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ザ・修行

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第4章 温泉で修行だぜっっっっっっっっ!!

「さあ、この桃源郷で修行しよう!!」
 リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)は勢いよく叫ぶと、桃源郷と呼ばれる一連の泉のひとつの中にあって、水面からいくつも伸びている、長い竹の上にぴょんと飛び乗った。
 その竹は、この泉で修行する者たちのために立ててあるものであった。
「はああ、超感覚発動だよ!!」
 にきにきにき
 リアトリスの頭からは大きな白い犬耳が、また、お尻からは1メートルもある白い犬の尻尾が生えてきた。
「そーれ、ほ、ほ、ほ」
 リアトリスは、竹馬の上で、器用に片足だけでバランスをとりながらフラメンコを踊り始めた。
「おお、見事ではないですか。この桃源郷でこのような修行をするなどとは、なかなかオツですね」
 ぱちぱちぱち
 パルマローザ・ローレンス(ぱるまろーざ・ろーれんす)は、感動して手を叩いていった。
 そのとき。
「お客さん、ここよ! 伝説の修行場、桃源郷!!」
 突然、泉のガイドが現れて、早口で解説を始めたのである!!
「お客さん物好きねー。大変危険なのでもう誰も使てないのよ、この修行場!!」
「そうですか。なるほど」
 パルマローザは、とりあえずうなずいている。
「だばだばだばだばだばだばだ、はー」
 リアトリスは、犬耳を揺らしながら、泉から伸びる竹のうえで、片足での危険なフラメンコを器用に踊り続けている。
 この泉に、落ちることなどはない。
 リアトリスは、そう確信していた。
 だが。
 ごごごごごごごご
 突然、地震が起きたのである!!
 しかも、結構大きい。
「うん? 震度3? いや、4ですか?」
 パルマローザは、さっと警戒して身を硬くさせた。
 そして。
「あ、あっ、あっ、あー!!」
 ちょうど難しいポーズをとっていたリアトリスは、竹の上でバランスを崩して、泉に落ちてしまったのである!!
 どぼーん
「あっ、お客さんなにするね! 泉に落ちたら大変よっ。あいやーっ、双龍溺泉(ダブルドラゴンニーチュアン)に落ちてしまたぁー!!」
 ガイドは、リアトリスの不幸を目のあたりにして、絶叫をあげ、両手で頭を抱えてしまった。
「双龍溺泉は1,500年前、双頭の龍が溺れたという悲劇的伝説あるのだよ!! 以来、そこで溺れた者みな、双子の姿になてしまう呪い的泉!! ほらみろ、双子になてしまたぁー」
 ガイドの絶叫が、青い空の深みにまでこだましていく。
「う、ううううう、油断してしまったぁ!! あ、あれ、き、君は!? あれあれー」
「う、ううううう、油断してしまったぁ!! あ、あれ、き、君は!? あれあれー」
 ガイドのいったとおりだった。
 落ちてしまった泉から出てきたリアトリスは、なぜか双子になっていたのである!!
 双子は、お互いの姿をみて、心底びっくりしたようだった。
「き、君が僕で、僕が君で!? で、でも違うよ、完全に違う個体だよね、君と僕って!! あれー」
「き、君が僕で、僕が君で!? で、でも違うよ、完全に違う個体だよね、君と僕って!! あれー」
 双子は、お互いシンクロして同じセリフをいいあった。
 まるで、鏡に映されて、同じ人物がふたつの姿にわかれてしまったようであった。
 あいやー!!
