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Perfect DIVA-悪神の軍団-(第3回/全3回)

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Perfect DIVA-悪神の軍団-(第3回/全3回)
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●北カナン〜国境付近

「……?」
 シルフィア・レーン(しるふぃあ・れーん)はぱちぱちとまばたきをした。妙に現実味がない。
 たしかに夜ベッドに入ったはずなのに、気がつけばもう昼で、ぼーっと外に突っ立っていた――そんな感じだ。
 1人だったら「ああ、夢か」と思ったかもしれない。
 しかし夢というにはあまりに周囲はリアルで、騒々しかった。
 大勢の人たちが倒れていた。
 頭をかかえてうめいている人もいれば、自分と同じようにぼんやりとして、周囲を見渡している者もいる。
 ほかにも、神官みたいな人や、剣や盾を持っている人がいる。
 地面に転がっているのは陶器だろうか? 人形だろうか? あちこちの地面で染みになっているのは、思ったように血なのだろうか?
「ここは…」
 どこ? そもそもどうしてワタシ、こんな所にいるの? たった1人で。
 パニックを起こしかけたとき。
「シルフィア」
 彼女を呼ぶ声がした。
 声のした方を振り向くと、アルクラントが立っている。
 ボロボロで、傷だらけで。でも彼女の知るいつもの笑顔で、手を広げて立っていた。
「アルくんっ!!」
 まっすぐ駆けて行き、腕のなかへ飛び込む。
「ああよかった」ほっと息をついた。「ワタシ、ベッドで神様にお願いしてたの。今度会ったらアルくんって分かりますように、って。なんだかすごく心細くなって…」
 彼女には記憶がないのか――それでいいとアルクラントは思った。
 ふとシルフィアのほおに、自分が作ったお守りが触れる。
「これ、効かなかったのね。アルくんボロボロだもの。やっぱりワタシが作ったのじゃだめね。今度一緒に――アルくん?」
「うん?」
「変なの。ボロボロなのに、笑ってるのね」
 不思議そうに口元をなぞるシルフィアの指を、アルクラントが捕まえた。
 そっと指先に、触れたかどうかも分からないキスをする。
「アルくん?」
「これがいいんだ。私には、これが一番ふさわしい」
 それははたしてシルフィアのことか、それともお守りのことを言っただけか。
「そう? じゃあ今度、袋だけでも作り直すわね」
「ああ。それは素敵だ。――ありがとう」
 しみじみとつぶやいたあと。
「アルくん…? きゃあっっ!」
 突然アルクラントは彼女のひざの裏に両腕を回して、高く抱き上げた。
 後ろへ倒れまいと、必死に彼の頭を抱き込む。
「おかえり、シルフィア」
 それはどういう意味かと問おうとして、やめた。
「おかえりなさい、アルくん」
 なんだかそれがふさわしい気がした。


 おかえり。
 おかえりなさい。
 みんな、みんな。

 おかえりなさい……。





 覚醒者たちは戦闘の途中で動きを止めた。
 なかにはパペットのように、ばたばたその場に倒れて意識不明に陥る者もいた。症状はそれぞれだった。
 それはのちに、遺跡が崩壊した時刻だったことが判明する。
 帰宅後、彼らは全員高熱を発し、原因不明の眠りに入った。2〜3日を経て目覚めてからは、皆一様に記憶があやふやで、事件当時のことを全く覚えていない者もいれば夢の出来事のように断片的に覚えている者もいたが、その供述も、つじつまの合わないものが多くあって、周囲の親しい者たちから事件のあらましや自身のしたことを聞かされても、なぜそんなことをしたのか分からないと首をかしげるばかりだった。