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黄金色の散歩道

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黄金色の散歩道
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平和の園

 エリュシオン領の盆地に、ハーフフェアリー達が暮らす村がある。
 四季折々の綺麗な花が咲き乱れている、美しい土地だ。
 この地は、エリュシオン帝国第七龍騎士団の団長、レスト・フレグアムの領土であり、第七龍騎士団の関係者により護られている。
 また、この地にはシャンバラとエリュシオンの悲しい戦いで命を落とした、ユリアナ・シャバノフの墓も存在している。
 個人で訪れることは出来ない場所だが、稀に行われるツアーで、他国の一般人もこの地に足を踏み入れることが出来る。
「うわ〜、コスモスがいっぱい! 綺麗だね、あたしも羽根があったら飛び回りたくなるよ〜。
 ……なくても魔法で飛び回るけどね♪」
 村へと下りながら、秋月 葵(あきづき・あおい)が歓喜の声をあげる。
 村の中央の湖の周りの木々は、鮮やかに赤や黄色に染まっていて、辺り一面には可愛らしい花が絨毯のように咲いている。
 蝶々じゃなくても、花の周りを飛び回りたい気分になる。
「来てよかった。写真やお土産沢山持って帰ろっと♪」
 ツアーに参加するつもりだった友人からチケットを貰っての参加だった。
 体調を崩して来れなくなった友人の為にも、色々回って写真やお土産、お土産話を沢山持ち帰ろうと思っていた。
「アレナちゃんや優子隊長や、エレンとも来たかったかな……。
 ホントに綺麗だから、心の休憩もできそうだしね」
 多分、大きな事件のない今なら、以前訪れた時よりも楽しめるだろうと思う。
「あっちのお花は摘んで帰ってもいいんですよ〜」
「どうぞー、どうぞー」
 歓迎に訪れたハーフフェアリーの少女達が、花びらを振りまきながら案内してくれる。
「ホント? ありがと〜。下見しておいて、帰る直前にもらって帰ろうかな♪」
 花畑へ行こうとした瞬間。
「ねえ、ちょっと」
「ん?」
 突如木陰から声をかけられて、葵は立ち止まった。
「これ、見なかった?」
 木陰にいたドレス姿の女性がポスターを開いた。
 ポスターに描かれていたのはろくりんピックのマスコットであるろくりんくんだ。
「これって……ああ、百合園の校門によくいる人のことだよね? 見てないよ」
「このツアーに参加して、ここに来るって言ってたのに。わざわざ着替えて待ってたのに……何よッ!」
 金髪をポニーテールにした女性だった。
(あ……)
 化粧で印象は変わっているが、見たことがある……そう、知っている女性だ。
(でも、気づいてない振りしておいた方がいいかな)
「……ありがとう、楽しんでいってね」
 素っ気なく葵にそう言うと、女性――クリス・シフェウナは怒りの形相でドカドカとレスト・フレグアムの館の方へと歩いて行った。
 どうやら写真の人物、キャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)と約束をしていたようだ。
「ん? あ、そういえば出航ぎりぎりに飛び乗ったお客さんがいたとか……でも、エリュシオンに着いた時、いなかったし……まさかね」
「おねーちゃん、こっちこっち」
「いっしょにあそぼ〜」
 ハーフフェアリーの少女たちが葵を呼んでいる。
「はーい! 今いくね。魔法少女に変身♪」
 葵は魔法少女に変身して、空飛ぶ魔法↑↑で浮かび上がり、ハーフフェアリーの少女達の下に向って。
 妖精たちに交じり空から景色を眺め、歌を歌い、飛びまって。楽しく過ごしていくのだった。

「もーっ、折角休み貰って待ってたのに、なんなのよ!」
 クリスは兄、レストの館に戻るとソファに身を投げ出した。
 携帯電話を手に取ってみるが、勿論ここは圏外で、通話もインターネットも出来ない。
「でもまあ、もしかしたらとっても大事な用事ができたのかもしれないし」
 ため息をつきながら、クリスは携帯電話で自分の写真を撮った。
 彼女は今、キャンディスが送ってくれた黄色のドレスを纏っていた。
 添えられていた手紙には『選手団の選考や取りまとめは慣れないと大変でしょうから、その労いヨ』とか意味の分からないことが書いてあったが、キャンディスが変なのはいつものことなので、気にせず貰って、喜んで着ていた。
 普段は男性の格好で、龍騎士団で働いている為、こういう服を買ったり、着たりする機会がなくて。
 とっても嬉しかったのに……。
「会ってお礼、言えなかったじゃない。仕方ないから、写真送ってあげるわ。てゆーか……」
 クリスはまた大きなため息をつく。
「私年頃なのに、贈り物をしてくれる人、アイツだけなんて……っ。張り切って着替えてる自分、ホント馬鹿……っ!」
 なんだかものすごく恥ずかしくなり、クリスは一人、ソファの上で悶えるのだった。