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嘆きの邂逅~闇組織編~(第2回/全6回)

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嘆きの邂逅~闇組織編~(第2回/全6回)

リアクション

 ――その少し前。
 分校のホールには、変わらず賑やかで楽しい時間が流れていた。
「美味し縲怩チ。でも、おねぇちゃんのは飲んじゃダメなの?」
 火桶の側で、野々が持ってきた甘いホットチョコレートを飲みながら、ニクスがだ尋ねた。
 短い時間だったけれど、外で思い切り遊んだハーフフェアリー達は、汗をかいて冷えてしまったため、皆火桶の側に集まっていた。
「こっちのはすごい苦いからダメですよ。もう少し大人になったら、一緒に飲みましょうね」
 自分用のホットチョコレートには砂糖は入れておらず、ブランデーを多少入れてある。ニクスにはまだちょっと早い。
「はーい。あたしの分は、お友達に少しあげてもいい?」
「いいですよ」
「んじゃ、飲みたい人ー!」
 野々の了承を得て、ニクスがハーフフェアリー達に呼びかけると、手が沢山あがった。
「そんなに沢山はないですよー。一口ずつになってしまいます」
 微笑みながら、野々は魔法瓶に入れてきたココアを子供達に注いであげるのだった。
「真希ちゃんのシチューも温かくてすげぇ美味いぞ縲怐v
 近くの席の分校生達が声をかけてくる。
「あ、皆の分も持ってくるね」
 真希が空になった鍋を持ち上げる。
「わーい」
「わたしもシチュー食べたい縲怐v
 真希の言葉に、子供たちが笑顔を見せた。
「ちょっと待っててねっ」
 真希はシチューを取りに、一旦喫茶店の方に戻ることにする。パラ実生達の食欲は想像以上にすさまじく、温かなシチューを取りにいったり、よそって回ったり、真希は甲斐甲斐しく働いていた。
「こちらもどうぞ縲怐v
 明日香は、リリアにバスケットを持たせて背を押した。
「食べてなの」
 リリアはバスケットにかぶせてあった布を広げて、皆に差し出した。
「リリアが作ったクッキーなの」
「ありがとー!」
 ニクスや子供達が次々に手を伸ばして、クッキーを手にとっていく。
「ぶたさん?」
「くまさん?」
「違うの。ぱんださんとねこさんなの」
 その動物型のクッキーは少しいびつだったけれど、子供達は楽しそうに動物の名を当てながら、クッキーを食べていくのだった。
「どうぞなの」
 リリアは子供達だけではなく、勇気を出してその保護者達にもクッキーを配っていく。
 沢山の子供と、保護者が訪れていたので、クッキーはすぐになくなってしまった。
「ありがとうございます。凄く美味しいですよ」
 野々や皆が喜んでくれる姿に、リリアは微笑みを浮かべて、明日香を見上げる。
 明日香はにっこり笑って、リリアの頭を撫でてあげるのだった。
「どうぞです」
「どうぞっ!」
 お揃いのピンクのマフラーを巻いたヴァーナーサリスは、ピンク色の包装紙に包み、赤いリボンでラッピングしたチョコレートをハーフフェアリー達とその保護者達、その場に集まっている者達に配っていく。
「かわいい縲怐v
「ありがとぉ」
 子供達はもったいないと感じたのか、すぐにリボンを解きはしなかった。
「2人ともお人形さんのようにかわええなあー。チョコと一緒にもって帰りたくなるぜ」
 分校生の男性陣も、大事そうにしまう者が多かった。
 後ほど1人で楽しむつもりの者、下宿先に帰ってから自慢しようという者、神棚に飾るつもりの者、それぞれの目的のために、男達は百合園生のチョコレートを大事に大事に保管するのだった。
「この1個はサリスちゃんにです」
 にこにこっと笑いながら、ヴァーナーは真っ白の箱に中に入れた、特別に作ったチョコレートをサリスに渡した。
「あ、ありがとっ」
 ちょっと驚きながら、サリスは箱を開けてみて、その中に書かれた『サリスちゃん、だいすき♪』という文字に、目を見開き、嬉しそうに顔を赤らめながら微笑んだ。
「これからもよろしくです」
 ヴァーナーはサリスをぎゅ縲怩チと抱きしめて、ぽっぺにちゅっとキスをした。
「ありがと、ありがと……あたし、うれしい……」
 ぎゅっと抱きしめ返して、サリスはヴァーナーに頬を寄せて甘えるのだった。

