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 先程まで衿栖と未散が歌っていたステージには、赤いビキニのまま上がった美空が、華麗に歌を披露していた。
「うわ、美空ちゃん、歌が凄く上手ですね! さすがアイドル、一味違いますね!」
 咲夜が笑顔で勇刃を見やる。
「うん、一味違うね。ここの飲み物も結構うまいし、さすが本格スパ施設だけのことはあるな」
 ジャスミンティーを飲む勇刃が
「……暖かいココアがおいしいです。感謝します、マスター」
 ニッコリとアスターが勇刃を見る。
「もう! 健闘くん、アスターちゃん? 美空ちゃんが折角歌ってるんですよ?」
 口を尖らせる咲夜。
「わかってるって。心配しなくても緊急登板でも美空ならうまくやるさ」

 話はここで少し遡る。
「おお! あそこにステージが……!」
 勇刃達と少し休憩しようとプールサイドの出店前にやって来た四人。
 美空は現在は空席となったステージに、アイドルとして胸の高鳴りを抑えられずにいた。
「……お疲れ。みんな、随分楽しめたみたいだな。何か飲みたいものがある?」
 勇刃の声も、美空には届いていないぽい。
「オッケー、咲夜は紅茶で、俺はジャスミンティー。美空は……? 美空? おーい」
「(ど、どうしよう…胸の高鳴りが……ううう……やはり我慢できない!)」
 椅子に下ろした腰を直ぐに浮かせる美空。
「ごめん、ちょっと歌ってくるね!」
「え? 歌うって、あそこのステージは……」
「問題ない。いや、寧ろ歓迎するよ」
 そこには統とダリルの姿があり、二人の承諾を受けた美空はステージへと駈け出していく。
「しょうがないなぁ。アスター、君はどうする?」
 勇刃が聞くが、アスターは沈黙している。
「……しょうがない、いつものあれでいいか?」
 二人の傍では、ダリルから渡された美空の出演やギャランティーの承諾書を咲夜がサインするのであった。

 一旦はアイドル生活の辛さから逃げ出したことのある美空だが、流石そこは現役であり、番組プロデューサーの統とダリルから頼まれたステージを難なく盛り上げていた。
「はいはいはいー!」
 アップテンポの曲で客を盛り上げていく美空。
「今日はツキ過ぎてるぜ。まさか、あの銀河美空まで見れるとはな!」
「オゥフ! シン総統閣下、拙者も同意でゴザル! アイドル日和とはこの事でゴザルな!!」
「ああ……全くだジョニー……ん?」
 シンは隣で肉布団をバウンドさせるジョニーを見て、ふと、妙な事に気付く。
「(コイツ……ゆる族なのか?)」
 ジョニーの素肌の背中に見える小さなジッパー。だが、アイドルの追っかけをする仲間内では『プライヴェートに干渉しない(すると悲しくなるから)』という不文律があったため、シンは再び美空のステージに集中するのであった。

「みんなー。ありがとうねー!!」
「「「うおおおぉぉぉーーッ!!!」」」
 ステージから至福の笑顔で降りた美空に、勇刃がマンゴージュースを手渡す。
「お疲れ」
「ありがとう! ね、どうだった?」
「美空ちゃん! 最高だったよ!」
 咲夜が言う。
「あ、本当? よかったー! アイドル辞めるって言ったから、てっきり腕が下がってるかと思ってたんだ。アスターちゃんは?」
「はい。美空さんの情宣効果を、この目と耳でしかと確認出来ました」
「えへへっ。ただ、歌っただけだよー」
「汗かいたろう? また、温泉に行こうか?」
「私、健闘くんに賛成ー!」
 咲夜が手を挙げる横で、美空は満足そうに頷いてマンゴージュースを飲む。