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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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 ■ 8年目の墓参り ■
 
 
 
 墓に向かう道をたどりながら、ライオルド・ディオン(らいおるど・でぃおん)は呟いた。
「もう8年になるんだな……」
 両親と妹のリリイが死んで8年。
 現実を受け入れられなかったライオルドは、施設に入ってからもずっと墓参りを避けていた。墓を目の前にしてしまったら、両親と妹が死んでしまったのだということを、認めざるを得ないような気がして……どうしても足が向かなかったのだ。
「……大丈夫?」
 心配そうにこちらを見てくるエイミル・アルニス(えいみる・あるにす)は、妹とそっくりな見た目をしている。剣の花嫁は使い手にとって大切な人に似るというから、それはライオルドがリリイを思っていた証拠でもあるのだろう。
 けれどエイミルの不安に揺れる瞳に、ライオルドは大丈夫だと答えを返した。
 今までは墓に来るのは無理だった。
 けれど、ようやく覚悟が出来てやってきたのだ。両親と妹、今は亡き大切な家族に、パートナーを紹介しようと。
 
 実際に墓を目の前にするとやはり心が揺れたが、ライオルドはそれを抑えて墓を掃除した。
 ライオルドが施設で酷い扱いを受けていた頃に契約をしたエイミルは、事情を良く知っているが故に気がかりそうに墓掃除を手伝った。反対に、まったくライオルドの家族の事情を知らないハングドクロイツ・クレイモア(はんぐどくろいつ・くれいもあ)は掃除こそ手伝ったけれど、さっぱり分からないというように言う。
「マスター。家族というものは、それほど大事なものなので?」
 ハングドクロイツには家族という概念自体が理解できない。人がそれに振り回されるのを見て、くだらない情ではないかとも思っている。
 だからそう無神経に口にしたのだが、その途端エイミルに強引に止められた。普段と違うエイミルの断固とした様子に、これは言ってはならないことだったのかと理解はしたものの、ハングドクロイツにはもやもやしたものが湧き上がる。
 ライオルドのことで、エイミルが知っていて自分の知らないことがあるのは実に不愉快だ。
 
 ライオルドは黙々と丁寧に、エイミルはいたわるかのように、ハングドクロイツは至って普通の作業のように。
 3人の手によって、ライオルドの家族の墓はこざっぱりと掃除された。
 掃除が終わるとライオルドは花を供え、今は亡き家族へと話しかける。
「……ナラカでエンシェントドラゴンに言われたよ。死んだ者には会えないってさ……。だから、ってのも変だけど、ようやく覚悟も決まったよ」
 家族の死を、本当のところで受け入れきれていなかった自分を振り切り、ライオルドは心配そうに寄り添うエイミルと、我関せずといった様子のハングドクロイツを墓前に紹介する。
「エイミルは元気で明るくて、ちょっと天然なところがリリイにそっくりなんだ。もしかしたら仲良くやれたかもな。ハングドクロイツは、性格は悪いけど頼りになる奴だよ。性格は悪いけどな。家事も得意だし、ゲームも得意だし、父さんと母さんとは上手くやれると思う。……それはそれで何か複雑だけどさ」
 もし家族とパートナーが会ったら。それはあり得ない仮定になってしまった。けれど。
「父さん、母さん、リリイ……随分時間がかかってしまったけど、俺はもう大丈夫だ。今は掛け替えのないパートナーもいて、1人じゃない。だから安心してくれよ」
 歩いて行こう、進んで行こう。
 家族の思い出を胸に抱いて。
 それが生きている者の役割なのだろうから。