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ザ・修行

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ザ・修行

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第11章 誘惑で修行だわっっっっっっっっ!!

「修行中です。美味しいダージリンのいれかた、はい、ステップ1」
 本郷翔(ほんごう・かける)は、上半身裸のふんどし姿で、滝に打たれて修行をしていた。
 実は本郷は女性なのだったが、児童体型で男顔なため、なかなか気づかれないようである。
 加えて、激しい滝壷の水の流れが、本郷の身体を荒々しく包みこんで、隆起をわからなくさせていた。
 ざざざざざざざざ
「はい、お湯の用意。はい、茶こしの用意」
 真剣そのものともいえる修行のスタイルを貫く本郷だったが、呟く言葉はなぜか、「美味しいダージリンのいれかた」をひたすら繰り返すというものだった。
 おそらくそれが、最も平静さを貫けるスタイルなのであろう。
 滝に打たれながら、あくまでも平常心を保ち続けなければならない修行なのである。
「みんな、修行に専念しているな。ここなら、自分も集中しやすいというものだ」
 大洞剛太郎(おおほら・ごうたろう)は、本郷が修行している滝壺の近くで、銃を構えて、熱心に射撃訓練による修行に専念していた。
 400メートル以上の標的をひたすら撃ちぬくというのが、剛太郎が自分に課した試練であり、修行であった。
 ズキューン!!
 89式小銃が火を吹いた。
 パリン!!
 標的の、皿が割れる。
 カチッ
 剛太郎は、再び弾丸を装填した。
 ズキューン!!
「よし、超覇王化の練習をしようかねぇ」
 永井託(ながい・たく)もまた、滝壺の側で修行を開始しようとしていた。
 彼が練習したかった、超覇王化とは!?
 「やめろぉ」から発動するという以外、詳細は闇に包まれていた。
 いわゆるイヤボーンに発動条件が似ているが、重要なことは、自分が何かされたときは、他の人々に危害が加えられたときに「やめろぉ」が出ると発動するのであった。
「いきなり、やめろぉ、と呟いても超覇王にはなれないですしねぇ。いい題材があるといいのですが」
 そういいながら、永井はとりあえず走り込みをして、木の枝から垂れさがっている藁人形にパンチやキックを決めたりしていた。
 だが、このような体力トレーニングや、一般的な格闘技の練習をしにきたわけではないのだ。
 越えるべき壁があるから、永井はそこにいたのである。
 そこに。

「はい、ご主人様。いつもニコニコあなたの隣に這い寄るご奉仕、パンツァーの巫女です!!」
 いきなり、夜薙綾香(やなぎ・あやか)が現れると、ちょっと休憩してタオルで上半身の汗を拭いていた永井の前に、ひざまづいたのである!!
「な、何ですかぁ。僕はいま、修行中でしてぇ」
 永井は、どきどきして答えた。
 どうしても、視線が綾香の胸にいってしまうのを必死でこらえる。
「ですから、修行中の方々に、ひざまづいてお仕えいたします!!」
 そういって、綾香は永井の手からタオルをとると、永井の汗を拭いてあげようとした。
「わ、わー、いいですよ、いいですよったらぁ。それに、別にひざまづいてないじゃないですか」
 永井は慌てて、綾香から逃げるようにした。
「お待ち下さい。ああ、ご主人様の汗の匂い、たまらないです!!」
 綾香は鼻を鳴らしてうっとりとした顔になりながら、永井を追った。
 にゅっと手を伸ばして、永井の露な上半身に触れる。
「や、やめろぉ」
 永井は、叫んだ。
 叫んでから、気づく。
 いまので、超覇王化が発動するのでは?
 いや。
 するわけないだろ!!
「ちょ、ちょっと、本当にいいですからぁ。他の人をやってあげて下さいよ。ほら、あの人とか」
 綾香の手からタオルを奪い取ると、永井は、ひたすら射撃をしている剛太郎を指さした。
「あの方、ですか? まあ、素敵な方ですね」
 綾香は、目をキラキラさせながら、剛太郎に駆け寄っていった。
「うん? な、なんだ」
 剛太郎は、綾香の登場に愕然とした。
 女人禁制だというから、安心していたのに。
 周囲に全く女性がいない分、綾香の色香は衝撃的だった。
「お仕えいたします!!」
 綾香は、銃を構える剛太郎の前に、ひざまづいた。
「わっ、危ないぞ。撃ってしまうかもしれん」
 剛太郎は、銃を指していった。
「構いません。是非、私を撃って下さいまし」
 綾香は、うっとりしたような口調でいった。
「そ、そういう意味じゃないって」
 剛太郎は、なぜか慌てた。
 落ち着け、落ち着け。
 剛太郎は、内心で自分にいってきかせた。
 誘惑に耐えるのも修行だ。
 気にしなければいいのだ!!
 剛太郎は、綾香を無視して、射撃の修行を続けようとした。
 すると。
「お耳掃除をいたしますね」
 綾香は、照準を覗く剛太郎の耳に耳かきをさしこんで、囁くようにいってきた。
「わ、わあああああ!!」
 剛太郎は、悲鳴をあげながらも、必死で耐えて、修行を続けようとした。
 そこに。
「ああ。何てたくましい方でしょう」
 天津のどか(あまつ・のどか)も現れて、剛太郎に迫ってきた。
 綾香と、のどか。
 ダブルの色香に挟まれて、剛太郎は焦った。
 修行中でなければ、ある意味幸せな状況なのだが。