「や、ややこしい!! とりあえず、別々に名前をつけよう!! 僕は、リイア!!」
「それじゃ、僕は、リース!!」
 リアトリスがわかれてできた、リイアとリースは、互いの両の掌をパンパンと打ち合わせ、くるくるまわってまた打ち合わせた。
「二人、合わせて、リアトリスー!! きーみと、僕とは、リアトリスー!!」
 そのまま、二人は、肩を組んでともにステップを踏み、踊り始めたのである。
「おお、これはこれは。最初は驚きましたが、さすがリアトリス。双子にわかれてからも、見事に意気投合しましたね」
 パルマローザは、うんうんとうなずいている。
 あまり、リアトリスのことを心配しているようにはみえない。
「よし、修行を続けるぞ!!」
「よし、修行を続けるぞ!!」
 リイアとリースは、互いをみつめあい、うなずきあうと、一人がもう一人を肩車して、跳躍。
 泉から伸びている竹のうえに戻ると、肩車をしたまま、見事な踊りを踊り続けるのだった。
 リイアとリース。
 それぞれ、その頭から2つの犬耳が生えているので、犬耳は合計して4つに増えたことになる。
 竹のうえで二人が踊る姿は、実に見事というほかなかった。

「なるほど。泉に落ちたら、ああなってしまうのか。こいつは、なかなかハードな修行だな」
 佐野和輝(さの・かずき)は、リアトリスの悲劇を目のあたりにして、戦慄を禁じえなかった。
「悪い予感がするわ。和輝の側にいて、守らないとね」
 スノー・クライム(すのー・くらいむ)が、和輝を気遣って、いった。
「スノー、では、纏うぞ」
 和輝が、スノーをみつめていった。
「うん。使って」
 スノーは、和輝の首に両手をまとわりつかせると、その胸に顔を埋めるようにした。
 しゅううううう
 空気が渦巻く音とともに、スノーは魔鎧と化して、和輝に装着されていく。
 甘く、切ない瞬間だった。
「わー、がんばれー」
 上空では、箒に乗ったアニス・パラス(あにす・ぱらす)が、精一杯のエールを送っている。
 そこに。
「ちょっと待って下さーい!!」
 パルマローザ・ローレンス(ぱるまろーざ・ろーれんす)が、すかさず和輝の前に駆け寄ってきた。
「うん? ど、どうした?」
 和輝は、異様な迫力を感じて、後ずさりながらいった。
「思いきって、いいます!!」
 パルマローザは、深く息を吸い込んだ。
 ここが勝負どころだ。
 がんばれ、パルマローザ!!
「がんばれー!!」
 アニスの声援が、パルマローザにも投げられているように思われた。
「な、何だ。いってみろよ」
 和輝は、なぜかドキドキしていた。
「私の心にはいつもあなたがいる。あなたに夢中です。私だけの和輝になって下さい。お願いしまーす!!」
 そうひと息にいって、パルマローザは一礼し、花束を和輝に捧げようとした。
「う、うわー」
 パルマローザが突進するような勢いできたので、和輝は思わず身をかわした。
「れ? あ、ああああー」
 勢いをすかされたパルマローザは、花束を手にしたまま足を滑らせて、そのまま、泉に落ちてしまった!!
 ざぶーん
「あいやー!! 男溺泉(ナンニーチュアン)に落ちてしまたぁー!!」
 ガイドは、再び頭を抱えることになった。 
「男溺泉は1,500年前、絶世の美男子が溺れたという悲劇的伝説あるのだよ!! 以来、そこで溺れた者みな、美男子の姿になてしまう呪い的泉!! ほらみろ、美男子になてしまたぁー」
 ガイドのいうとおりだった。
 泉から這い上がってきたパルマローザは、見事な美男子の姿に変わっていたのだ!!
