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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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リアクション

「今日はお誘いを受けて頂き、ありがとうございます」
 風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)の言葉に、横山 ミツエ(よこやま・みつえ)はふむっと頷いた。
「いいわよ、別に。今日はナガンもイリーナも遊びに行っちゃって、どうせ一人でつまらなかったし」
 ミツエはどうやらちょっと拗ね気味らしい。
 王朝の最後の戦いのときに、気にかけていたように、ミツエにとってナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)イリーナ・セルベリア(いりーな・せるべりあ)は気になる相手のようだったが、2人とも今日は別のところに出かけていた。
「まあ、イリーナの彼氏とのデートに混ぜろとは言わないけれど、ナガンはパラ実の仲間と遊んでるらしいのよね。それなら、ちょっとくらい私を混ぜてくれたっていいじゃない」
 ぶつぶつと呟くミツエだったが、ふとあることに気づき、優斗に目を向けた。
「ところで婚約者のミアって子はいいの?」
「ええ、僕はミツエさんに僕の気晴らしに付き合っていただきたいと思って、お誘いしたんですよ」
 優斗は柔らかな笑顔を向け、ミツエをショッピングセンターに連れて行った。

 2人でアクセサリーや服を見て周り、優斗はミツエに試着を勧めてみたりした。
「きっと似合いますよ」
 そして、アクセサリー店で、ミツエが気にしていたものをこっそりと買い、それをプレゼントした。
「どうぞもらってください、ミツエさん」
「でも、もらう理由が……」
「もう買っちゃったものですから、どうぞ気にせずに」
 買ってしまった以上、ミツエがもらわなければごみになる。
 それに気づき、ミツエはそれを素直に受けることにした。
 そして、優斗はミツエをレストランに連れて行き、バレンタイン特別メニューを頼んだ。
 食事が出るのを待つ間、ミツエは外を見つめ、ポツリと呟いた。
「こんなふうに平和な街も、平和な時間もあるのね」
 1日だけでもミツエがリラックスできたかなと思い、優斗は喜んだ。
「僕はいつどんな時でもミツエさんの味方ですから…困った時には遠慮なく助けを求めて下さいね」
 優斗は想いを込めて、窓の外を見つめるミツエに優しく言ったのだった。


「素敵なお花がたくさんありますわね」
 ルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)はフラワーパークに咲く花を見つめ、うれしそうな笑顔を見せた。
 花よりもキレイなそのルミーナの笑顔に、風祭 隼人(かざまつり・はやと)は照れたが、同時にちょっとうれしくなった。
(なんとなくデートらしくなってるかも)
 隼人はそう感じていたからだ。
 クリスマスパーティでルミーナと接したとき、ルミーナは恋愛経験があまりなさそうかなと隼人は感じていた。
 だから、ルミーナに恋愛を見知ってもらおうと、まずは恋愛映画を一緒に見に行ったのだが、今の様子を察するに、少し効果があったらしい。
「見て下さい、風祭さん。これとっても綺麗ですよ」
 振り返ったルミーナに隼人は近づき、そのロングウェーブの美しい金髪に、黄玉のついた髪飾りが輝いているのに気づいた。
「それは……」
「あ、その。大事にバッグにしまって持っていたのですが、さっきの映画を見て、つけたほうが喜んでいただけるかなと思いまして」
 恥ずかしそうな笑みを浮かべるルミーナに、隼人も思わず笑みがこぼれる。
 2人はフラワーパークを出て、そのときに隼人はルミーナに一番似合いそうな花を買った。

 少し暗くなった道を一緒に歩きながら、隼人はルミーナを送っていった。
 そして、別れ際に、隼人はルミーナに買っておいた花を贈った。
「ありがとうございます」
 素直に喜んで受け取ってくれたルミーナに、隼人は安心しつつ、玉砕覚悟でストレートに告白をした。
「俺はルミーナさんが大好きです」
 隼人の告白にルミーナは笑みを見せた。
「そう言っていただけるとうれしいです」
「……え?」
 一瞬、それは告白にイエスと答えたのかと思った。
 だが、困惑したような隼人を見て、ルミーナは首を傾げている。
「今日はありがとうございました。楽しかったです」
 ルミーナはお礼を言って、帰っていった。
「……ああ…………」
 彼女と別れてしばらくして、隼人はやっと気づいた。
 隼人が思ったとおり、ルミーナは恋愛経験が年の程なく、鈍いのだ。
 だから「大好きです」と言われても告白と取らず「ありがとう」になったのだ。
「これはわりと難しいなあ……」
 隼人はちょっと困ったように呟くのだった。


「ちょっと、天華、天華」
 揺り動かされて、諸葛涼 天華(しょかつりょう・てんか)はうっすらと目を開けた。
 すると、そこには横山 ミツエ(よこやま・みつえ)の姿があった。
「あれ……」
 なぜか自分もミツエも百合園の制服を着ている。
 天華が寝ぼけた目を擦りながら、ミツエを見ると、ミツエがテーブルをさした。
「ほら、お茶が冷めるわよ」
 くるっと見回すと、そこは可愛らしい内装のカフェだった。
 天華とミツエの前には、ケーキセットが来ている。
 それでもまだ動きの鈍い天華を見て、ミツエが困った顔をした。
「なによ、どうしたの? 頼んだケーキが気に入らないなら変えてあげてもいいけど?」
「あ、いえ……」
 天華は体を動かし、一緒にケーキを食べ始めた。
 そして、いつの間にかバッグの中に入っていた箱に気づき、それをミツエに渡した。
「なあにこれ」
「バレンタインなので」
「ふうん、開けてもいい?」
 ミツエの言葉に天華はこくんと頷く。
 箱の中身は天華手作りのチョコみかんだった。
 キャンディーのように包まれたそれを見て、ミツエは目を丸くした。
「おもしろいものね」
 くすっとミツエが笑う。
(あ……笑ってくれた)
 その笑顔を心の中に刻んだとき……天華の目が覚めた。

「ん……」
 気づくと天華は自分の部屋のベッドの上にいた。
 何かいい夢を見た気がする。
 そう思いながら、天華はベッドから起き上がったのだった。