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秋のシャンバラ文化祭

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秋のシャンバラ文化祭

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    ★    ★    ★
 
「やほー、水穂さん、頑張ってる?」
 お客さんが少ないので、ネージュ・フロゥが高天原 水穂(たかまがはら・みずほ)のコミュニティの様子を見に来ました。
「ぽつぽつですわ」
 コミュニティ、こどもの家『こかげ』の展示説明をしていた高天原水穂が、ニッコリと穏やかな笑顔をネージュ・フロゥにむけました。
 獣人の村にある孤児院のコミュニティですが、文化祭に来た子供たちが集まってきていて、ちょっとした託児所のような状況になっています。そんな小さい子たちに囲まれて、高天原水穂が、優しく微笑んでいました。
 ヒーローショーが終わって移動途中のノーン・クリスタリアも、ちょっと休んでいます。他にも、ペットレースまでの出番まで暇な、小ババ様アルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)に付き添われて、遊んでいました。
「なんだ、小ババ様か。ここなら、メイちゃんたちがいると思ったのに」
 メイちゃんたちを捜している天城紗理華とアリアス・ジェイリルが、子供たちの中に小ババ様を見つけてから周囲をキョロキョロと見回しました。
「ここは、イナテミスの子供の家を参考にして、児童館と孤児院を併設した施設として獣人の村に立てられたこどもの家『こかげ』の紹介をしているんですよ」
 すかさず、高天原水穂が、天城紗理華たちに説明をしました。
「へえ、そんな物が出来ていたのね。パラミタのみんなは、何か作ると決めたら早いから」
「ええ。でも、まだまだ人手とか、いろいろ不足していて大変なのですわ」
 ちょっと感心する天城紗理華に、高天原水穂が言いました。子供たちの数に対して、まだまだ保育士の数が足りない状態のようです。
「ツァンダはちょっと遠いけれど、近くの人が手伝ってくれるといいですね」
「ええ」
 アリアス・ジェイリルの言葉に、高天原水穂がうなずきました。
「それで、メイちゃんたちを見なかった?」
 天城紗理華が、アルディミアク・ミトゥナに聞きました。
「さあ、ここにはいませんでしたけど」
 転んだ小ババ様を起こしてあげながら、アルディミアク・ミトゥナが答えました。
「もう、どこに行ったんだか。ごめんなさいね、また後で」
 そう言うと、天城紗理華たちはメイちゃんたちを捜しに行きました。
 
