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リアクション
今回の旅は、古代神であるダイダル 卿(だいだる・きょう)の本体に乗っての空の旅である。
普段は人間型のボディで生活する彼だが、その巨大な本体は普段、大総統の館の裏側に山(パルナソス山)となってそびえている。
ダイダル卿が本体に移ると、山が本来の姿である、巨大な円盤状の浮遊体となる。
これをダークサイズの浮遊要塞としており、要塞名は『蒼空の城ラピュ○(そうくうのしろらぴゅまる)』と呼称している。
厳密に言うと、ラピュマルは浮遊要塞の定義から外れるのだが、ダイダル卿本人も深くは追及しない。
「ところでハッチャン、その子どうしたの……?」
ダークサイズ幹部が持ち込んだ物資の、山への積み込みを手伝いながら、クマチャンが超人ハッチャンの頭の上に乗っている小さな子どもを見る。
クマチャンと目が合ったその子ラルム・リースフラワー(らるむ・りーすふらわー)の目が、突然うるうると涙を溜め始める。
「……いぢめる?」
「ええー、なんでさ!」
驚いたクマチャンの声にラルムはびくっとなって、今度は顔までくしゃくしゃになりだし、
「はちゃん(ハッチャン)……いぢめる……?」
と、クマチャンを指さす。
超人ハッチャンは慌ててラルムを頭から降ろし、
「よーしよし。クマチャンはいじめないよー。お友達だからねー」
と、ラルムをあやす。
その様子を見たクマチャン。
「ハッチャン……隠し子?」
「違うよ!」
「……いぢめる?」
「あー! よしよし!」
つい大声を出すと半泣きの顔になるラルム。
超人ハッチャンとクマチャンで、慌てて落ち着かせる。
「で、どうしたの?」
「月に連れて行って欲しいんだってさ」
ラルムは師王 アスカ(しおう・あすか)のパートナーらしいのだが、アスカがニルヴァーナ捜索隊の任務でパラミタの月に行っていて、留守に残されたラルムが寂しさ募ってアスカに会うため、超人ハッチャンを頼って来たらしい。
「ちっちゃいのに留守番だったのかー。えらいなー。おわ、やーらけー」
クマチャンがラルムの頬をぷにぷにとつつく。
「……スリーメンアンドベイビー……」
ハッチャン直属メイド隊として、後ろからついてきているのはアイリス・ラピス・フィロシアン(あいりす・らぴすふぃろしあん)とイブ・アムネシア(いぶ・あむねしあ)。
アイリスはラルムをあやす二人を見ながら、そうつぶやく。
「うぅ、アイさ〜ん、どうでもいいですけど、またボクメイド服ですかぁ〜?」
と、イブが後ろからアイリスにぶつぶつ言うのを、アイリスは振り返って人差し指を口に当てる。
「……秘密……」
「はぃ……ダークサイズを監視するスパイの秘密の制服ですよねぇ、分かってますけどぉ……」
「……ハッチャン……手伝う……」
「あぁ、そうですねぇ! お茶会はボクも楽しみなんですよぉ〜。パラミタの月でティーパーティなんて、ロマンチックじゃないですかぁ〜」
捜索隊として既に月に向かっている月詠 司(つくよみ・つかさ)に頼まれて、ハッチャンのお世話をしに来た二人だが、ことイブに関しては、パラミタの月の現状など肝心な詳細は知らされていないようで、イブは宇宙でのオシャレなお茶会を想像して、ほほに手を当ててほくほくしている。
「さぁ、ハッチャンさん。これは頂上まで運ぶってことでいいんでしょうかねぇ〜」
イブが張り切って荷物を持ちなおしたところに、突然爆発のような突風が、彼らを襲う。
風の来た方向を見ると、大きなカボチャにモヒカンを取り付けたようなイコンが着地している。
『ヒャッハー! おっぱいはいねーがーっ!』
