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【ダークサイズ】戦場のティーパーティ

リアクション公開中!

【ダークサイズ】戦場のティーパーティ

リアクション

 ダークサイズVSアンダーガールズ・カラクリ人形部隊の乱戦が繰り広げられる中、さらなる戦闘の轟音と、明らかに巨大な怪物と思われる叫び声が響く。
 ニルヴァーナ捜索隊とブラッディ・ディバインの戦いも、いよいよクライマックスを迎えているらしいことが想像できた。
 直接は見えないとはいえ、怪物の叫び声や爆発音がオクタゴンを揺らす。
 しかしそれでも動じずに目の前の客人との一期一会のために、茶を立てる。
 それが茶の湯の極意の一つ。
 数寄屋造の四畳半のコンテナ『梅風亭』では、顕仁が亭主となり、茶を点てる。
 見とれるほどに様になるその所作は、さすがモモを厳しく指導しただけある。
 顕仁の隣ではレイチェルがお茶うけを用意し、ラピュマルでアルテミスのご飯係で活躍してくれた、終夏たちやトマスたちをもてなしている。
 亭内では、ものものしい戦闘音をBGMにしながら、ゆっくりと時間が流れる。
 茶室の外で、泰輔とフランツが、額の汗をぬぐう。

「いやー、ようやっとできたで」
「実現できてよかったねぇ」

 二人が握手したところで、ちょうど後ろで怪物の声が聞こえてくる。

『……風流って大変だ』

 二人は振り返りながらつぶやいた。
 梅風亭のすぐ隣は、レティシアの『麗茶亭』。
 野点を目指した彼女は、畳だけを敷いて、BGMはおろか、背景すらも戦いの景色である。
 裏千家名取のレティシアの所作も、いつもの騒がしいものとは打って変わって華麗なもので、モモが思わず。

「……ほぅ……」

 と、ため息を漏らし、直後慌てて首を振るほど。

「さ、モモちゃん。次のお客様は、モモちゃんがもてなしてくださいねぇ。ちゃあんと丁寧にしないと、あとでお仕置きですよぉ」

 レティシアは笑顔で、手をわきわきと動かす。

「は、はい」

 レティシアのお仕置きの内容は、もはやモモとミスティには容易に想像できてしまう。
 モモのもてなしを受けにきたのはララだが、彼女はお茶を飲みに来ただけでなく、リリからの指令もこなそうとする。
 モモは亭主デビューに緊張しながら、お茶を点て、ララに出す。
 ララは一口、わざと喉を控えめに鳴らして飲む。

「……結構なお手前で」

 ララは歯を光らせ、モモに笑顔を送る。
 レティシアは、ララの笑顔を見て、

(この笑顔、この容姿、この仕草……もしや)

 と、警戒する。
 ララは、

「素晴らしいお茶をありがとう。でも、私はもっと素晴らしいものをいただいた」

 と、モモの手を取る。

「美しいマドモアゼル。悪の組織に君のような花が片隅に咲いていようとは。私はララ・サーズデイ。このお茶と君の仕草のお礼に、私の唇がこの美しい肌に触れることを許して欲しい」

 ララはモモの手にそっと接吻し、

「これからは君のために戦おう。君を守るために、私と私のパートナーをダークサイズの重要職につかせてくれないだろうか」

 と、モモの手を引っ張って顔を寄せ、ララはモモの頬からあごをそっと撫でた。
 モモはうっかり顔を赤くしてしまい、レティシアがモモを後ろから引っ張る。

「うわーん、やっぱりぃ! あちきのモモちゃんに何をするう〜」
「いや、別にレティのものじゃないけどね……」

 ミスティは、無駄と知りつつも一応突っ込んでおいた。


☆★☆★☆


「はーい、モノマネするよー。『私はダークサイズの大総統、ダイソウトウだ!』」

 ノーンがお茶会の事を『宴会』と称していたのはわざとではなく、本当に勘違いしていたからである。
 彼女は密かに練習してきた宴会芸『ダイソウトウのモノマネ』を披露した。
 小さな女の子がおじさんのモノマネをするわけだから、当然似てるはずはない。