「はー、めーん! めーん! そうめーん!」
 瀬山裕輝(せやま・ひろき)は、ひたすら素振りをして、修行をしていた。
 そこに。
「う、うわあ、もっとマシなものがなかったとはいえ、何で私がこんな格好してるのー?」
 スクール水着を着た鬼久保偲(おにくぼ・しのぶ)は、顔を赤らめ、露な肌を両手で隠すようにして、瀬山の前に現れた。
 さあ、瀬山はどんな反応をしめすか?
 偲は内心期待していた。
 だが。
「あん? おい、大丈夫か? 主に頭、つーか頭オンリーわいてんのとちゃう? 早よ病院行った方がええで?」
 瀬山は、ぽかんとして、そういったのである。
 その言葉を聞いて、偲は、思わずムッとした。
「いくら何でも、そういう反応の仕方はないでしょっ」
 肌を隠していた両手をほどいて、偲は瀬山に詰め寄る。
 スクール水着の生地が密着しそうなほどの距離にまでいったが、それでも瀬山は、眉をひそめている。
「ああ、ほら! 水着着て修行するんやったら、滝壷の下の流れに入ってなあかん!! せやないと、誘惑して妨害してる思われるで!!」
 瀬山は、たしなめた。
「そうですよ。普通は、誘惑と感じるですよね。ちょっと興奮したりして」
 偲は、ブツブツいいながら、瀬山にいわれたとおり、滝壺の下の川の流れの中に、身を沈めた。

「やや。あれは、スクール水着!! う、うわー」
 綾香とのどかのダブルご奉仕攻撃に悩まされていた剛太郎は、ついにとどめをさされたと感じた。
 銃を構えた、その先の川の流れの中に、スクール水着の偲がいたのである。
「あら? ああいうのがいいんですね」
 のどかは、剛太郎が股間をおさえたのをみて、邪悪な笑みを浮かべた。
「それでは、私も」
 そういって、のどかは、修行用の白装束を着たまま、ざぶんと流れに飛び込んだ。
 剛太郎は、食える。
 そう、のどかは確信していた。
「ああ、水に濡れて、服が透け透けになっちゃいましたー」
 嘆いて、のどかは岸にあがってきた。
「わ、わああ」
 剛太郎は、ますます鼻息が荒くなった。
 のどかの白装束が透けて、下の下着が……、いや、下着がない!!
 下の肌が、透けてみえていたのである!!
「気づきましたね。この下には、何もつけてないんです。ふふ」
 のどかは、妖艶な笑みを浮かべた。
 すーっと、剛太郎の脇に寄って、濡れた身体を押しつける。
「ごめんなさい。私、少し身体を冷やし過ぎちゃったみたいです。あなたの体温で私をあたためてくれませんか?」
 ほとんど透けてみえてしまっている胸を剛太郎に押しつけて、のどかは甘く囁いた。
 ぴー
 剛太郎の顔が真っ赤になり、額から湯気が立ち止まった。
「あ、ああ、ダメで、あります、修行、なのに……」
 うめいて、剛太郎は倒れた。
「どうしたんですか? 添い寝してもいいですか?」
 いいながら、のどかはその上に覆い被さり、手を動かした。
「くっ、やられましたね。ご奉仕で先んじられてしまったようです」
 綾香は、下唇を噛みながら、のどかを睨んでいた。
「ほのぼのとした光景ですね」
 剛太郎に迫るのどか、そして、スクール水着を着て川で泳いでいる偲の姿を滝に打たれながらみつめていた、本郷は微笑んだ。
 本郷には、修行に失敗して倒れてしまった剛太郎が、何だか幸せそうにもみえたのである。

