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嘆きの邂逅~離宮編~(第5回/全6回)

リアクション公開中!

嘆きの邂逅~離宮編~(第5回/全6回)

リアクション

 美央の説明どおり、北塔の近くの地下には講堂のような大広間があった。
 その中に、光条兵器使い、人型魔道兵器の類がひしめいている。
 軍人達に頼んで、尋人は爆薬を設置してもらう。
 爆薬の量はそう多くは無い。室内は1つのドアから覗き込むので精一杯で、入って爆薬を設置することは出来そうもない。
 行ける範囲のドアの前に爆薬をしかけて、いく。
 しかし、物音に注意を払ったにも関わらず、中の敵が一斉にこちらの方へ身体を向けた。
「まず入り口を爆破。出てきたところをもう一度爆破だ」
 尋人はそう言うが――。
「オー! ディテクトエビルに反応デース」
 ジョセフが声を上げる。
 後方からも、音が近づいていた。
 まだ、稼動していなかった兵器があったのだろうか。
 いや、地下道にはカメラが設置されている可能性も考えられていたが、この辺りのカメラの破壊は行われていなかった。何者かが、侵入者の存在に気付いて、差し向けたと考えるのが妥当だろう。
 数は多く、挟まれるような形になってしまう。逃げ場はない。
 契約者達は顔を合わせて息を飲む。
「爆破、しましょう」
 言ったのは軍人の班長だった。
「ヴァイシャリーと、妻と子と、君達の愛する人のために」
 彼はそう真剣な目で微笑みを見せた。
「わかりました」
 壁際に寄って、美央は地下探索中と同じように、後衛であるジョセフの前に立った。
「……そう、だね」
 尋人は雷號と共に、身を屈め床に手を着いて衝撃に備える。
 兵器達が入り口を飛び出したところで、第一爆破。
 続いて軍人は身を挺するかのように、第二爆破をしていく。
 爆音が響き渡り、辺りが崩れていく。
 美央とジョセフ、尋人と雷號の居場所も例外ではなく――。

〇     〇     〇


 1回目の転送から、離宮の時間の流れで数時間後、レイルと転送術者と護衛達第2回目の人員が南の塔に到着を果たした。
 この頃には、光条兵器使いが南側にも現れるようになっていた。彼らは集団で行動していないため、契約者であれば、十分振り切ることが出来る。
 パートナー通話でその情報は地上にも届いていたこともあり、必要最低限の乗り物を用意しての転送となった。
 塔から外へ出たマリザは懐かしい場所に目を細めた。
「それにしても……」
 ふと、何故離宮を封じた場所の上に、ヴァイシャリー家や百合園女学院はあるのだろかと思う。
 情報が失われていただけとは思うが、後ほど確認してみたいものだ。
「ここどこ……? 危なくない?」
 着いた途端、レイルは不安そうな目でそう言った。
葉月がいるから、絶対に大丈夫だよ」
 ミーナがレイルの手を引いて、そう言葉をかけていく。
「怖いかもしれないけれど、大丈夫。私も傍にいてあげるから」
「うん……」
 やっぱり不安そうな彼を、ミーナはそっと抱き上げた。
「大丈夫大丈夫」
 そう言って頭を撫でながら小型空飛艇に乗せた。
(こんな小さい子を危険な場所に送るなんて……)
 は怯えているレイルの様子に、やっぱり納得がいかなかった。
 だからといって、良案があるわけではないので、レイルを必ず守って連れて帰るという意思だけは強く持っておく。
「ひとっ飛びだから大丈夫だよ。服、脱げないように気をつけてね」
 菫は出発前まで他愛もない話をしたり、レイルと親しくなるよう努めていた。
 服は敵に護衛対象をいると思わせないために、自分とおそろいのフードつきの服を用意して着せてある。
 手を伸ばして、フードを被らせると、レイルはちょっとだけ笑みを見せた。
「うん。菫ちゃんもね」
 飛空艇に乗った状態でレイルも手を伸ばして、菫の頭にフードをぱさっと被せるのだった。
(小さい子は遊んで、学ぶものなのに……)
 2人の様子に、道真もやるせなくなる。レイルの派遣には賛成は出来なかったのだが、反対することも出来なかった。菫同様、彼を必ず家に帰らせようと心に決めていた。
(怪我一つさせずに、必ず無事に帰らせよう)
 小次郎も2人と同じ思いで、レイルを見守る。
「では、出発しよう。長居は無用だろう」
 小次郎は菫に目を向ける。
「ええ、急いで行きましょう。僅か数分の距離だもの、ちょっと目をつぶってる間につくわよ」
 菫はレイルの頭を撫でた後、空飛箒に乗り込んだ。
「素早い敵はこちら側にはいないと聞きます。戦闘よりも突っ切ることを優先しましょう」
 葉月が小型飛空艇に乗り込む。
「俺様も頼むぜ。応戦は任せろ」
 ソアが転送術者を護るため、ベアは葉月の飛空艇に同乗させてもらうことにする。
 葉月が先頭に出て、手で仲間に合図を送った後別邸へと向う。
 レイルを自分の飛空艇に乗せたミーナがその後に続き、その後ろに、転送術者の空飛ぶ箒に乗せたソアが続く。他のメンバー達も左右、後方を護りながら一気に別邸まで飛んだ。

