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リアクション
第3章 半年経ったね
機晶姫である天海 北斗(あまみ・ほくと)にとっても、今日は特別な日だった。
防水構造ではなく、飲食も一切出来ない北斗には、食べたり飲んだり、泳いだり、風呂に入ったり。そんなデートは出来ないけれど。
それでも、今日が恋人と過ごす大切な日であることに変わりはなかった。
北斗はほぼ全身が大破した状態で、転がっていたところ、パートナーの天海 護(あまみ・まもる)に拾われて、修理され再起動した後、護と兄弟として契約を交わした。
再起動前の記憶はほぼ失っている為、自分が何の為に作られたのか。
どんな風に生きてきたのか――。
その記憶はほとんどない。
北斗にとっての生は、再起動をしてから。
護に助けられ、そして……大切な人、レオン・ダンドリオンと出会ってから、過ごした日々が、生きている、記憶に残っている時間だ。
「今日はオレの誕生日だけど、覚えててくれてるかな」
待ち合わせの場所に急ぎながら、北斗はレオンを想う。
きっと覚えていてくれるだろう。
去年も、彼は祝ってくれたから。
出会ったのは去年の夏。
彼を好きになったのは、北斗の方から。
休暇を一緒に楽しんだり、一緒の任務で頑張ったり。
共に過ごしてきて、そしてようやく恋人同士になれたのが、半年前。
出会って2度目のクリスマスは、2人きりで過ごす予定だった。
話したいことはいくらでもある。
1年半、苦楽を共にしてきた思い出が思い浮かんでいく……。
飲食が出来なくても、温泉に入れなくたって、2人でしたいことは沢山あった。
「これからもずっと、一緒に過ごす為に」
結婚……はまだ早いかもしれないけれど、婚約をしたいなと。
北斗は考えながら、笑みを浮かべた。
「今年は2度目のクリスマス。来年も、その先もずっと、いっしょに居られますように」
そんな言葉が、北斗の口から流れ出た。
レオンも同じ気持ちでいてくれているだろうか。
海を眺めながら。
オレンジ色の光の中で。
付き合うか、と。
恋人として、よろしくな、と。
言ってくれたあの日のままの気持ちで。
ずっと、自分の隣に。ずっと彼の隣にいられるだろうか。
「愛してるぜ、レオン!」
こらえきれない想いを口にしながら、北斗は大好きな人の下に駆けていった。
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