「どうぞ」
 ショコラッテが、隅の席でパーティを楽しんでいる元不良達にチョコレートを配っていく。
「ありがと」
「おう」
「樹兄さんからなの。形だけでも私が渡した方が喜ぶかもって」
 素直なショコラッテの言葉に、不良達は苦笑ともいえる笑みを浮かべる。
 袋に入ったチョコレートは……さすがに既製品だ。一緒にカードが添えてある。
 カードに書かれている文字は、もちろん愛の告白の言葉などではない。
 『困ったことがあったら遠慮せずに頼れよ!』
 という一文と、樹の携帯電話の番号が記されていた。
「それじゃ、パーティ楽しんでね」
「ちょっと待てよ」
 喫茶店で追加の料理を作っている樹の元に戻ろうとしたショコラッテだが、ぶっきらぼうな少年の声で呼び止められる。
「そっちも……なんか困ったことがあったら、連絡くれれば、俺等にも助けられることがあるかもしんねーし……」
 そう言って、剃り込みを入れた少年が袋の端を切って、自分の電話番号を書きなぐるとショコラッテに渡してきた。
「兄さん達に渡しておくね。きっと喜ぶと思う。皆のこと大事に思ってるみたいだから」
「ん……まあ、世話になってばかりだし。そのうち俺達も、な」
「まーそうだな」
 素直になりきれない不良達は曖昧な会話をする。
「それじゃ……お仕事、頑張ってね」
 頭を下げてショコラッテは樹達の元に戻るのだった。