キング・王・ゲブー喪悲漢の中から、ゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)が叫ぶ。同じく搭乗するバーバーモヒカン シャンバラ大荒野店(ばーばーもひかん・しゃんばらだいこうやてん)も、
『ピンクモヒカン兄貴が、あんたたちを華麗にモヒカンにしてやるもんねーっ!』
と、超人ハッチャン達にすごむ。
ゲブーのイコンの手の上に便乗してきた七篠 類(ななしの・たぐい)が、
「今度こそ、お前達ダークサイズの好きにはさせんぞ! ニルヴァーナ一番乗りなど許すわけにはいかんっ!」
と、口上を決めるものの、ド近眼の彼は、超人ハッチャンたちでなくゲブーに向かって啖呵を切っている。
「サンフラワーちゃーん。出発に間に合ったみたいだよぉー」
彼らのすぐ上空には、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)の操縦で、オクスペタルム号が到着している。これにはどうやら、秋野 向日葵(あきの・ひまわり)も便乗しているようで、ノーンは艦内の向日葵に声をかける。
いつものように夫婦生活に忙しい御神楽 陽太(みかぐら・ようた)に、
「毎度申し訳ないのですが、ノーンをよろしく」
と頼まれた向日葵。
ノーンの世話ならやぶさかではないと、ついでにイコンに便乗するオプションもつき、共にやってきたようだ。
「はーっはっはー! ここで会ったがダイソ、あれいない」
「閣下ならまだこっちに向かってる途中だよ」
向日葵はオクスペタルム号の甲板から乗り出すが、狙い外れてダイソウがいないので出鼻を挫かれる。
向日葵はイコンからトンと降り立ち、クマチャンに、
「ダイソウトウは?」
「すぐ追いつくと思うよ。てか、でかいイコンだなー」
「ふっふっふ。あたしたち対ダークサイズの本気を見たか! この陣営で、ニルヴァーナ一番乗りなんて大それた野望は絶対阻止だもんね」
「フッ……甘い! 甘いな魔女っ子サンフラワー!」
イコンが数機、山に降り立ったのを見て警戒のため山頂から下って来たのは、シュトルム・ブラウ・イェーガーを操る相沢 洋(あいざわ・ひろし)と乃木坂 みと(のぎさか・みと)。
洋はイコンで腕を組み、向日葵を見下ろす。
「その程度の軍備で我々の怒涛のごとき進軍を阻止すると? 片腹痛いわ」
「なんだとー、親衛隊のくせに!」
「まあよい。念のため様子を見に来たが、貴様らなら今ここで撃墜することはない。そうだ。早速貴様らの戦意を削ぐため、ダークサイズのそうそうたる布陣を見せてやろう。ついてこい」
(洋さま……それとなく機体の自慢もしたかったこと、わらわの胸にしまっておきますね)
というみとの思いは置いといて、洋の先導で向日葵たちも山頂へ向かう。
☆★☆★☆
山の別角度からダイソウがエメリヤンを駆って、ふわふわと登山をしていると、彼を目指してイコンが一機飛んでくる。
ずしんと盛大な音を立てて着陸したそれは、全身金色に塗装された、いかにも派手なものである。
『なあっ! あんたがダイソウトウか?』
イコン{ICN0004006#SリンクG−MONEYカスタム}から、何やら必死そうな声が聞こえる。
「いかにも、私は謎の闇の悪の秘密の結社ダークサイズの大総統、ダイソ……」
『俺も月に連れてってくれ!』
久しぶりのダイソウの名乗り上げを遮って、イコンのパイロットはのっけから熱心な懇願をする。
ダイソウは彼に聞き返す。
「お前は何者だ?」
『俺か? 聞いて驚け! 未来の宇宙のロックスター、仏滅 サンダー明彦(ぶつめつ・さんだーあきひこ)! 俺のシャウトは地獄の悪霊を呼び醒ますぜ! ファアアーック! てなわけで頼む! 俺の歌を宇宙で流してください! この通り!』
と、サンダー明彦は、彼にとってよほどの夢だったのだろう、イコンごと土下座をして見せる。