「待ってたぞ!」
 別邸前にはヴァルが迎えに出ており、光条兵器使いと交戦状態にあった。
 葉月、レイル、ミーナはそのまま別邸の中へ入り、菫、道真、小次郎が戦闘に加勢する。
「人の姿でも惑わされないわよ」
 道真はアーミーショットガンで、シャープシューター。敵の頭部を撃ち抜く。
「ここには近づかないことだな」
 小次郎は、防御に気を配りながら敵の動きに注意を払っていく。
 数は多くない。だが、北側からは激しい戦闘音が響いてくる。
「ご主人は中へ。必要なら俺様は出るぜ」
 葉月の飛空艇から飛び降りたベアは、転送術者を乗せたソアを護って別邸の中へ入らせる。
「ここは任せても大丈夫そうだな」
「ええ……。もっと早く、6騎士の誰かが離宮に来れたらよかったのだけれど」
 マリザは光条兵器使いや交戦音を聞きながら、苦しげな表情でコウにそう言った。ソフィアの裏切りについては、もう説明を受けていた。
「ソフィアは古王国時代から敵側だったってことだろうか」
「そうね。多分、そうだったんだと思う」
 そして、コウとマリザも急ぎ別邸の中に入っていく。

 転送術者と共に、神楽崎優子の下に呼ばれたレイルは、早速女王器を使ってみるように言われた。
 ここでは子供も大人も関係ない。為政者の家に生まれた者として責任を持って当たれと、苦しげな息の下、優子はレイルに厳しいことを言う。
 レイルは怯えた表情で、女王器に触れる。
「魔法のお勉強したことあるでしょ? 使ってみて」
 ミーナが助言をして、レイルは杖に集中をして氷術を発動してみる――と、部屋の半分が凍りつく。
「い、いいいいいつもは、失敗か、ちょっと凍るだけなんだよ」
 使ったレイル自身が驚いていた。
 でもなんだか少し、面白いと感じたようだ。
 レイルは危険が増すまでは、別邸に留まって杖を使う訓練をしていくことになった。
 転送術者は、休憩をとったあと帰還の必要な者を連れて、一旦地上に戻ることになる。
「お姉ちゃん、苦しいの……? お姉ちゃんこそ帰った方がいいんじゃない?」
 レイルは部屋を移る前に、心配そうな目で優子にそう言った。
「いや……これは、戦場にいる者の苦しみを、少し分けてもらっているんだ。キミも、大好きな人に元気でいてほしかったら、少しの苦しみは我慢してくれ。……耐えられなくなったら、私が代わってあげるから」
 そう、優子は僅かにレイルに笑みを見せた。
 レイルは声は出さずに、強く頷いた後、護衛してくれる皆と一緒に、用意された部屋へと移っていった。

―第5回 完―

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

沢山のご協力、そしてご覚悟ありがとうございます。
今回は諸事情により個別コメントをおつけすることが出来ていませんが、ご了承ください。
貴重なアクション欄を割いての私信等、ありがとうございます。参考にさせていただきます。
招待の方には、最終回シナリオ公開時にメールでご連絡が行きますのでそちらでご確認ください。

●お詫び
生徒会長の伊藤春佳を前回の重傷者リストに入れ忘れてしまいました。申し訳ありませんでした。
今回リアクション内で、春佳のパートナーについて僅かに触れていますが「嘆きの邂逅」に登場の予定はありません。

その他リストのご要望をいただいてはいますが、様々な理由によりかえって混乱を生みそうだと感じましたので、今回は見送らせていただきます。
理由の一つは、初期に登場した方は移動している可能性もあるので、一概に私の判断で現在地を決められないのです。すみません。

●ダブルアクションにお気をつけ下さい
ダブルアクションがとても多いです。マスターコメントで何度も説明しておりますので、ご承知で書かれている方がほとんどではないかと思うのですが、不採用になったらまずいアクションを不採用にしてしまう可能性もありますので、1つの行動に集中していただき、他PCと連携していただければと思います。

また今回は状況的に合流が困難であったため、MCとLCが別の行動をしている方が多くなっておりますが、パートナー間通信が必要な方以外の方で、継続参加をしていただける場合は次回は合流を目指して下さい(MCが離宮で戦闘、LCが地上でキメラ討伐は出来ない行動となり、結果に繋がりません)。

【ご連絡】
鬼院 尋人(SFM0002871)さん
呀 雷號(SFL0016528)さん
赤羽 美央(SFM0013847)さん
ジョセフ・テイラー(SFL0013848)さん
多くの敵兵器を食い止めましたが、重体状態になりました(パートナーに影響の出る重度の負傷です)。
次回は救出されるまで、心情と現場にいる人々との会話、通信機での連絡、僅かに魔法を使うことのみ行えます。瓦礫の下敷きになっており動くことはほぼ不可能です。
治療をしても完全に回復することはなく、自力や現場にいるメンバーだけでの脱出は不可能です。

