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リアクション
■□■2□■ 未来のイルミンスール
こうしている間に、真面目に質問する者達もいた。
「まずは、詳しい未来の……ええと、つまり、現在の状況を把握しておきたいのですが。
それにしても、イルミンスールが切り倒されて
エリザベート様は大丈夫だったのでしょうか?」
ナナ・ノルデン(なな・のるでん)がエリザベートとアーデルハイトにたずねる。
「桜井百合園校長先生をいぢることをライフワークにしてる
『あ の』ラズィーヤさんが、
わざわざ宦官になんかするかな?
『宦官にしちゃいますよ』って匂わせて反応を見るくらいならともかく
……って、二人とも聞いてないね」
エリザベートとアーデルハイトに手土産のお菓子を持ってきた峰谷 恵(みねたに・けい)だったが、
パンツ番長の来襲やらなにやらでエリザベートもアーデルハイトも大騒ぎしており、
話を聞いていない。
「それについては、私達がお答えしましょう」
「未来の私?」
ナナの目の前に、未来のナナが現れる。
「ある時は、エリザベート様の忠臣。
またある時は、悪の魔の手から貧民を救う謎の魔法少女「七夕(ななゆうの)の魔法少女」。
またまたある時は、スラムを行きかう普通の少女。
そしてその実体は、エリザベート様達に情報を集めるエージェントで
レジスタンスとの連絡係です」
未来のナナがポーズをとる。
「ゆ、Uカップくらいになったのに、垂れてない!?
その不思議力はいったい!?」
恵は、未来の恵の姿を見て驚く。
現在の恵も超巨乳であり、それが悩みの種なのだが、未来の恵の胸はさらに大きかった。
さらに、未来の恵の実年齢は20代半ばのはずだが、それよりも若く見えた。
「これが、エリュシオンで得た魔道知識。
ボクは既に老化と寿命を克服し、神の域を遥かに超えるため研究を続けているんだよ」
未来の恵は、老成した様子で言う。
未来の恵の研究資金は、ほとんどが人工生命体の娼館を各地に作ることで得られていた。
男娼もおり、幾重にも隠れ蓑、偽装、スケープゴートを用意することで、
各地の情報も集めている。
また、資金の一部は、義理と好意からエリザベート達にこっそり仕送りしているのだった。
「世界樹イルミンスールは、
まだ根が残っていますから、生きています。
それに、神なので、切り倒されたくらいでは死なないのです」
「そうだったのですね。
……それにしても」
「どうしたのですか?」
「いえ、なんでもありません」
(魔法使いとしては成長しているようですが、
バストに大きな差がないのは……
いえ、これはこれで、きっと需要があるでしょう……)
未来のナナと未来の恵を見比べて、現在のナナはため息をつく。
「宦官になった桜井校長が本当の黒幕なのかな。
裏に誰か黒幕がいるんじゃないかと思うんだけど……」
「黒幕は、桜井校長を宦官にしたラズィーヤさんだよ。
ラズィーヤさんは、本当に桜井校長を宦官にしてしまったんだ」
恵の質問に、未来の恵が答える。
★☆★
「『切ってなくなっちゃったものは、また生やせばいい』という格言があった!
……と思いますわっ!!」
狭山 珠樹(さやま・たまき)は、アーデルハイトをなんとか捕まえて頼む。
「未来アーデル様!
プリーストの魔法には、
切り取られた身体の一部を再生できるものがあると聞きます。
通常のそれでは神たる未来の静香さんには効かないかもしれませんので、
魔法で『身体の一部復活の儀式』ができないでしょうか?」
珠樹は、未来のアーデルハイトが現在の静香を殺そうとするのではと考えて、
平和的解決を提案するつもりだったのだが、
どうもそんなつもりはないらしい。
しかし、身体の一部を再生することができれば、いろいろなことが解決すると考えたのだった。
「それはできん。
できるのなら、すでに私達が試しておる。
しかし、似たようなことが、別の方法でできたはずじゃ。
ある生き物を使って料理を作れば、
宦官の身体は元に戻ると聞いたことがある気がするのう……」
アーデルハイトは言う。
「そうなのですか!?
なら、その方法をぜひ思い出してくださいませ!
世界樹が切り倒されたのもかなりショックです。
でも、エリザ様のことだから
薪にされるのを阻止して『イルミンの箱舟』とか作っているに違いありません!
見た目は巨大戦艦で、潜航も可能なら神出鬼没のレジスタンスの本拠地として最適!」
「さすがにそれはできないのですぅ。
でも、身体の一部再生の方法があれば、
イルミンスールを復活させることもできるかもしれませんねぇ」
珠樹にエリザベートが答える。
「そういえば、未来の静香さんを止められたとして、
この土地状況はどうしたものなのですかね……。
やはり、ヴぁいしゃりーさんを分解すると、
大陸が浮き上がって元通りになるのでしょうか?」
「地祇(ちぎ)のことはよくわからないですけどぉ、
イルミンスールが復活したら、
シャンバラ中の水を吸収することだってできるはずですぅ」
「じゃあ、ますます復活の方法を探さなくてはいけませんわ!」
ナナの疑問にエリザベートが答え、珠樹が拳を握る。
★☆★
そうしているうちに、
未来のジークフリート・ベルンハルト(じーくふりーと・べるんはると)が突っ込んできた。
「アーデルハイトッ、お前が欲しいィーーー!」
「なんじゃお前はー!?
離せ、離さんか!!」
未来のジークフリートは、「火星を統べる魔王」を称し、沈没したシャンバラの民の一部を率いていた。
民が持ち出せた財産を元に、
火星の土地権利書を大量に購入して正式な領土としており、
火星を人が住める土地へとするため、テラフォーミングを計画している。
火星への交通手段はアーデルハイトのテレポートや知識が有効だと判断して、
アーデルハイトをさらおうとしているのだった。
「アーデルハイト! 俺にはお前が必要なんだーッ!」
しかし、アーデルハイトをお姫様抱っこして叫ぶ未来のジークフリートの言動から、
それを推察できる者はいなかった。
「ちょっ、おい、まて未来の俺よ!
その言い方はまずいのではないか?
まるで俺がロリコンみたいではないか。
下手をするとロリコン大魔王になってしまう……。
それだけは勘弁してくれ、頼む」
ジークフリート・ベルンハルト(じーくふりーと・べるんはると)は、
「火星の魔王」となり覇を唱える未来の自分に協力しようとしていたが、
あわててツッコミを入れる。
「だいたい、日本のゲームや漫画でも、
魔王がロリコンなんて展開は……
いや、あったかもしれんが、
それは俺が思い描く魔王像ではない!
テラフォーミング魔王として、
もっと、夢のある存在としてだなあ……!」
ちょっと勘違いした自称魔王のジークが自説を展開する中、
未来・明日香は言う。
「そうですね、火星に行っちゃえば私のライバルが減るかも……」
「明日香、なんじゃそのヤンデレ発言は!
いくら強化人間だからって……そうか、むしろ元からの性格じゃな!?」
アーデルハイトはじたばた暴れながら言う。
「こうなったらしかたありません。
ナナ・ノルデン、推して参ります!」
「兄さんも言ってたね。我慢できないヤツは嫌われるって」
「いいかげんにせんかーッ!」
二人のジークフリートを、未来・ナナと、未来・恵、アーデルハイトがぶっ飛ばす。
「お、俺がぶっ飛ばされるだと!?
ふはははは、人呼んで『魔王の目』として世界を見渡す星になるのだ!」
「アーデルハイトォォォォォォォ! 話を聞いてくれーッ!」
二人のジークフリートはお星様になった。
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