 入り口付近や窓際は避けた方がよいと考え、車椅子に乗せられた早河綾は壁側寄りのテーブルに護衛や世話を申し出た者達とついていた。
「なんだ縲怐B歩けないのか? 肩車でもしてやろうかー」
「無理に動かすと体が痛いそうですのでぇ、また次の機会にお願いしますぅ」
「僕、チョコレートケーキ作ってきたの。よかったら食べてね!」
 陽気に話しかけてくるパラ実生に不快な思いをさせないよう注意し、メイベルセシリアが中心になって対応する。
「綾さんも召し上がりますか?」
 陽子は、セシリアが作ってきたケーキを綾に差し出す。厳しく管理をしてきたため、このケーキに毒などが入れられている可能性はないはずだ。
「楽しむことは出来ないかもしれませんが、これはあなたの為にも必要なことなのです」
 ベアトリスが諭すように綾にそう言う。
 綾は何も言わずに、ただ、頷く。
「綾はんへの害意は今のところ感じられまへんな」
 綾の背後を護っている柚子がそう言った。
「温まりますよ、お嬢様」
 大和が、やはりきちんと管理されていたポットから注いだお茶を綾に渡して、ずれているひざ掛けをふわりと綾の足にかけなおす。
「どうし、て……あなたは……こんな、こと……私は、皆に、斬られても、仕方……ないの、に」
 ぽつぽつ、綾が言葉を発する。
「綾さんがそうした様に、俺もまた守りたいんです……他でもない貴方を……」
 大和が穏やかにゆっくりとそう言葉を発して、身を起こす。
 綾の心にその言葉が沁み込んでいく、だが――その時。
 顔を上げた大和は一瞬目を疑った。
 自分達と一緒に綾を護り、綾に危害を加えようとする者を一切寄せ付けないよう警戒を払っていた百合園生――柚子が、光条兵器を振り上げ、綾へと振り下ろそうとしていた。
「綾さん――!」
 大和は咄嗟に綾を引き寄せた。
「何を!」
 護衛と監視役として綾に常に気を配っていた陽子は体当たりするように、綾と柚子の間に割り込む。
 柚子の扇子型の光条兵器は陽子の体に振り下ろされる。
「潜入者です。捕らえて下さい!」
 ベアトリスは厳しい口調で言い放った。
 柚子は即座に後方に跳ぶ。
 衝撃を覚悟した陽子だが、痛みはなかった――体は切れてはいない。
 人は切らないよう指定してあったらしい。
「甘いですなあ。銃型の光条兵器やったらどうなっていたか」
「私達を試したということでしょうか? この場で、この状態の綾さんの前で行って良いことではありません」
 陽子が柚子に厳しくそう言う。
「あ、あああああああーーーーーっ」
 綾は奇声ともいえる悲鳴を上げて、激しく暴れ始めている。大和が必死になだめようとするが治まりはしない。
 白百合団員達が柚子を拘束しようと手を伸ばした。
「きゃははははははっ」
「うふふふ、あははは、あーっはっはっ」
 しかし、突然白百合団員達は狂ったような笑い声を上げ始める。
「皆、どうしたの……どうした……の。う、うわあああああああああああーーーーん」
 駆け寄りながら、突如大声を上げて泣き出したのは 真希だった。
「真希様!?」
 パートナーのユズが真希の前に回りこみ、両肩を掴んだ。
「皆ー、どうしたのぉぉぉぉぉっ、あーーーーーん。やだ、やだよーーーーーっ!!」
 この泣き方は普通じゃなかった。
 変わらず、白百合団員の笑い声も響いている。
「泣かないで、笑わないで……よ、皆! ばっかじゃないの!! 大人しくしてよねッ!!」
 怒り出した百合園生もいた。
「バカなのはそっちでしょ! 学校ではスカートの下にジャージ穿いてるくせに、男の前では色目ばかり振りまいてっ。百合園の品位を下げないでよね!」
「喧嘩はやめてよぉぉぉぉぉ、えーーーーーーーん」
 言い争いを始める百合園生達を仲裁しようと真希は涙を滝のように流しながらふらふらと歩いていく。
 明らかに異常だった。
「皆、落ち着いてください!」
 が声をかけるも、別の場所でも同じように泣いたり笑ったり、怒ったりする者達が続出する。主に百合園生だ。
「ごめんね、ちょっと眠っててね」
 歩はやむを得ず、子守唄で怒っている友達を眠らせていく。
「……何らかの毒のようですね。どなたか癒し手の方はいらっしゃいませんか!」
 ユズは泣き喚いている真希の症状から原因は毒物と判断し、周囲を見回す。
「毒ガスじゃねぇの!? とにかく外に避難しようぜ!!」
「窓を開けろ、窓を!」
「可愛い女の子は俺が護る!」
 パラ実生達が、皆を外に出そうと動き始める。
「ガスじゃないと思います。外に出ないで下さい」
 駆けつけた未憂が、そう言いながら真希にキュアポイゾンをかける。
「ううっ、ありがとう。……ユーズー」
 真希はまだ泣き続けているが、ずいぶん落ち着いたようだった。
「食べ物には手を出さないで。中にいる人達はそのままお待ち下さい。大丈夫ですわ」
 分校長の崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)が、入り口の前に立って毅然とそう言った。

「怪しい音がしたぜー! こっちだー!」
 ホールの裏側、生徒会の雑用を務めるブラヌが、年下の分校生を引き連れて音がした方へと走る。
 ガサッと音を立てて、倉庫の隙間から飛び出したのは……四足の獣のようだった。
「何だ野良犬か?」
「狼じゃねぇの?」
「子馬くらいでかかった気も」
 ともあれ、人間ではないと判断したブラヌ達は追うことはせずに周辺の警備を続けることにする。