リアクション
森林公園内にある、ポニー牧場にも沢山の子供達が訪れていた。 ○ ○ ○ 「しずかせんせーのパンツは、シロだったよ!」 自分の元に戻ってきた恋人――4歳児と化した綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)の言葉に、アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)は青くなった。 ちょっと目を離したすきに、悪戯っ子たちに交じって、悪戯をしていたようだ。 「さ、さゆみ、あなた一体何を……」 「あっ、ポニーがいるよ、アディ、いっしょにのりたーい!!」 「ちょ、ちょっとさゆみ、それはいいけれど……!」 幼児のさゆみは、大人の姿のままのアデリーヌを引っ張ってポニー牧場へと走った。 「すみません、一緒に乗ることはできますか?」 もう放すわけにはいかないと、アデリーヌはさゆみの肩を掴みつつ、スタッフに尋ねた。 「ええ、ただ少し大きな馬になりますが、大丈夫ですか?」 「はい、わたくしがついてますので」 さゆみをしっかり抱きしめて、アデリーヌはスタッフの指示通り、馬に乗った。 「わーわーわー、おうまさん、おうまさん、おうまさん、はしれはしれはしれ〜」 「はし、はし、はしらせたらダメですわ! 暴れないで、さゆみー」 馬の上でもはしゃぎ、跳ねだすさゆみを、アデリーヌは必死に押さえる。 「はしったほうがたのしいよー。わたしがこのおうまさんをきょーそーばにしてあげるの〜」 「このお馬さんは競走馬にはなれませんわ。こうして皆を楽しませてくれるお馬さんですから。ああ、お願いだからさゆみ、大人しくして」 「あはははは、ふふふふふ、たかい、たかーい。たのしいね、アディ〜」 「はい、そうですわね……」 楽しそうな笑い声をあげて、はしゃぐさゆみの側で、アデリーヌは終始ハラハラし通しだった。 「んしょっと。つぎは……あっちいってみよー!」 「あ、まってさゆみ!」 乗馬後、スタッフにお礼を言っていたアデリーヌは走り出したさゆみを慌てて追いかける。 彼女は『絶対的方向音痴』の異名を持つほどの方向音痴なのだ。 見失ってしまったら、そのまま遭難して自分のもとに戻ってこないかもしれない。 「はやくはやく、アディー! いっしょにあそぼ!」 だけれど、さゆみは遊具に突進することなく、アデリーヌを待っていた。 「アディといっしょにあそぶー。つぎはあすれちっくであそぼー!」 そしてまた腕を引っ張って、凄く楽しそうな輝く笑みを浮かべて、アデリーヌを振り回していくのだった。 幼い心でありながらもさゆみは解っていた。 数時間後には元の姿に戻るということを。 もう一度本当に、この姿の年齢からやり直して――少しでも、大好きなアデリーヌの側にいたい。いてあげたい。そんな思いを秘めながら、はしゃいでいた。 |
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