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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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 国頭武尊(くにがみ・たける)が、兵を張り倒しながら、中軍めがけて一気に来る。
「敵将・騎凛セイカァァ、どこだ!」
「国頭!」「国頭だ!」「絶対に通すなっ!」
 
 パラ実勢に加勢して襲いくるサルヴィン川支流の辺境部族らの勢いも強く、厄介な存在だった。
 騎凛の旗の周りでは、魔王軍やメイドナイツがそれらを相手取って奮戦している。
 禁じられた言葉を詠唱するノストラダムス・大預言書(のすとらだむす・だいよげんしょ)ジークフリートは鬼神力で巨大化し、敵をなぎ払う。「行くぞ、ノス……!」
 ジークフリートが敵陣に向け撃ち放つ雷に合わせ、大預言書も魔力を一気に放出する。
「ふふふ、荒れ狂え雷光! 我が魔力の前にひれ伏すがいいのだ!」
 シオンは立ち上がってこようとする不良どもを鬼眼で睨みつける。彼らの兵力と戦意はこうして徐々に確実に削られている。しかし……
「怯むな! 将旗はすぐそこだ!」
「まだ、来るみたいだね……!」
 ミレイユは、ブリザードを放ち、氷の嵐に敵を巻き込む。視界をさえぎられ、冷気のなかでばたばたともがく不良たち。
 そのなかから、まっすぐこっちへ突っ込んでくるものが……
「ええい、突っ込め! 将を討ち取れ!」
「わ、わ、国頭武尊さん……!」
 ミレイユは思わず避けてしまう。「(うう……あっちは覚えてないかもしれないけど、ろくりんピックの最終競技でポロリさせられそうになったことあるんだよね……)」
 続いて十数人の集団が駆けぬていく。その後続の二、三人を振り倒し、幻槍モノケロスをかかえたシェイドが駆けつける。
「ミレイユ、大丈夫ですか」
「ええ、ちょっと恐かったけど……あ、でも国頭さん、通しちゃったけど」
「先生には護衛たちがいます。あとは任せるしか……。
 ? それにルイーゼもいませんね……。む……!」
 ヒャッハァァ! まだ続々と迫ってくる。「オレたちにもポロリさせろやミレイユ!」
「い、いやだよ絶対っ!」
「これ以上は通しません」
 


 
 激戦である。シーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)は、昴に続き、林田、大岡等、部隊を指揮していると見られる者を見つけては、石化させていく。
「何、しまった! 足がっ……」「く、動けない、やられ、た、ぜ、……!」
 指揮を失った兵の混乱は大きい。
 各パートナーらが何とか収拾にかかる。
 ノイエでは昴の後をノリさんとライラプスが引き継ぐ。夜空から優しく微笑みかける昴コウジ。
 騎狼部隊では緒方、ジーナ、コタローらが、
「樹ちゃん……! く、仇成す者は灰に……」「爆炎でポン!攻撃で、じゃんじゃか燃やして差し上げますっ!」
「ねーたん、ひーるれす! きゅあぽいぞんれすっ。ちょっとなおってきたれす?」
 輸送隊ではフィディが治療に入っている。「仕方ありませんね、やはり……お仕置きですね」ニヤリ。それを聞いて石のまま震える永谷。
 
「次は……あの人?!」
 シーリルは、やたらと大声で周囲の兵に指示を与えている四十前後と思われる男を見とめた。 
「お覚悟!」
「龍雷連隊! あちらへ突撃せよ! 待て、こちらが手薄だ。そこの四人はそちらへ回れ!」
「む。龍雷?
 となると、あなたは……松平岩造(まつだいら・がんぞう)、龍雷の隊長ですね!」
「貴様は誰だ!
 俺は女を斬る剣は持ち合わせておらぬ。去れ!」
「……武尊さんがおっしゃっていました。
 龍雷の隊長には別件で借りがあると。だからなるべく手を出さないでおけと」
 シーリルは、松平に向けていた石化の魔法ペトリファイを込めた手を下げた。
「ですけど、これで貸し借りなし、ですよ!」
 松平はシーリルを睨み返す。
「むう。貴様は国頭の嫁か。国頭はどこだ! この岩造と勝負せいと伝えよ!」
「……」
 シーリルはあとは無言で、次の狙いを定めるべく松平のもとを去っていった。