「やーん、似てるうー!」

 と、ノーンを撫でて褒める辺り、向日葵はノーンにすっかりぞっこんである。

「似てるうー! じゃねえっ!」

 ゲブーがテーブルを叩く。

「やいおっぱい(向日葵)! 気にはなってたけどよ、てめー……普通にティーパーティ楽しんでやがるな?」
「ぎくっ」
「ったくよー、俺様が何でわざわざイコンまで駆りだして来てやったと思ってんだ! おっぱい揉むためだろうが!」
「いや、それはおかしいだろう……」

 永谷が後ろからツッコむ。

「とはいえサンフラワーさん。ダークサイズはティーパーティとブラッディ・ディバインとの戦いで手いっぱいだ。今こそ、ダークサイズを倒す最大のチャンス……!」
「そ、そういえば!」

 永谷の言葉に、ハッと我に返る向日葵。
 さらに類が現れる。

「そうだぜ! 考えても見ろ。今回敵が大きすぎて、俺達全然目立ってないぜ。挙句ニルヴァーナ一番乗りだと? させるか! 一番乗りは俺がやるっ!」
「なるほど、ダークサイズの目的を一つ潰すのは効果的かもしれない」

 永谷はポンと手を叩く。
 類はストレスがたまっていたようで、ダークサイズへの文句が続く。

「それに予告通りスペシャルシナリオできやがって!」
「あっ、それ俺様も思った! まさかグランドシナリオ狙ってんじゃねーだろなー」

 突然ゲドーまで合流して話に加わる。
 さらにアキラがふらふらと近寄り、

「いやー、ペリフェラルとコラボってきちゃったからねぇ。もしかしたらもしかするかもだねー」
「ま、待つんだみんな! それ以上の悪ノリはいろいろと危険だ!」

 と、これ以上そういうノリの発言者が増殖しては危ないと、永谷がみんなを引き留める役割をさせられる。


☆★☆★☆


「フハハハ! 聞いたぞ聞いたぞダイソウトウ。それでこそ我がオリュンポスの盟友ダークサイズ!」

 トイレから復帰し、ティーパーティとニルヴァーナ一番乗りを目論む今回の目的を聞いたハデスは、愉快そうにダイソウの向かいに座る。
 カラクリ人形が戦闘組の間を縫ってティーパーティに乗り込もうとしてくるが、

「博士、ダークサイズの皆様! 【お下がりくださいませご主人様】!」

 ヘスティアが人形をはじき返し、ダイソウとハデスの周りにしっかり防護を張っている。

「ニルヴァーナ一番乗りか……その作戦、当然我らオリュンポスも協力させてもらうが、かまわんだろうな?」

 ハデスの申し入れに、ダイソウは頷き、

「かまわん。一番乗りを目指す以上、捜索隊すらも敵に回す可能性がある。味方は多い方がよいからな」
「うむ! ところでダイソウトウ。ニルヴァーナはどのようにして征服を目指すのだ? 我々悪の秘密結社の美徳として、ニルヴァーナを恐怖のどん底に落とす演出が必要だな」
「その通りだ。いいかげん、我々も悪者らしいことをしなければ。いろいろと誤解も生んでいるようだしな」

 悪者なのに、なかなかシリアスに憎んでもらえないダークサイズ。
 オリュンポスとの同盟を機に、初心に帰って悪いこともせねばならない。
 ダイソウの隣で、翡翠が口を開く。

「順当なところでは、ダークサイズニルヴァーナ支部の設立、といったところでしょうかね。カリペロニアから離れると、いろいろと経費もかさむことでしょうし」
「ちょっとちょっと! あたし抜きで勝手に変な話進めないでよ。てかなんで翡翠が率先してアイデア出してるわけ!?」

 菫が慌ててこたつから出てくるが、ハデスが大きく笑う。

「よく言った! さすがダイソウトウの側近だけあるな。よし、ニルヴァーナ支部はオリュンポスとダークサイズの共同出資といこう! 我々には金はないがな! フハハハハ!」