    ★    ★    ★
 
「ほら、そっち、バトルフィールドの設営を急ぐのじゃ」
 コミュニティ、イコプラのフロンティアの主催であるアレーティア・クレイス(あれーてぃあ・くれいす)が、ブースの設営状態をチェックしながら各部所を回っていました。
「こんな感じですかあ、親方あ」
 とんてんかんとリングを組み立てながら、柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)がアレーティア・クレイスに聞き返しました。
「誰が親方じゃ。ふむ、強度はまあまあじゃな」
 コーナーポストを軽く蹴っ飛ばして強度を確かめながら、ちょっと痛そうな顔を隠してアレーティア・クレイスが言いました。
「そっちはどうじゃ?」
「ワゴンに商品はならべ終わったぜ」
「よしよし」
 柊 真司(ひいらぎ・しんじ)の返事に、アレーティア・クレイスが満足そうにうなずきました。ワゴンの上には、イコプラの箱が山積みになっており、サンプルとして、完成品のゾディアックや羅刹王ブルースロート・フェイクゼノガイスト・アルクオンイーグリットアサルト・アークシュバルツ・F・ファントムイーグリット・ナハトコームラント・アーベントがならんでいます。
「じゃあ、俺は、何か飲み物でも買ってくるよ」
 そう言うと、コミュニティメンバーをねぎらうために、柊真司が飲み物を買い出しにでかけました。
「コーヒー、ポットで」
「ありがとうございます」
 カフェ・ディオニウスで、柊真司がシェリエ・ディオニウスにデリバリーを頼みます。
「うっぷ。悪酔いした……」
「大丈夫ですか? お客様」
 トレーネ・ディオニウスが、酔い覚ましのコーヒーをがぶ飲みしているシーニー・ポータートルに冷たいおしぼりを渡しています。
「酔っ払いかあ」
 客商売も大変だなあとそれを横目で見ながら、柊真司がつぶやきました。
「じゃあ、お運びしますねっ」
 パフューム・ディオニウスが、コーヒーの入った保温ポットと紙コップを入れたバスケットをかかえて柊真司の後についていきます。
 すでに、イコプラのコミュニティブースには、お客さんが来始めていました。
「じゃあ、交代で飲むんで、裏においといてもらえるかい」
「分かりましたー」
 柊真司に言われて、パフューム・ディオニウスがコーヒーセットをブースの裏において帰っていきます。
「さあ、いらっしゃいませ。ここでしか手に入らない、限定品のイコプラの即売会です」
 ワゴンの前に立つアニマ・ヴァイスハイト(あにま・う゛ぁいすはいと)が、一生懸命呼び込みをしています。なるべく目立つようにと、イクスシュラウドコスプレをしているので、ちょっとごつくてよろよろしています。
「ああ、ヴァラヌスの新型がもう出てる。これって、フルスクラッチでありますか!?」
 飾られているサンプルに激しく食いついてきたのは葛城吹雪です。
「はい。最新のイコンを、逸早くイコプラ化しています」
 説明員のアルマ・ライラック(あるま・らいらっく)が、淡々と説明しました。アニマ・ヴァイスハイトと同じく、とは言っても、こちらは機動要塞のウィスタリアコスプレをしています。本来は、機動要塞の機晶インターフェース用のデータスーツなのですが、完全にコスプレです。これでも、あれよりはましなので、アルマ・ライラックは進んでこの格好をしているのでした。
「この黒いのは、帝国製のフィーニクスですか?」
 ちょっと身を乗り出して、葛城吹雪がアルマ・ライラックに聞きました。
「何それ。いつの間に商品化してたのよ……」
 ついていけないと、陰でコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が頭をかかえました。
「この業界の商品化は早いのであります。コルセアも、ついてこないとダメでありますよ」
「いえ、ワタシは別についていきたくはないんだけれど……」
 同じ趣味の仲間にしないでくれと、コルセア・レキシントンが軽く手を振りました。
「フリングホルニはないでありますか?」
 新型をいろいろと物色しながら、葛城吹雪がアルマ・ライラックに訊ねました。
「大型飛行艇のモデルはちょっと……」
 それはすでにイコプラではないと、機動要塞のコスプレをしているアルマ・ライラックが言いました。鏡。
「オプションでよければ、ジオラマ用の展示台としてなら、各種大型飛空艇の甲板も用意してあります」
 アルマ・ライラックが、イコンを飾る台となるセットの箱を持ちだして言いました。完全モデルではないものの、フリングホルニのカタパルト部分だけのパーツがちゃんとあります。
「あるの!?」
 思わず、コルセア・レキシントンがツッコミます。
「とりあえず、この、新型プレミアム限定フルスクラッチ特別オンリーモデルのフィーニクスを買うであります。ください!」
「はい、毎度ありがとうございます。イコプラのバトル大会もじきに開始されますから、ぜひ参加してくださいね」
 葛城吹雪に言われて、アルマ・ライラックがそそくさとイコプラの箱を包装して手渡しました。
それをここで作るの?
「もちろんであります。そして、エントリーであります」
 コルセア・レキシントンに聞かれて、葛城吹雪が力強く答えました。
「イコプラじゃなくって、本物だったら新型のフロイライン・カサブランカのお披露目が出来たのにぃ……」
 ちょうど横で見ていたネージュ・フロゥが、凄く残念そうに言いました。イコン博覧会のような本物のイコンの展示会や模擬戦ではないので、個人所有のオリジナルモデルは、今回お披露目できません。最近リリースされた新型イコンを手に入れた人たちや、オリジナル機を完成させた人たちは、ちょっと残念です。