【状況】
・離宮南塔(状況:普通)
 各拠点まで数分から数十分の距離があります。殆ど人は残っていません。

・離宮作業小屋(状況:普通)
 御堂晴海が捕縛されています(重体)。
 光条兵器使いが付近をうろうろしています。見張りの白百合団員2人も作業小屋の中で待機となります。

・離宮西塔
 全員別邸、東塔に移動済み。

・離宮東塔(状況:激戦、緊迫)
 使用人居住区からの敵をひきつけ、交戦状態です。救護所に死傷者が続々と運び込まれています。
 隊長の風見瑠奈は東塔から指示を出し、時々自分も前線に出ています。引き続き死傷者は出ますが、現在押し寄せている敵は今いるメンバーで撃退可能かと思います(北塔に集まっている敵除く)。
 本陣、宮殿、使用人居住区、いずれからも少し距離があります。

・離宮別邸(状況:交戦中)
 光条兵器使いと交戦中です。次回は接近戦に至っていると思われます。
 一番設備が整った救護所があります。宮殿、西塔からわりと近いです。

・離宮地下道(状況:緊迫)
 都市の地下通路のような地下道です。分かれ道など結構ありますが、迷路になってはいません。
 光条兵器使いが溢れており、封鎖されていない地下道出入口から外へ出てくる者もいます。

・離宮宮殿、時計塔
 メンバーは使用人居住区方面への援護か、宮殿地下への援護に向っていると思われます。
 (軍人は同行していません)

・離宮宮殿、地下
 激昂の騎士ジュリオと対峙中です。退路の確保も行っていたため、全員で振り切って逃走を図れば、全員で別邸まで戻れます。正し、ジュリオが敵としてどこかに参戦すると思われます。
 また、全員で一気にジュリオを倒して、退却という手段も不可能ではないと思います。
 ジュリオの説得や洗脳を解く、捕縛するなどの時間はないと思われます(光条兵器使いに囲まれます)。
 現状、封印の玉を無事持ち帰れるかどうかが重要……かもしれません。

・離宮宮殿宝物庫奥
 研究室らしき部屋を見つけました。調査を行い、資料などを持って帰る(殆ど読めません)ことになると思います。
 調査を班員に任せて、どこかに加勢に向うことも出来そうです。

・離宮使用人居住区
 敵はあまりいないようです。

・離宮北塔(状況:緊迫)
 指揮者到着後に進軍が開始されます。

・離宮北地下
 爆発で崩れました。敵兵器が集まっていたホールの出入口が埋まっています。
 潜入した味方に生存者がいると思われるため、救助が検討されています。

・離宮北地下、機関室(ソフィア)
 爆発により壁に穴が開きました。地下道と繋がっています。

・離宮対策本部
 本部だった場所の隣室に設けられ、事務局長と一部のメンバーが残っています。パートナーとの連絡に従事している者が多く、情報が飛び交っています。
 データは可能な限り復旧し、関係者に配布されています。

・ミクル
 ヴァイシャリー家で保護されています。
 信頼できる私兵が警備を担当しているため、現時点ではここに留まっていれば、ミクルの身の安全は保証されています。
 ただ、ファビオの封印が解かれた後、用済みとしてファビオが殺害されるなどということになった際には、ミクルにも影響が出ると思われます。

・アレナ
 深手を負いましたが、一命を取り留めました(闇組織編)。
 星剣の封印を解除しました。
 集中治療室で絶対安静状態です。

・避難活動
 順調に進み始めたところです。

・軍人配備
 配置についたところです。

・キメラの弱点
 形状により違い、特に共通の弱点は判明はしていません(機械が埋め込まれていてもそれが弱点というほどではありません)。
 統率者がいない場所では、単純に暴れるといった行動しかしないようです。
 統率者なしの飛行系のキメラは同じ方向を目指していますが、船で運ばれた獣型のキメラはバラバラに動いています。

・金の腕輪
 爆破装置と盗聴器が埋め込まれています。回線は携帯電話と同じです。半年くらいで電池が切れます。
(PCが得られることも、推察できることもない情報です。嵌めている本人も詳しい仕組みは知りません、知ることも出来ません。無理にPC情報にしようとしたりせず、知らないとしてPC的に悩んで行動を決めていただければと思います)

・ヒグザ
 ヴァイシャリーの上空で飛行系のキメラを纏めています。
 クリスと連絡がつかないようなら、適時転送をしていくと思われます。

【お知らせ】
最終回は7月23日にシナリオガイド公開予定です。
タイトルは【嘆きの邂逅(最終回/全6回)】です。
定員100人1本で行いますので、お間違えのないようご参加いただければ幸いです。

引き続き、お力をお貸し下さい!

▼マスター個別コメント