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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同忘年会!

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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同忘年会!

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 それは、美羽高原 瀬蓮(たかはら・せれん)に声を掛ける前のことだった。
「こんばんは、アイリスさん。瀬蓮ちゃん」
 そう二人に話しかけたのは、赤毛の、男性でありながら一輪の薔薇を思わせるような立ち姿。
「ああ、君は……」
 此方に気付いたアイリスや瀬蓮が何か言う前に、彼が口を開く。
エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)です。新年の幕開けをいつもと違う感じで迎えるのも悪くないかと思い……」
 と、一度背後を振り向いた。そこには彼のパートナーたちが、遠慮したのか二人、一歩下がって微笑んでいる。
「……というのもあるんだけど、パートナーがどうしてもって言うものだから」
「そうか。ようこそ、百合園女学院へ」
 三人は少し立ち話をしていたが、ふとエースが顔をほころばせた。
「色々あったけど、二人が無事でよかった」
 今年一年の出来事、アイリスと瀬蓮にとって大変な年だったなとエースは思う。
 そして手にしていた二つのミニブーケを差し出した。薔薇とトルコキキョウとガーベラを組み合わせたもの、そっくり同じものを二つ。
 これ、作って来たんだ、と二人にひとつずつ手渡す。
 そしてエースは今度はまた二つ、同じものを取り出した。
 何だろうと首を傾げる瀬蓮だったが、今度はそれに金具が付いているのに気付く。
「それから同じ花で作ったんだけど、はい瀬蓮ちゃん、付けてあげるね」
 エースはひとつをテーブルに置き、もうひとつを手に取ると、瀬蓮に一歩近づき彼女のふわふわの髪に持っていく。
 瀬蓮の手にあるミニブーケと同じ花で作られたそれが、瀬蓮の髪にぱちんと止められた。それは花の髪飾りだった。
「わぁ、ありがとう!」
 ぱあっと瀬蓮の顔が明るくなる。彼女は無邪気にエースを見上げると、
「花が好きなの?」
「うん、園芸もね」
 エースは穏やかに頷いて、テーブルに置いたもう一つのそれ──瀬蓮とお揃いのコサージュを持つ手を、隣に立つアイリスに伸ばす。
「新しい年は、もっと嬉しい事や楽しい事が貴女達に降り注ぎますように」
 と、言ってアイリスの服に付けようとしたのだが。
「……ああ、ありがとう」
 アイリスが手を差し出したので、エースは彼女に付けるのをやめて、その上に載せた。
「そうそう、あちらに差し入れを持って来たんだ。良かったらどうぞ」
 エースは、テーブルに並べられた菓子を手で示した。
 カラフルなマカロン。マドレーヌ、フィナンシェ。バウムクーヘン。女性が多いと思って焼き菓子中心だ。
「俺が焼いてきたんだ。良かったらバウムクーヘン、カットしようか? 大きめがいい?」
「じゃあ、瀬蓮も」
「うん」
 エースは慣れた手つきでバウムクーヘンを切り分けると、お菓子を少しずつ盛って、お茶を添えて出した。
「ハーブティも持ってきたのでどうぞ。瀬蓮ちゃんもお酒じゃなくて、これなら飲めるんじゃないかな」
 彼らは少しの時間──そのお菓子を食べる時間だけ席を共にした。
「今年はもう少し落ち着いて学園での生活を過ごせると良いのにね。……ね、良かったらアイリスさん、後で一緒に花火を見ない?」

 ……というわけで、年が明けた後、途中でアイリスはこたつから「……ごめん瀬蓮、呼ばれてるからちょっと行ってくるよ、また後でね」と席を外して。
 そして、エースが待つホールの窓際へと再び訪れていた。
「花火、綺麗だね」
「ああ」
 開け放たれた窓の外、闇を背景に空に華麗な花火が打ち上がっては咲き乱れている。
 満開の花、各都市をイメージしたもの、各学校をイメージしたもの──あの緑色はイルミンスールだろうか。百合の花。
 エースが一つの花火を示して声をあげる。
「あれ、空京大学じゃないかな?」
「そうかもしれないね。今年は来賓も来るからと、商工会議所の方が豪華にしてくれたそうだよ」
 二人はしばし、無言で花火を見上げていた。

 同じ頃、エースのパートナーたちもまた、少し離れた場所で花火を見上げていた。
 メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)は無心に花火を見つめているリリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)の表情にくすりと笑った。
「まったく、……楽しそうだな」
「気に入らなかった?」
 ドレス姿の裾を足でさばいて振り向いた彼女に、
「そんなことはないけどね」
 と言ったものの、花火よりも、また空を見上げる彼女の顔を見ている方が面白かった。
 でも、期待通りで良かったと思う。メシエやエースがここに来たのは、
「年越しは皆で過ごしたいわ。色々な事があった一年の締めくくりと、もっと色々な事が起こる一年の始まりだもの」
 と、彼女が言い出したからだった。彼女が満足してくれるのだから。
 それに、メシエもまんざらではない。年越しの瞬間は二人で見たいと言ってくれたのだから。
 メシエが花火の色に薄く染まるリリアの横顔を見ていると、彼女はふいに振り向いた。
「出会ってから色々と助けてくれてありがとう。新しい年ももっと色々な思い出を重ねていきたいわ」
「去年は君に色々とヒヤヒヤされっぱなしだっだけどね」
 微笑で答えるとリリアの手がメシエの腕に回された。
「無茶はしないように気を付けるけど、やっぱり護ってね」
「出来れば無茶は避けてもらいたいけれど、そういう部分も君のいい所だから、君の心のままに動いても良いだろう。何時でも側に居て護ってあげるよ」
 リリアの腕をそのままに、メシエはそっと彼女の身体を抱きしめる。
「……あ、また」
 リリアは幸せそうに体を寄せて、声をあげる。メシエもその視線を追うように空を見上げた。