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レターズ・オブ・バレンタイン

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レターズ・オブ・バレンタイン
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34)

空京の街にデートにやってきた、
フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)と、
恋人のフィリップ・ベレッタ(ふぃりっぷ・べれった)だが。

今日の2人は、いつもと違っていた。

会話が続かない。
先ほどから、2人の間に、沈黙が支配している。
フレデリカは、先ほどから、何回か、
フィリップに聞きたいことを言おうとしてはやめていた。
「ねえ、フィル君……」
「ねえ、フリッカ」
意を決して、フレデリカが口を開くと、フィリップも同時にフレデリカに何か言おうとした。
「……」
先に黙ったのはフィリップだった。
「ねえ、フィル君」
フレデリカが、憂いをはらんだ瞳で、恋人を見つめる。
「どうして、別の子から、チョコをもらったの?」
「それは……」
フレデリカは、フィリップが、
後輩の女の子から義理チョコを受け取るのを目撃したのだ。
自分が、大切に、想いをこめて、チョコレートを作ったのに。
それなのに。

「お願い、答えて、フィル君」
フレデリカはフィリップを見据える。
「だって、あれは義理チョコだし」
「義理チョコだから、受け取っていいの!?」
「そんなこと言ったって」
フィリップが、普段にはない、強い語気で言った。
「フリッカだって、他の男の子にチョコをあげてたじゃないか」
「それは……」
「あれ、義理チョコじゃないよね」
フィリップの悲しそうな表情に、フレデリカは言葉に詰まった。

違う。
あれは、違う。
だって、あれは、フィリップに完全な本命チョコをあげるために作った試作品……。
フレデリカからしたら、ただの失敗作でしかないのだから。
フレデリカは、そっと隠し持っていた本命チョコを握りしめた。

「違うわ、フィル君!」
「でも……」
フィリップが、一層、悲しそうに言った。
「僕には、チョコレートをくれないのに」
その言葉を聞いて、フレデリカはハッと顔を上げた。
「フィル君!」
フレデリカは、後ろ手に持っていた本命チョコを、フィリップに押し付けた。
「ごめんね、ごめんね、フィル君!」
「フリッカ、これって……?」
「これが、本命チョコなの。
フィル君にあげるためにずっと頑張って作ってて……。
でも、フィル君は、他の女の子にチョコもらってて……。
疑ったりしてごめんなさい。
私、フィル君に喜んでほしかっただけだったの」
「フリッカ……」
フィリップは、フレデリカの本命チョコを受け取り、そっと抱きしめた。
「僕こそ、ごめんね。
やきもち焼いてたみたいだ」
「やきもち?」
フレデリカがきょとんとしてフィリップを見つめる。
涙にぬれたフレデリカの目を、フィリップが優しく拭って言った。
「だって、僕より先に、他の男の子にチョコあげてたんだもの」
「え……」
「僕達、同じこと考えてたんだね」
そう言って、息をついたフィリップの安心した表情を見て、
フレデリカも、ようやく安心した。
そして、フィリップのそんな気持ちがうれしくなって、
だんだんと笑みがこぼれてくる。
「ふふっ」
「もう、何がおかしいの、フリッカ」
「だって」
「すごく心配したんだから」
フィリップが、わざと怒ったような表情で、フレデリカの顎を引き寄せる。
「きゃ……」
そのまま、フィリップは、フレデリカに口づけた。

フレデリカは、そっと、フィリップに身体を預け、
背に腕を回した。
そのまま、2人は抱き合い、
きらびやかな街の光の中、長く長くキスを交わしていた。