「よーし、俺も修行でもするかぁ!! 座るぜオラァ!!」
 ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)は、全裸で手足に鉄球をつけ、胡座をかいて瞑想を始めた。
「だって、女もいないんだったら全裸でいいよな!!」
 ラルクが座っているその場所は、ちょうど、温泉の源泉がわきでている近くだった。
 もうもうと湯煙がたちのぼり、温度が、かなり高い場所である。
 全身汗だくになりながら、それでも、ラルクは目を閉じ、精神を統一して、ひたすら座り続けた。
 自分の限界に挑戦したい。
 それが、ラルクの想いであった。
 そして。
 ラルクの腰からは、生命エネルギーのほとばしりと強い決意を示す、鉄の柱がたちのぼっていたのである。
「おお、ずいぶん元気じゃないか、ラルク!!」
 秘伝『闘神の書』(ひでん・とうじんのしょ)は、そんなラルクの姿をみて、感心したようにいった。
 しかし、本気で修行しようというラルクの邪魔をする気にはなれない闘神であった。
「よし、むしろここは、おいしそうな筋肉つけちゃってる連中をハンティングして過ごそうか!!」
 闘神は、豪快な笑みを浮かべて、ずかずかと走り出した。
 オイッチニ、オイッチニ。
 兄貴はどこだ?
「おっ、いたぞ、おぬしは、立派な漢か?」
 闘神は、滝に打たれて修行している本郷翔(ほんごう・かける)に近寄っていった。
 ざぶざぶ
 流れに分け入り、水をかきわけて進む闘神。
 本郷は、ぱちっと目を開けていった。
「美味しいダージリン、いれてみませんか?」
「はぁ?」
 闘神はぽかんとしたが、無造作に手を伸ばして、本郷の肩をつかんだ。
「あっ、女じゃないか。ちっ」
 闘神は、舌打ちした。
「何で、残念そうにするんですか?」
「おぬしには、一生わからんさ。さらばだ」
 闘神は、勝ち誇ったような口調でそういうと、本郷に背を向けて、去っていった。
「さあ。ひたすら集中です!!」
 そして、本郷はまた、いつ果てるともない修行にふけっていったのである。

「おっ、いい男だ!!」
 次に、闘神は、天津のどか(あまつ・のどか)に全身を貪られてぐったりしている大洞剛太郎(おおほら・ごうたろう)に近づいていった。
「うん? いかん、いかん。女の毒素を注入されているな。我が癒してやろう」
 闘神は、剛太郎の上にしゃがみこむと、衣服を脱がしにかかった。
「マッチョメンの兄ちゃん、やめーな。それじゃ、性犯罪になるんとちゃうか?」
 瀬山裕輝(せやま・ひろき)が、闘神を止めにかかった。
「うん? おお、おぬしも、なかなかいいタマじゃないか」
 闘神は、瀬山も気に入った。
「ええ? 何いうとるんや。オレのどこが」
 抗議する瀬山の口を、闘神の掌が塞いだ。
「う、ううん」
 瀬山は、身悶えた。
「この際だ。2人まとめて相手してやるぜ!!」
 闘神は、怪しく腰を振っていった。
「お、おい、やめろ!!」
 闘神の行おうとしていることをみて、驚いた永井託(ながい・たく)が、本気で止めにかかった。
「うん? ちょっと待て。おぬしもなかなかいいが、相手をするのは後だ、後!!」
 闘神は永井を完全に無視して、2人のうら若き男を貪ろうとしていた。
「はははははは。我のモノだー!!!」
 闘神は、洪笑をあげながら、2人にのしかかろうとした。
「やめろぉ!!」
 永井は、叫んでいた。
 そのとき。
 ぴきいいいいいいい
 全身の筋肉が膨張し、張りつめるような力がわきあがってきた。
「こ、これは!?」
 きたか、超覇王化が!!
「うん!! す、すげえ!! こりゃ、掘れる、じゃない、惚れるしかないぜ!!」
 変貌した永井の姿をみて、闘神は感嘆の叫びをあげた。
「さあ、そこをどけー!!」
 永井のパンチが、闘神を軽く吹っ飛ばした。
「う、うわー!! 素晴らしい!! イッちゃうぜー!!」
 強い男の刺激を前に、闘神は鼻血を吹いて身悶え、倒れた。
「ああ、ありがと。助かったで」
 瀬山は、礼をいった。
「別に、君のためにやったわけじゃないよ。たまたまあれが邪魔だっただけでね」
 永井は、ツンデレな口調でいった。
(あ、あれ? やっぱりキャラが変わっちゃった。超覇王化すると、いつもこうだ)
 永井は、内心困ったが、それでも口調は変わらない。
「さーて、軟弱な修行者たちの相手するのも飽きたなー」
 ツンデレなことを言い続けながら、永井は瀬山に背を向けて、去っていった。
(あー。いつ戻るんだろ?)
 永井は、超覇王化の副作用の激しさに、ため息をつくのだった。

「はっはっは!! 修行だといってるのに、余計な雑念入れる奴はみんな右往左往して、最後は自滅するのさ!! ひたすら修行!! ひたすら集中!! オレは、やってやるぜ!!!」
 ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)は、迷える修行者たちの姿をありありとみながら、鼻を鳴らし、自信はひたすら瞑想の域に入っていったのである。
(兄貴ー!! シャベルで砂場の掘りっこしようぜー!!)←受け取ったメッセージ
(シャベルでお前の頭かちわってやろうか? うせろ!!)←ラルクの返事
 兄貴の姿をした悪霊に誘惑されたラルクだが、見事うちかってみせた。
 ラルクは、どこまでも瞑想を続けていったとのことである。