「う、うわー、また、泉に落ちてしまう奴が出てくるとは!!」
 和輝は、驚きのあまり、何といったらいいかわからない。
「くっ、私はたとえ、男になろうとも、この気持ちは変わりません!! 和輝、私の、和輝になっては下さらないのですか!!」
 パルマローザは、ややいかつくなった体型をうならせて、和輝に組みつこうとした。
 そのとき。
「はーい、そこまでー!!」
「はーい、そこまでー!!」
 二重の叫びがあがったかと思うと、双龍溺泉で修行していたリアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)(いまは双子のリイアとリースの姿だったが)が、ヒプノシスの術をパルマノーザに放ったのである。
 しかも、双子が同時に放ったので、ダブルヒプノシスであった。
「あ、あああ、ふあああ」
 パルマローザは、襲いかかろうとした勢いはどこへやら、たちまちのうちに眠気を催し、あくびをかきながら、そのまま倒れ込んで、死んだように動かなくなった。
「すみませんでしたー!! それでは、退場ー!!」
「すみませんでしたー!! それでは、退場ー!!」
 リイアとリースは見事な連携をみせ、二人で息を合わせて担架を運んでくると、パルマローザを担架に乗せ、えっさえっさと隅に運んでいったのである。
「むにゃむにゃ。和輝ー!! 永遠の、私の和輝ー!!」
 寝言で、なおもパルマローザは叫んでいたとのことである。

「な、何だったんだ、いったい」
 和輝は、戦慄を禁じえなかった。
「前座は、終わりましたかぁ? それじゃ、そろそろ、和輝君との楽しい修行のお時間ですよぉ!!」
 レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)が、ニコニコ笑いながら和輝の前に進み出てきた。
「わーいですぅ!! 修行ですぅ!!」
 ルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)も、大はしゃぎしていた。
「そうだな。まあ、いろいろあったが!!」
 そういって、和輝は、レティシアとルーシェリアの、2人を同時に相手する構えに入った。
 もともと、和輝の修行というより、レティシアとルーシェリアの2人の修行につきあうということでやってきたのである。
「いきますよぉ」
「やっちゃうですぅ!!」
 レティシアとルーシェリアは、巧みな連携プレーで和輝に攻撃を仕掛けた。
 だが。
「まだまだ、甘いな」
 和輝はきわどい見切りで攻撃を避けると、修行ということで銃は使わず、蹴り技での攻撃をお見舞いしていった。
「きゃは、きゃはぁ」
「うふ、うふぅ」
 レティシアとルーシェリアの2人は、黄色い声をあげながら和輝の攻撃をかわしていく。
 何だか、楽しそうであった。
「おいおい、そっちにつき合ってるんだぞ。もっと本気でかかってこい」
 和輝がいったとき。
「それじゃ、鬼さんこちら!! ハードな修行スタートですぅ!!」
 レティシアとルーシェリアは、勇敢にも、泉のひとつから伸びている竹の上に飛び移っていったのである!!
 先ほど、パルマローザが落ちたのとは別の泉であった。
「マジか? 本当にそこでやるのか? やれやれ」
 和輝は、ため息をつきながらも、竹の上に移っていった。
 まさか、怖じ気づくわけにもいかない。
 泉に落ちたら、と思うと不安にはなるが、本気で修行したいなら、こういう緊張感はもってこいだ。
 和輝は、気を引き締めてことにあたろうとした。
 だが。
 もともと和輝は銃による戦闘が得意で、格闘戦は専門ではないうえに、2人を同時に相手していたし、さらに、竹の上に移ってから、2人の動きが急に変わったのである。
 先ほどの冗談じみた動きとはうってかわって、実戦なみに苛烈な攻撃を仕掛けてきた。
 和輝も、これには戸惑った。
「な、何だ! これは、修行につきあっている俺の方が辛くなるだろうが!!」
 和輝は、焦ってきた。
 そして。
「お、おいおい! この泉では、俺も修行してるんだぜ!! もうちょっと離れてくれないか!!」
 同じ泉の竹の上にいた夜月鴉(やづき・からす)も、泡をくったような口調で叫んでいた。
「あははははははは! 鴉さんもいるんだね!! わーい、お祭りですぅ!!」
 テンションがどんどん上がっていくルーシェリアが、威勢のいい攻撃を和輝に放った。
「むう!!」
 和輝は、避けきれないと判断して、その攻撃を受け止めた。
 かなりの力で勢いをたわめたはずだが、それでも和輝の身体は吹っ飛んでいた。
 吹っ飛んで、鴉にぶつかる。
「お、おわ! 何をする!!」
 別の竹の上にいた鴉もまた、和輝の身体に突き飛ばされて、宙を舞った。
 鴉は、和輝の身体の勢いを吸収して、別の泉にまで飛んでいってしまった。
「あ、あああああ!!」