ロボットが人間に土下座をするという不思議な画が展開される中、ダイソウは、
「よし、合格」
と、すんなりOK。
隣から翡翠が、内偵監査部としてダイソウをつつく。
「そんなあっさり受け入れて大丈夫なのですか? また菫さんに怒られますよ?」
「特に断る理由も見当たらぬからな」
「それはまあ、そうですが」
「空京放送局の衛星電波が圏内ならば、お前の歌を流すこともできよう。我々についてくるがよい。ただし、イコンで来たからにはお前にも戦力になってもらうぞ」
『ま、マジか! いいのか!? やったぜーっ! 俺も宇宙デビューの時が来たようだな! よしダイソウトウ! 感謝の印に、作詞作曲俺の、ダークサイズテーマソングを贈るぜ』
サンダー明彦はイコンに乗ったまま、テンションMAXで歌い出す。
『♪だーくさいっ だーくさいっ お前のとーちゃん だーくさいっ 俺のかーちゃん らんららん隣のねーちゃん ファァーック♪』
作ったのかアドリブなのか良く分からないが、とにかく彼のテンションからは、ダイソウへの謝意は伝わってくる。
SリンクG−MONEYカスタムの金ピカの機体が反射する光と、サンダー明彦の変てこな歌につられたのか、ダイソウの元にまた見慣れぬイコンが降りてくる。
『ここか? 俺のイコンの力を必要をしてるダークサイズってのは?』
ソードウイング/Fの中から、ヴェルデ・グラント(う゛ぇるで・ぐらんと)の声が響く。
後ろではエリザロッテ・フィアーネ(えりざろって・ふぃあーね)がモニターの座標を見つつ、
『間違いないわ。そこの、山羊に乗って浮かんでるのがおそらくダイソウトウね』
『なるほどな。確かに変わりもんの匂いがぷんぷんするぜ』
「お前達も、我々ダークサイズの旅についてくると言うのか」
「まあな」
ヴェルデはひらりとイコンから飛び降り、
「見ろよ、俺のイコンを。通常フィーニクスの飛行形態は鳥のような形態が基本だが、何と飛行形態がパラ実イコンを彷彿とさせるんだぜ? しかもこれがフォルトの状態だ。こいつが変形してフィーニクスのようになるインパクトはだな……」
と、早速自前のイコンをダイソウに解説し始める。
知らない単語の連続で、ダイソウの返事はお決まりのもの。
「なるほど。分からん」
「かーっ! これだから素人はよぉー」
ヴェルデはダイソウの肩に腕をかけ、首を横に振る。
続いて今度は、森の木々をかき分けて、パワードスーツとタンク型のイコンが3機。
『兵器が少なくては心もとなかろう。私たちスマラクトヴォルケ隊が、ニルヴァーナへの旅を補佐する。』
戦闘のパワードスーツからは月島 悠(つきしま・ゆう)の声が聞こえる。
イコンの音を聞きつけてさらに合流してくるのは、たおやかな物腰のルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)と見るからに粗暴な印象を与えるドラゴニュートのギャドル・アベロン(ぎゃどる・あべろん)。
「おい、ルファン。こいつらをぶっ倒せばいいのか?」
「何を言うておる。彼らはわしらをニルヴァーナへ連れて行ってくれるのじゃぞ。敵は鏖殺寺院じゃ」
とルファンに言われて、物珍しそうにきょろきょろするギャドル。
その首の動きに合わせて、彼の三つ編みがふるふると動く。
結和がなんとはなしにその動きに反応して、手を軽く握って弄ぶ。
「おいてめえ! 俺様の自慢の三つ編みをぽんぽんするんじゃねえ!」
「ああっ、ごめんなさいー。かわいかったのでつい無意識にー」
「……猫かよ!」
と、ギャドルは慣れない突っ込みをする。
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