 表面上のテンションの差はあれ、適当さ加減においてダークサイズとオリュンポスはどこか似ている。

「そ、その話、もう少しくわしくっ!」

 そこに、カメラと『突撃! 戦場のティーパーティ』のボードを抱えて、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)が突撃取材を敢行しに来る。
 優希の顔を見たダイソウが、突然彼女を叱る。

「久しぶりではないか。何をしていたのだ。おかげで館の操作盤の使い方が全く分からんではないか」
「ああっ、すみません! こちらで忙しかったもので」

 と、優希は『六本木通信社』と書かれた腕章を見せる。

「それはともかく、今回六本木通信社では誰がニルヴァーナ一番乗りを果たすのか、を取材しています。ダークサイズの意気込みを!」

 優希がダイソウにマイクを向ける。

「我々は、彼らの必死の戦闘を尻目に、このようにティーパーティを楽しんでおる。ニルヴァーナ一番乗りは当然叶えるつもりだが、戦場において戦いながらもこの悠然たる態度。これはパラミタ史に残る企画だと自負しておるので、これはダークサイズの名を上げる……」
『ぐおおおおおおおお……』

 ダイソウのコメントを遮るように、遠くで怪物の声が響く。

「ああーもう! うるさいなぁ。すみません、今の録れなかったのでもう一度」
「うむ。我々のこの偉業は」
『ぐおおおおおおお……』
「す、すみません、もう一度」
「……シャンバラ政府も無視できなく……」
『ぐおおおおおおお……』
「……」

 戦いがクライマックスを迎えているようで、ダイソウのコメントはとぎれとぎれ。

「ねーねー、ダイソウ閣下―。ゲート開くのまだー?」

 少し離れたテーブルでは、カレンがスプーンとフォークを鳴らしながら、『ごはんまだー?』のテンションで催促する。

「なぜそれを私に聞く……」

 ダイソウにも分かりようがない質問だが、カレンには別の狙いがあったらしく、隙を突いてカレンに近づく陰陽師の一人が、

「あたしたちがこんなに近くまで迫ってるのにこの余裕……お、恐ろしい子!」
「どりゃあああっ」

 手を口元に添えて恐れる陰陽師を、社が横から殴り飛ばす。

「きゃああっ!」

 ローズのプロレス技をきっかけに何かのタガが外れたのか、社も陰陽師を殴るのに容赦ない。

「や、やっぱりえげつないわ、こいつらー!」

 陰陽師たちは敗色濃厚になり、また退却を始める。
 ダークサイズ、そしてニルヴァーナ捜索隊が優勢になって来たことに危機感を感じるのは向日葵たち。

「まずいわ。早くしないとダークサイズに余裕ができちゃう!」
「よーし、急いでダイソウトウをモヒカンだあー!」

 バーバーモヒカンが先陣を切って、【隠れ身】でダイソウに近づき【テレキネシス】で動きを止める。

「むっ、いかん」

 ダイソウがバーバーモヒカンの餌食にならんとしたその時、お茶会を楽しみながらそれとなくダイソウを盾にして身の安全を図っていた大佐が現れる。

「えっ!?」

 と、バーバーモヒカンが叫び、大佐が弓の弦でバーバーモヒカンを切り裂こうと迫る。
 すんでのところで避けるものの、大佐は反対の手で矢を持ち、バーバーモヒカンに直接突き刺そうとする。
 バーバーモヒカンは袖を裂かれつつ何とか避けるが、狙いを外してダイソウの右側頭部に、雷のようなギザギザのそり込みを入れるに留まる。

「あれーっ! くっそー、人気ダンス&ボーカルユニットのあの人みたいになっちまったー!」
「バーバーモヒカン! てめえシャレオツな髪形にして差し上げてどうすんだー!」
「ご、ごめんよピンクモヒカン兄貴―!」

