭ちゃんへはこれー」
アユナがとりだして、繭に渡したのは……。
小さなイヤリングが入った箱だった。
イヤリングには桃色に近い、紫の小さな石が嵌め込まれている。
「ありがとうございます」
繭も笑顔でアユナに礼を言った。
「繭ちゃん、服装とかお化粧とかで、もう少し大人っぽく見せることできると思うの。今度アユナと勉強してみよっか。……そのままでも可愛いんだけどねっ」
繭とアユナはさほど歳は変わらないのだが――年々歳の差が開いてるようにも見えるほどに、繭は幼く見えるのだ。
「そうですね。一緒に買い物に行きたいですね」
「うんうん、今度デート服とか、勝負服とか買いにいこーね!」
そんな約束をしたり。
並べられた料理のレシピを教え合ったり。
年末年始の帰省のことや。
好きな男の子の事。先輩のこと。
明るい声をあげて、少女達は楽しく会話を続けていく。
「今年もいろいろあったけど、一年間楽しくすごすことができました。来年もまた、こうやってみんなで楽しく笑ってすごせたらいいですね」
お開きの時間になり、繭が皆にそう言うと。
沢山の賛同と、来年も沢山パーティーをしようという言葉が返ってくる。
「アユナは今度は何を作ろうかな〜。材料持ち合って、皆で作るのもいいよね。あと、鍋パーティーとかもやりたいなぁ」
はい、と繭は返事をした後で。
皆に照れ笑いを見せた。
「えへへ、これからもよろしくお願いします」
誰からともなく、拍手が沸き起こり。
「繭ちゃん、お疲れ様」
アユナがまたぎゅっと抱きついてきた。