校長室
【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出
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■ 密やかなる契約 ■ ユーリ・ロッソ・ネーモ(ゆーり・ろっそねーも)は、パートナーの悪魔、ヴィルヘルム・フォーゲルクロウ(う゛ぃるへるむ・ふぉーげるくろう)に 「ちょっとついて来て欲しい」 と誘われ、場所も目的も知らされないままホイホイとついて行って、その廃屋を訪れた。 「なあウィリー、こんな所に何の用だよ? 何か面白いものでもあんの?」 廃墟の中は埃だらけで、長く誰も訪れていないようだが、足跡がある。ヴィルヘルムのものだ。 「ヴィルヘルムです。いいから」 ウィリーと呼ばれたことを正して、ユーリを促す。 連れられた最奥の一室には、床にびっしりと魔法陣が描かれていた。 「すげー。何? これウィリーが描いたの? すげー」 「ヴィルヘルムです」 ユーリは感嘆の声を上げ、首を傾げた。 「流石魔女。……えっ、もしかしておれ生贄にでもされるの」 「生け贄など。仮にも私は君のパートナーですよ」 嘯いて、ヴィルヘルムは『薔薇の契約書』をユーリに渡した。 「これを読んでください」 「何これ?」 訊ねつつも、特に疑問も抱かずに言われるまま、ユーリは意味も解らずそれを読み上げる。 ――それが、とある悪魔を召喚する為の術式であることなど、露程にも知らずに。 儀式が成立した瞬間、ユーリは背後から殴られ、気を失った。 ヴィルヘルムはすかさず、ユーリの帽子を剥ぎ取る。 この帽子は、ユーリにとって、『記憶』を象徴する大事なものだ。次に目覚めた時には、何も憶えてはいないだろう。 召喚の儀式が成立した今、最早ユーリのことなどどうでもよく、ヴィルヘルムはユーリを部屋の隅に蹴飛ばす。 魔法陣の中心に、ユーリの召喚によって、何者かが現れた。 囚人服の、初老の男は、酷い猫背で、腰が曲がっている。 自らに何事が起きたのかと怪訝な表情は一瞬、彼は肩を竦めてごきりと骨を鳴らした。 「やあ、ヴィルヘルム、君だったのか」 「全く、呆れましたよ。一体何をやっているのです」 人の命と身体を材料とする実験を数多行い、指名手配を受けていた悪魔が、契約者達によってついに捕らえられたと聞き、ヴィルヘルムは、強制召喚という方法で、彼を脱獄させたのだった。 ユーリと契約を果たした彼は、今や自分と同様の契約者である。 「全く、手間のかかる男だ。 正直あなたのことなどどうでもいいが、あなたの研究は興味深く思っていたのです。 中断されてしまうのはやや惜しい」 ヴィルヘルムの言葉に、彼も笑う。 「そうかい、そいつは嬉しいねぇ。 俺の実験を喜ぶのは、君くらいのものだ」 ああ、いや、と思い出して心の中で訂正する。 実験台となった者達にも、大抵は恨まれ、憎まれるものだが、これまでに一度、とても感謝されたことがあった。感謝されていた、と思う。百年程前の話だ。 執事として雇った機晶姫に移植した、殺人鬼の魂。 機晶姫は暴走したが、殺戮に走った殺人鬼は歓喜していた。 「そうだなぁ。また次は、大規模な実験でもしようかな。殺人鬼を量産するような、さ」 自分が契約者になったことを知っても、彼はその相手について全く興味を示さなかった。 再び、人の魂を弄ぶ、研究と称した遊びができるようになったこと。その事実さえあれば充分だった。 ヴィルヘルムもまた、ユーリについて口にすらしない。 「ええ。またいずれ新しい演目を見せて頂きたい」 ヴィルヘルムの言葉に薄ら笑いを返し、彼の姿は消える。 それを見送り、ヴィルヘルムもまた、酷薄な笑みを浮かべた。 「楽しみにしていますよ。――ヌィエ」 ヴィルヘルムは、部屋の隅に倒れているユーリを抱え上げる。 ヌィエ・ドゥ(ぬぃえ・どぅ)は、二度と自分達の前に姿を現さず、ユーリは悪魔と契約したことなど知る由もなく、その後頭部に契約の印が刻まれたことにも、一生気づくことはないだろう。 哀れなユーリは、こうして利用され、悪魔を野に解き放ったのだ――
▼担当マスター
九道雷
▼マスターコメント
お待たせいたしました。 皆様の思いの込められたアクションを、楽しく描写させていただきました。 楽しんでいただけましたら幸いです。 【かんたんイラスト】対応でアクションをかけてくださいました皆様は、イラストの設定をよろしくお願いします。 自分のリアクションにイベカが設定される幸せ(詐欺紛い)を堪能したく思います!