 2人は、悲鳴をあげながら、それぞれ別々の泉に落ちていった。
「もがもがもが。く、苦しい。身体が縮んでいる!! これは!!」
 泉の底に沈みながら、和輝は、自分の身体に生じた異変のせいで、うまく水をかくことができない。
「あいやー!! 幼女溺泉(ロリニーチュアン)に落ちてしまたぁー!! 幼女溺泉は、1,500年前、可愛い幼女が溺れたという悲劇的伝説あるのだよ!! 以来、そこで溺れた者みな、幼女の姿になてしまう呪い的泉!! ほらみろ、幼女になてしまたぁー」
 ガイドの絶叫は、水底の和輝にまで届いていた。
「ぐ、ぐうううう、ぷはあああああ、あ、こ、これは、何でちゅかぁ、じゃない、何だぁ!!」
 やっと水面に顔を出した和輝は、愕然としていた。
 自分の身体がすっかり縮んで、幼女と化していたのである。
 あまりの恥ずかしさに、顔が赤くなっていった。
 そして。
「ぶううううう。水が胃に入る!! 負けるもんか!! くそっ、うおー、ピー、ピヨピヨ、ピヨ!?」
 別の泉に落ちていった鴉は、自分の身体に異変が生じて、ついに人語を発することさえできなくなっていた。
「あいやー!! 雛溺泉(ピヨニーチュアン)に落ちてしまたぁー!! 雛溺泉は、1,500年前、可愛い鳥の雛が溺れたという悲劇的伝説あるのだよ!! 以来、そこで溺れた者みな、雛鳥の姿になてしまう呪い的泉!! ほらみろ、雛鳥になてしまたぁー!!」
 ガイドの叫びが、時空を超えて響きわたる。
「ぴ、ぴーよぴーよ!? ぴー!!」
 ちっちゃな翼をはためかせながら、鴉は水面に顔を出して、もがいた。
 幼女と、雛。
 2人の身体に起きた異変は、周囲の生徒に衝撃を与えた。

「くう!! ルーシェリアの攻撃をくらったとき、衝撃で魔鎧の装着が解除されてしまったわ!! まったく、なんて激しい攻撃かしら!!」
 スノー・クライム(すのー・くらいむ)は、幸いにも泉に落ちることは免れていたが、痛む肩をさすりながら起き上がると、さっそく、和輝の姿を探した。
「いたわ。あれは!?」
 スノーは、目を丸くした。
 小さな足をばたつかせて泉から這い上がってきた和輝は、どうみても幼女だった。
「和輝ー!! 大丈夫ーわー」
 上空から心配げに様子を見守っていたアニス・パラス(あにす・ぱらす)は、和輝の姿をよくみようと降下してきたのだが、スノーに目を覆われてしまった。
「何するのー?」
「みちゃダメよ。いい子だからあっちに行ってて。いい?」
 スノーは、アニスの耳元に囁くようにそういうと、目隠しをしたままアニスの背を押して、離れた場所へ追いやった。
「ど、どうちゅればいいのだ!?」
 和輝は、顔を真っ赤にして地面をどんどん踏み鳴らしていた。
 そのとき。
 和輝は、殺気を感じた。
「きゃー!! 和輝さん、可愛いですぅー!!」
 竹から降りたルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)が、目の色を変えて和輝に駆け寄ってきたのだ!!
「ちょ、ちょっと」
 スノーは突き飛ばされて、尻餅をついた。
 むぎゅう
 ルーシェリアは、和輝の身体をきつく抱きしめた。
「むああああ、や、やめろでちゅ、じゃない、やめろ!!」
 和輝は、必死で抗った。
「和輝さん、ずぶ濡れですね!! それじゃ、お着替えしましょうね!! 下着も全部とっちゃいますよぉ!!」
 ルーシェリアは、欲望の赴くまま、和輝のダブダブでずぶ濡れの衣をむしりとり、下着も奪って放り投げると、その身体をタオルで拭き始めた。
「う、うわあああ、やめろ、変なところを触るな!! あがあああ」
 和輝は悲鳴をあげた。
 ルーシェリアは、和輝の身体を隅々まで拭きあげると、こんなこともあろうかと(?)用意しておいた幼女用の下着を和輝に履かせ、可愛い幼稚園児の制服を着せてあげた。
「く、くううう、助かったが、だが!!」
 和輝は、不平不満がたっぷりありそうだった。
「はい、できましたー。それじゃ!!」
 ルーシェリアは和輝の完成された幼女の姿をみて満足げに微笑むと、頬ずりして、デジカメで写真を撮影してから、その小さな身体をスノーに預けて、今度は鴉に向かっていった。
「あ、ああ、和輝!! 大変だけど、でも、可愛いわね」
 スノーは、ミニチュア化した和輝の身体をしげしげと眺めて、頭を撫で、ニッコリとした。
「冗談じゃない!! 早く元の姿に戻してくれ!!」
「戻るのかしら?」
「な、何をいってるんだ!!」
 和輝は、バタバタと暴れた。

「ぴ、ぴよぴよぴよ、ぴーちくぱーちく!!」
 可愛い雛鳥の姿になった鴉は、翼を広げて、泉の縁を走りまわっていた。
 そこに、巨大なヒヨコの着ぐるみを着た、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)が現れた!!