 ダイソウはそり込みに手を触れながら、

「助かったぞ、大佐」
「よいよい。私も助かっておったからな」

 さらに、向日葵たちの前にアキラとアリスがひょっこり現れ、

「こほん。なあサンフラワーちゃん。確かに俺達ダークサイズは悪だが……今回は状況をよく見て欲しいんだ。俺達、捜索隊の支援をしに来たんだぜ?」
「うっ……そ、そんなごまかし、通用しないんだからね!」
「サンフラワーちゃん、考えテ。さっき陰陽師が撤退を始めた時、やばいって思ったわよネ?」
「それで証明されたが、今回サンフラワーちゃん達の存在は、鏖殺寺院並みの極悪ってことだぜ!」

 アキラが指ささすと共に、向日葵たち、特に永谷や類に衝撃が走る。

「な、なななな」
「俺達が、極悪……だと?」

 続いて千尋とノーンが手をつないで歩いてきて、光のない目でこう言う。

『サンフラワーちゃん……一緒にニルヴァーナに行こうよ』
「あれー! 誰かに言わされてるみたいにー!?」
「ふっふっふっふ……」

 千尋とノーンを操っているのはいたずらっぽく笑う美羽。
 【ヒプノシス】と連動した五円玉催眠術で、二人に続いて向日葵にも攻撃。

「みんなで一緒に、ニルヴァーナに行きたくな〜る……」
「……はい……」
「さ、サンフラワーさんっ!?」
「つーか、かかるの早えー!」

 美羽は続けて、向日葵に命令する。

「もう少しで戦いが終わるから、それまで一緒にお茶会しようね」
「……はい……」
「さあ、こちらにマフィンやケーキもありますよ」
「……はい……」

 クロスが優しく、向日葵の手を引く。
 何とか一矢報いようと、ゲブーが向日葵の肩に手を置く。

「俺様におっぱいを揉まれたくなーる!」
「……いやです……」
「断んのかよ! てめーホントに催眠術かかってんのかー!?」

 美羽の活躍と同時に、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)がダイソウの肩を叩く。

「どうもこんにちは。これ、美羽からの差し入れ」

 コハクは、美羽からの差し入れだと言うお月見団子を差し出す。
 ダイソウは、

「ほう、月に来たからお月見団子というわけか。なかなか粋ではないか」
「そこまで美羽が狙ってるかどうかわからないけどね。あとこれ」

 コハクは、対ダークサイズの中で唯一美羽が集めているスタンプカードを出し、

「今回はブラッディ・ディバインと戦わなきゃいけないから協力してあげる。お返しにスタンプちょうだい、だってさ」
「む……恩を着せてスタンプをよこせと。なかなかやりおる……」
「ダイソウトウのスタンプをもらったら、たしか全部そろうはずなんだけど……」
「なに、もうそんなに集めたのか?」
「ところで、ダイソウトウを倒すかスタンプカードを完成させたらダークサイズ攻略だけど……攻略したらどうなるの?」
「そういえば、決めてなかったな……」
「ええー……」
「よし、スタンプカードが完成したら、『ダークサイズが一日何でも言うこと聞いてあげる券』と引き換えにしよう」
「ちょっと待ってダイソウトウ。まじでそれ待って」

 当然のように目を光らせていた菫が割って入る。

「あんたそれ、絶対大変なことになるわよ」
「がんばって集めるのだから、それくらいの恩恵はなければ」
「だからそういうの勝手に決めないでって言ってるの! しかも何であんただけじゃなくてダークサイズ全員で言うこと聞いてあげなきゃいけないのよ!」
「きっと、正義の戦士たちがわくわくするぞ」
「あんた敵を喜ばすために悪人やってんの? そういうイベント主みたいな発想やめてよ!」

