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リアクション
パートナーを伴い、堂々と正面から、悠然として歩いて来る者は、知る人ぞ知る有名人だった。
「メニエス……!」
それは、鏖殺寺院に属し、多く、非道な行為を繰り返してきたメニエス・レイン(めにえす・れいん)だ。
ズキリとアシャンテの頭に激痛が走った。
あらま、家なくなっちゃったのね、ノックするドアが無いわ、とぶつぶつ呟いて、
「はぁい」
と、メニエスは、驚いて立ち竦む者達に笑いかけた。
「オリヴィエ博士はご在宅かしら?」
「……いませんよ」
大地がそれに答える。
メニエスの瞳が険悪になり、その額に、鏖殺寺院の紋章が浮かび上がった。
「…………!」
その様を見て、アシャンテ・グルームエッジが、頭を抱えて蹲る。
パートナーのラズが慌てて彼女を抱え込んだ。
そんな様子になど目もくれずに、メニエスは大地を睨みつける。
「あたし、笑えない冗談て大嫌いなんだけど」
「冗談ではありません。博士に何の用ですか」
「用? やーねー、解ってるくせに」
ふん、とメニエスは笑う。
「女王器。あるんでしょ? ここに」
「……ありませんよ」
ざあっ! と、突然周囲の八方から、敵の大群が襲いかかってきた。
「な!?」
誰も気配を感じ取れなかった。
驚いた大地に、正面からメニエスが斬りかかる。
大地は辛うじて受け止めた。
「……んのッ!」
そこへルカルカが飛び込む。
同時にミストラルも動き、ルカルカの剣を受け流したメニエスの代わりに、大地達3人の相手を、パートナーのミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)が引き受けた。
「……ゴーレム……!」
その大群を見て、ヨシュアが驚愕に目を見開いた。
それは人間ではなく、ゴーレムの大群だった。
通常、ゴーレムは扱いが難しく、1人で扱える数などたかが知れている。
そして一度に扱う数が増えるほど、複雑な動きはさせられなくなる。
このような大群を一度に操るのは、メニエスの仕業でも、後ろに控えているミストラルの仕業でも有り得なかった。
「うわ……ゴーレムを戦闘に使うなんて……博士が見たら何て言うか……」
「ヨシュアさん! 下がって!」
アルゲオ・メルムがヨシュアの手を引く。
「こっちです!」
ゴーレム層の薄いポイントへ、仁科響が誘導した。
「来たかッ」
鏖殺寺院の襲撃に、風森巽は、仮面ツァンダーソークー1に変身する。
「ティア、サポートを頼む!」
「まっかせて!」
高周波ブレードを抜き払ってゴーレムの群れに飛び込んで行くソークー1に、パートナーのティアはパワーブレスをかけた。
「博士の家が、襲撃されてる!?」
向かう先の家が騒然としている。
遅かったようだ。――いや、まだ遅くはない。
牙竜は、バイクに乗ったままケンリュウガーに変身し、ひらりと飛び降りて、ゴーレムの群れへと突進した。
数が多い。しかし構わない。ここにいるのは自分だけでもない。全部倒してしまえばいいだけの話だ。
ゴーレムの動きは単調で、フェイントをかけつつ、轟雷閃を放つ。
「!?」
ふと、その手応えにケンリュウガーは仮面の下で眉間を寄せた。
ゴーレムは倒した。
だがいつもとは違う、微妙な手応えがあったのだ。
軍用バイクで駆けつけた一ノ瀬月実も、襲撃中なのを見て
「何事!?」
と驚いた。
「何事っていうか、どう見ても襲撃を受けてるのよね。
だったらヨシュアを連れて脱出……ああでも、何かゴーレム多くて入り込めない!
そして仮に入り込めたとしてもきっと出られない!」
仕方が無いので外側から銃を乱射して攻撃する。
ゴーレムが襲いかかってきたら速攻で逃げる。
「ふっ、完璧な作戦ね!」
「刀真……、数が、多い」
漆髪月夜の言葉に、樹月刀真は無表情のまま頷く。
「ええ、まさか傀儡で来るとはね、卑怯な手を使ってくれます」
そして、刀真はふ、と口元を歪めた。
しかし相手が操られているゴーレムなら、操っている者を倒してしまえばいいのだ。
月夜が自分と刀真にパワーブレスをかけて強化した。
「これは何とも……うじゃうじゃと」
朱黎明は苦笑しつつ銃を構えた。
「ハーピーとは行きませんが」
黎明の心にある意味で影響を与えた精霊、ヴォルチは、鳥系の使い魔を操り、雷系の魔法を得意としていた。
ネアがウォーハンマーを振るって前方に飛び込む後ろから、黎明は使い魔のカラスをけしかけながら、これらのゴーレムを操っている者を探す。
程なくして、最も後方に控えている男を見付けた。
信じられないことに1人だ。この量のゴーレムを1人で操っている。
「しかし、逆に、1人倒せば全てのゴーレムが動かなくなるということですね」
呟き、黎明は雷術を放った。
「!?」
しかし、魔法は軌道を逸れ、近くのゴーレムに直撃する。
「……避雷針!?」
雷の魔法だけを避けるものとは思えないので、避雷針、という表現が合っているのかは解らないが、ゴーレム達には、使い手が魔法攻撃を躱す為の仕掛けがあるようだった。
レベッカ・ウォレスは、殆ど照準も合わせずにルミナスライフルでゴーレムに撃ちまくっていたが、苦い顔をして、やがてそれをぺいっと放り投げた。
「アリシア! ワタシのグレイハウンドを出すネ!」
「は、は、はいっ!」
アリシアは自らの光条兵器を取り出してレベッカに渡す。
「ウン、やっぱりこっちの方が使いやすいヨ」
言って攻撃を再開する。
じーん。
と、感激している暇はない。
戦闘中だ。けれどアリシアは嬉しくて、こっそりレベッカの後ろから、応援のパワーブレスをかけた。
相手はミストラルだけではなく、八方から襲いかかるゴーレムとも戦わなくてはならなかった為、志位大地とパートナーの出雲阿国は、うまく連携がとれなかった。
ルカルカ達と同様、阿国がゴーレムと戦いつつ、大地とミストラルの戦いにゴーレムを介入させないようにする。
氷月千雨は、魔法で大地の援護をした。
超感覚で神経を研ぎ澄ませながら、大地はミストラルに応戦する。
攻めなくては終わらない。
積極的に攻め込む大地とは逆に、ミストラルは防戦一方だが、それは防ぐことで手一杯なのではなく、攻撃する気がないのだと、大地は気づいた。
ミストラルは、メニエスの邪魔をさせないことが第一で、とりあえず今はその他は無いのだ。
攻めに回ってしまっては、警戒ができない。
自分が攻めなくとも、周りには盾になるゴーレムが幾らでもいる。
大地はミストラルを振り切って、ゴーレムの相手に専念する作戦に変えた。
ミストラルから注意を移しても、追ってこない。
「ゴーレムの数を減らさなくては、身動きが取れないわ」
「解っています。阿国さん」
「了解じゃけえ!」
合図に頷いて、阿国は大地と同時にヒロイックアサルトを展開する。
舞うような動きで、次々にゴーレムを打ち倒して行った。
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