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リアクション
カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)はホイップ・ノーン(ほいっぷ・のーん)を公園に誘い、一緒に緑の多い道を歩いた。
ここはツァンダ商業組合が推薦した公園ではなく、普通の小さいけれど、緑がいっぱいの綺麗な公園だった。
小さい子達が遊ぶ声を聞きながら、カレンはチラッとホイップの方を見た。
「ホイップはこういう公園好き?」
「うん、好きだよ」
カレンの問いかけに、ホイップは笑顔で頷く。
その笑顔を見て、カレンはちょっと頬が熱くなった気がして、自分でも(あれ?)と思った。
しかしこれは、今になって初めて感じた感覚ではない。
これまでもホイップのことは気になっていた。
多分、これまでは自分の恋愛対象は異性だろうなあとカレンはなんとなく思っていた。
なんとなくというのは、今まで冒険や調査に出たりばっかりで、恋愛に興味がなかったからだ。
後は図書館で次の冒険のネタを探したりで、あちこち飛び回っていたものの、周りが段々と恋をしていく中でも、カレンは恋愛にほとんど縁がなかった。
でも、ホイップと関わるようになって、カレンはいつの間にかホイップをよく考えるようになっていた。
(同性だけれど、気になるんだよね)
謎を謎のままに放っておくのはカレンの主義に反する。
だからそれが何なのかを確かめるために、カレンはホイップをデートに誘ったのだ。
「ホイップがOKしてくれて、うれしかった」
思わずカレンの口から漏れた言葉に、ホイップはニコッとした。
「私も誘ってもらえてうれしかったよ!」
「え……」
ドキッとカレンの胸が鳴った。
この感覚はなんだろう、とまたカレンは気になった。
しかし、ホイップの方はカレンの態度の変化に気づかないのか、カレンの荷物のほうを見た。
「そういえばずっと大きなバッグ持ってるけれど、それは何?」
「これはお弁当だよ。ホイップと食べようと思って」
映画やショッピングなどのお金を使うことだと、お互いに気を使うことになるのでと思い、カレンは公園デートを選んだのだ。
「わあ、ありがとう!」
ホイップは素直に喜び、二人はベンチに座って、一緒にお弁当を食べた。
公園で見た花や木の話をしたりしながら、2人は楽しくお昼を食べた。
「ごちそうさま、ありがとう、カレンさん」
ホイップはお礼をいい、そして、カレンにチョコを差し出した。
「これ、良かったらもらってくれるとうれしいな」
「え? ボクに?」
自分を指差すカレンにホイップはこくこくと頷く。
箱の中には、シナモンパウダーとココアパウダーのかかった生チョコが入っていた。
中身はエル・ウィンド(える・うぃんど)と同じものだったが、包装がちょっと違っていた。
それが何を意味するのかは、ホイップのみぞ知る……だった。
「ありがとう、あのね、ホイップ」
「ん?」
「ボクがホイップの事を好き、って言う気持ちは、他のみんなを好き、って言う気持ちと、何か微妙に違うんだよねぇ」
投げかけられた言葉は遠回しの無意識な告白。
「え……」
ホイップの時が止まる。
ずっとカレンを親しい友人だとホイップは思っていた。
「……ホイップ?」
カレンが覗き込むと、ホイップは頬を赤くして、視線からちょっと逃げるように目を逸らした。
(あれ?)
カレンはホイップはきっと困った顔をするだろうと思っていた。
しかし、予想とは違う反応だった。
「あ、ありがとう」
カレンの言葉にホイップはそうお礼を言った。
ありがとうの意味が良く分からなかったが、ホイップはカレンを少し意識し始めたようだった。