 三度菫の説教が始まり、

「あのー、スタンプ……」
「今取り込み中だから!」
「……ごめんなさい」

 と、コハクはその優しい性格から、今回は菫に押し切られてしまった。

「相変わらず楽しそうだね」

 ダイソウや翡翠、クマチャンなどが座る並びに、いつの間にか天音とブルーズが座っている。
 ダイソウは、天音と話をするからと、菫の説教から逃げ出す。

「ダイソウトウ。戦いは長くないが、ゲートが開くまでもう少しかかりそうだ。僕からも差し入れをしておこう」

 と、天音は【週刊少年シャンバラ】と【テロルチョコ】を差し出す。
 天音はダイソウとアルテミスを見比べ、

「へえ、ダイソウトウ。なかなか隅に置けないじゃないか」

 アルテミスは顔を赤らめて少し気を良くするが、ダイソウはキョトンとして、

「私は真ん中に座っているが?」

 テーブルの真ん中に位置する、ダイソウの的外れな返事を聞いて、天音はほほ笑む。

「ふふふ、そうだね」
「天音、なぜちゃんとつっこまんのだ……」

 と、逆にブルーズがうずうずする。
 向日葵が催眠術にやられて、類は、

「こうなったらやけだ。お茶菓子全部食べ尽くしてやる」

 と、遅ればせのフードファイトでダイソウの食べ物を奪っていくし、週刊少年シャンバラには、クマチャンが手を伸ばす。

「週シャン久しぶりに読むなぁ」
「どうだい? ダークサイズでもこういう雑誌を作ってみないか? ハッチャン辺りは良い編集になりそうだし、君なんかも割りとヒマな立場だろう?」
「う、うるさいなぁ……」
「ウオオオオーッ!」

 近くで何者かの雄叫びが響く。
 見ると、ギャドルがカラクリ人形の残骸の山の上で、勝利の雄叫びをあげている。
 角度を変えると、逃げ遅れた陰陽師が数人倒れており、その脇ではセクスィー☆ダイナマイツの四人が高笑いをしている。
一体どんなセクシー勝負をしてどうやって勝ったのだろう。
 円とペンギンが倒れる陰陽師をつつきながら、

「ねーねー、ダークサイズ入ろうよ」
「くわー」

 粘り強く勧誘している。
そして、その戦場写真を桂が収め続けている。

「一騎当千! ○熊MSが風邪でも引かない限り、我らダークサイズは不滅っ!!」
「あのね、だからそういう発言あんまり増やさないでね」

 アスカの勝どきを、超人ハッチャンがハラハラしながら押さえ、

「ったく、このチビ泣き虫! 待ってろっつっただろ! 何で勝手に来やがった!」
「ごめ、な、さ……」
「だー! もう泣くな! 泣きながら頭に乗るな!」

 鴉は叱りながら、頭の上のラルムをあやし、オルベールは

「疲れたぁ〜。ハッチャンおんぶー」

 胸を超人ハッチャンの背中に押しつけながら甘えている。
 戦闘が終わったのを見て、レキと桂がカメラをかざして全員に言う。

「みんなお疲れ様―! いよいよニルヴァーナだね! 記念写真撮るよー」
「さあ、一応ソウトウを中心にしましょう。リーダーですからね」

 宇宙進出、ニルヴァーナ侵攻、そして戦場のティーパーティ記念に、レキと桂が全員を集めて写真を取る。
 数人は捜索隊で抜けているとはいえ、ずいぶん大所帯な撮影風景となった。
 ギャドルの雄叫びから間もなく、遠くでも怪物の断末魔と思われる叫びが聞こえる。

「おや、そろそろか。雑誌作りの件、考えておいてくれ。行こうかブルーズ」

 天音はマイペースに席を立つ。

「おい天音。さっき差し入れたあれ、テロルチョコだよな?」

 ティーパーティを離れながら、ブルーズが言う。

「おっと、うっかり普通のチョコと間違えて差し入れたかな」
「本当にうっかりなのか?」
「さあ、どうだろうねぇ」
「……聞くのは野暮だったようだな」
「できれば、一番乗りは空京 たいむちゃん(くうきょう・たいむちゃん)にしてほしいしねぇ……」

 二人は謎の会話をしながら、捜索隊に戻っていく。
 その二人を見送るように、オクタゴン全体がかすかに揺れ始める。