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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同忘年会!

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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同忘年会!

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「やっぱり日本のお正月は、おこただよね」
「だねー」
 正方形のオーソドックスなこたつ布団に入って、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)高原 瀬蓮(たかはら・せれん)は顔を見合わせていた。
「……これがこたつか……」
 目を閉じてうっとりとするコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)に、美羽はいいでしょー、と何故だか嬉しそうに言う。
 このこたつは自分のでもないし、用意したのも白百合会だけれど、美羽は出身地である日本の文化というだけで何だか誇らしくなるような、自慢したいような気になるのだ。
「冬の風物詩、それがこたつだよ! セントラルヒーティングなんかもあるけど、頭が冷えてさっぱりするのもいいしね。こうやってこたつを囲んで、お茶飲んだりお話したり、トランプしたりできるコミュニケーションツールでもあるんだよ!
 あとみかんが欠かせない……」
 こたつの素晴らしさを熱心に語る美羽と、それを真面目に頷いて聞いているコハクに、アイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)はくすりと笑った。
 四人の前には、みかんの入った菓子皿と、その横にはコハクが持参した空京ミスドのドーナツ詰め合わせがあり、アイリスの手にはドーナツがある。
 かねてからのコハクの願いどおり、アイリスはこれをみんなと食べることができたのだ。
「……講釈もいいけど、そろそろ年越し蕎麦の時間だよ」
「ほんとだ」
 実はさっき美羽と瀬蓮、二人して百合園の有志に混じって打ってきたのだ。
「はい、こちらが皆さんの打たれたお蕎麦ですよ」
 百合園の生徒が持ってきてくれて、四人の前に一つずつ湯気の立つどんぶりを置いた。
「いっただきまーす。……あー、やっぱり自分で打つとおいしいねー」
 ちょっとへにょってしたり、面が細かったり太かったりするけど。自分で作ったお蕎麦は、美味しく感じる。友だちがいれば猶更。
「あ、これ切れちゃってるね……」
 瀬蓮が蕎麦を持ち上げて残念そうに呟くが、美羽はぱたぱた手を振った。
「あー、それは言わない気にしない」
 美味しいよ、とっても気持ちがこもってる、とコハクがフォローする。
 美羽はそうだよー、と言ってから、蕎麦をふーふーしながら、ずるずるとすすった。それを見て瀬蓮が意外そうに尋ねる。
「美羽ちゃんもお蕎麦をすするの?」
「やっぱりちょっとお行儀良くないかな? こうすると香りが立って美味しいんだって。この前テレビでやってたんだー」
 蕎麦はのどごしって言うんだって、と美羽は言った。
 瀬蓮は昔の日本の作法と、音を立てるのが恥ずかしいなぁという感覚をちょっとだけ葛藤させていたが、
「うん、瀬蓮もちょっとやってみようかな」
 と、ずるずるお蕎麦をすすった。照れくさそうに美羽を見た瀬蓮たちは、二人でえへへ、と笑いあう。
「……そういえば、話は変わるんだけど」
 コハクが口を開いた。
「そのうちアイリスを誘って、美羽と瀬蓮に日本を案内してもらうっていうのはどうかな?」
 急にどうしたの?、という顔で美羽がコハクを見るが、彼は少し照れたように頬をかいて。
「日本は美羽や瀬蓮の出身だし、こういう日本文化に興味が出てきたっていうか……」
 ──それは美羽が恋人であり、瀬蓮が友人だからでもあったけれど、もしかしたら彼が故郷を失ったから郷愁を感じているのかもしれない。
 アイリスはその控えめな彼の心中を推し量りつつも、首を振った。
「ごめん、僕は日本には行けないんだ」
「……そうなんだ」
 期待に満ちた目をしていた瀬蓮は、しゅんと肩を落とす。その頭をアイリスは撫でて微笑した。
「だから、セレンだけでも行っておいで。今日のおかげで、余計日本が恋しくなったんじゃないかな?」
「──うん、そうするよ。アイリスにはお土産いーっぱい買ってくるね!」
 瀬蓮は(多分わざとだろう)ぱっと顔を明るくしていっぱい、と手を広げながらアイリスに笑顔を返した。
「あはは、瀬蓮のいっぱいは本当に沢山みたいだね」
 それから四人は美味しいお蕎麦を食べ終えると、お茶を飲んだりおせんべいを食べたり、ボードゲームをしたりして遊んだ。
 そうしてやがて、年が明ける。
 その瞬間、四人は同時に口を開いた。
「今年もよろしく」とコハク。
「あけましておめでとう!」と美羽。
「おめでとう! 今年もよろしくお願いします」と、瀬蓮。
「あけましておめでとう」とアイリス。
 四人で挨拶をして頭を下げると、その一瞬後には、立ち上がった美羽の一層元気な声が響いた。
「さ、お雑煮お雑煮! そうそうコハク、お餅は急いで食べないでね。ね、そういえば瀬蓮ちゃんの家のお雑煮はどんなのだったー?」