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第5章 シャンバラ宮殿のレストランその後

「ちょうどいい時間だね。今日のお勧めデザート何かな〜」
 カジュアルな格好に着替えた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、エレベーターのボタンをわくわくしながら押す。
「僕はもう注文するもの決めてあるんだ」
 パートナーのコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)も嬉しそうだった。
 ロイヤルガードの2人は今日、仕事でここ、シャンバラ宮殿に訪れていた。
 仕事を終えた後、お茶する場所として選んだのは、最近お気に入りの高級レストラン。
 宮殿の高層階にある、美味しい料理が食べられるお店だ。
 ディナーメニューはかなり値が張るのだが、ティータイムのケーキセットはさほど高くはない。
「そう言えば、彼方はあの後、テティスを誘って行ったのかな?」
「どうかな……ディナーだと入り辛かったかも」
 エレベーターが到着し、2人は乗り込んだ。
「あ、待って。あたしも乗る〜」
 エレベーターが閉まる直前、駆け込んできたのは代王の高根沢 理子(たかねざわ・りこ)だった。
 彼女も美羽達と同じような、カジュアルな格好をしている。
「リコも仕事終わったの?」
「うん。夜にはまた会議があるけどね、それまでは自由時間〜」
 ん〜〜〜と、理子は体を伸ばす。
「そっか、大変だね。頑張ってるね、リコ」
「美羽だって。勉強の他にロイヤルガードの仕事までこなしてるんだもん。良く頑張って偉い偉い!」
「うん、2人ともとっても頑張って偉いよ」
「そういうコハクだって偉い!」
 互いに、頑張りを認め合い、偉い偉い言い合った後。おかしくなって顔を合せて笑う。
「ね、よかったら一緒にお茶でもどう?」
「もちろん! そのつもりで追いかけてきたの」
「それじゃ、3人で行こ〜」
 エレベーターが目的の階に到着すると、美羽、理子、コハクの順で降りて、レストランへと向っていく。

 今日のお勧めスイーツはフルーツたっぷりのタルトだった。
 届いたタルトを見て、その豪華さに3人の胸が躍る。
 色とりどりのフルーツは、花畑より、シャンデリアより綺麗に見えた。
「この苺の色と艶見てよ! 最高級だよこれ……」
 理子は感動しながら、苺を一つ口に入れた。
「甘い〜。でも、シロップや砂糖の甘さとは違うね」
「ホント、苺の美味しさが口の中に広がるー」
 美羽もリコと同時に苺を食べて、嬉しそうな笑みを浮かべる。
 セットのお茶は自由に選べたので、美羽とコハクはレモンティーを。
 理子はオレンジティーを頼んでいた。
「うん、期待通りね。テティスが言ってた通り」
「ん? テティスが何か言ってたの?」
 理子の言葉に、美羽は手を止める。
 そして、そういえば、とコハクの顔を見た。
「彼方と来たのかな」
 初めてこの店に美羽とコハクが訪れた時、彼方も一緒だったのだ。
 テティスの誕生日を祝う店を探してる……などと言っていた彼だけれど。
 無事、彼女を喜ばせることが出来たのだろうか。
「ティータイムに、彼方と来たんだって。雰囲気が良くて、スイーツもすごく美味しかったって言ってたわ。でも何より、彼方に誘われたのが嬉しかったみたいだけど」
「そっか、ティータイムに来たんだ……うん、成功したみたいでよかった」
「楽しい時間を過ごせたみたいだね」
 美羽とコハクは頷き合って微笑んだ。
「あの二人ってどーみても両想いなのに、なんかはっきりしないのよね」
「少しずつ進展はしてるみたいだけどね。ちょっと気になるよね」
「僕達の方が、年下、なんだけどね」
 3人は笑い合って、テティスと彼方のエピソードを語り合った。
 テティスはよく彼方の手を見ているとか。
 サインを出しているとか。
 彼方はテティスの繊細な想いに全く気付いていないようだとか。
 だけれど彼も、テティスのことをとても大切に想っていることが、傍目ではよく分かるとか。
「ところで、美羽とコハクはどうなの?」
 理子の言葉に「えっ」と、美羽とコハクは顔を合わせる。
「それは、見ての通りだよ」
「うん、ご覧の通り」
 2人は幸せそうな笑みを浮かべた。
「うーん、こういう風に、笑っていられる時間、もっともっと増えるといいね」
 理子がそう言い、3人は頷き合って。
 それから追加注文をして、じっくりと楽しく美味しい時間を堪能するのだった。