「ピヨピヨ。鴉くん。そんな姿になってしまうだなんて!! でも、ご安心を。あたしも、お仲間ですぅ!! ピヨピヨ」
 レティシアはニッコリ微笑むと、着ぐるみから突き出ている巨大なクチバシで、鴉を小突こうとした。
「ぴよよ!?(やめろって、殺すつもりか)」
 悲鳴をあげて、鴉は逃げ惑った。
「ピヨピヨ。待って下さいですぅ。勝負ですぅ」
 レティシアは、ニコニコ笑いながら鴉を追いかけた。
 たとえ姿が変わっても、修行は続けなければならないのだ。
 それが、戦士の宿命(さだめ)であった。
 そこに。
「わー、鴉さんも、かーわいーー!!」
 ルーシェリアが現れて、鴉を抱きしめようとくしてくる。
「ピヨピヨリー!!(だから、やめろって、もうキレたぞ)」
 鴉は、覚悟を決めた。
 ばさあっ
 小さな翼を勢いよく広げて、精神を統一する。
(風だ。風に乗るんだ!!)
 雛鳥と化した鴉の身体が、宙に舞った。
「ピヨ!? もう大人になったですぅ!?」
 驚くレティシアたちの眼前で、鴉は、滑空した。
 ぐいーん
 どごっ
 鴉の小さなクチバシが、ルーシェリアの鼻に突き刺さった!!
「きゃあ、痛いですぅ!!」
 ルーシェリアは、悲鳴をあげてうずくまった。
「ピヨピヨピヨ!!(みたか)」
 鴉は、得意になって、なおも宙を舞った。
「ピヨ!? 鴉くん、やったですぅ!! 修行の成果ですぅ!! これで、鴉くんは、立派な鳥になったですぅ!!」
 レティシアは、諸手をあげて喜んだ。
「ピヨピヨピヨ!!(そうだ、俺は立派な鳥だ!! うん? でも、これで本当にいいのか?)」
 鴉は、複雑な気持ちを味わいながらも、雛鳥らしからぬ見事な滑空を決め、大空へと舞い上がっていくのだった。

「はーい。疲れたみなさまの身体を回復させます!!」
 ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)は手拭いで額の汗を拭きながら、次々に運ばれてくる修行者たちのケアをするのに懸命だった。
 泉で修行している間に、ケガをしたり、熱中症になって倒れたりした人たち。
 彼らを癒すのが、ミスティにとっては修行だったのである!!
 だが。
「ごめんなさい。和輝さん、治せるかしら?」
 スノーが、幼女化した和輝を連れてきたときは、さすがのミスティも当惑した。
「え、えーと、これは、泉に落ちたんですか!? さすがに無理ですね。でも、時間が経てば治るんじゃないですか?」
 そういいながら、ミスティは和輝の身体をよくさすって、疲れを癒してあげようとした。
「あら? ちょっとだけちびってますね!! それじゃ、オムツをつけましょう!!」
 ミスティは、和輝の下着を脱がせて、オムツをつけようとした!!
「や、やめろぉ!! オムツなんかいいでちゅ!! っていうか、ちびってないでちゅ、じゃない、ちびってないよ!! おい、誤解を与えるようなことをいうなー」
 和輝は、必死で抵抗したということである。