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ゴチメイ隊が行く5 ストライカー・ブレーカー

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ゴチメイ隊が行く5 ストライカー・ブレーカー

リアクション

 
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「こら、何をやっている!」
 同じ状況に見舞われた制御室で、三船敬一が叫んだ。
「すぐに元に戻せ!」
「このままじゃ、墜落だよ」
 カレン・クレスティアが悲鳴をあげた。状況は、島全体がほぼ横転し、しかも少し回転したために、雲海にどんどんと沈むように下降していっている。
「なんとか、安全に海上に下ろすことはできないんですか」
「この質量じゃ、無事になんて無理だ」
 安芸宮和輝に、三船敬一が怒鳴り返した。
 
    ★    ★    ★
 
「まずいぞ、このままじゃ真っ逆さまじゃねえのか」
 自分たちが落っこちた方向から、島がどちらをむいているのかを想像して、雪国ベアが叫んだ。
「エンジンを止めなきゃ! 我求めるは、天翔る翼!」(V)
 ソア・ウェンボリスが、空飛ぶ魔法↑↑で、制御盤に飛びつく。
「止めちゃだめだ御主人。すぐに動かせるように、出力だけ最低にするんだ!」
 雪国ベアが叫んだ。いったん止めてしまったら、巨大なエンジンほど再起動には手間と時間がかかるはずだ。このへんは、いつも小型飛空艇を運転しているので感覚として身についている。
「うん、分かったです、ベア」
 ソア・ウェンボリスは、エンジンの出力を絞る。とりあえず、島の下降が緩やかになった。
 
    ★    ★    ★
 
「こんな所にベースキャンプが……。いったん着陸するぞ」
 突然メイドロボたちが停止したおかげでやっと防衛戦を突破できた松平岩造が、他の者たちに指示した。
「おや、誰かやってきたようだな」
 それに気づいたジャワ・ディンブラ(じゃわ・でぃんぶら)が、長い首を回して振りむいた。
「そうみたいですね。ちょうどいい、手伝ってもらいましょう」
 樹月刀真の放送を聞く前から異変を感じて撤収準備を進めていた一条 アリーセ(いちじょう・ありーせ)が言った。
 まさかこんなことになるとは思っていなかったので、小型飛空艇や箒をおいていった者も多い。何かあったときはすぐに対処できるようにと整理しておいたのは一条アリーセの先見の明であったが、いかんせん人手がないために困っていたのだ。
 こんなこともあろうかと思って連れてきていた機晶姫のリリ マル(りり・まる)は、アタッシュケース型という世にもまれな機晶姫であるため、こういうときの役にはまるでたたなかった。せいぜいが、敵の警戒と、火術で霧を焼き払ってある程度の視界と暖を確保するぐらいである。
「一条殿、誰かこちらへやってくるであります!」
 リリ・マルが、松平岩造たちとは別の方向から誰か来ると伝えた。武神雅だ。
「ここがベースキャンプであったか。今、牙竜が散らばった者たちを集めておる。合流を願えるだろうな」
「もちろんだ。おい、そこの者たち。来たばかりですまんが、撤退だ。乗り物を移動するのを手伝ってくれ」
 ジャワ・ディンブラが、松平岩造と黒乃音子たちにぞんざいに頼んだ。
「むっ、作戦外行動ではあるが……」
 松平岩造は不満であったが、敵の抵抗にあって出遅れてしまったのは事実だ。それを受け入れると、手分けしてその場にあった小型飛空艇に分乗していった。
 教導団の者としては頼りないと思っている箒から小型飛空艇に乗り換えられて、黒乃音子とロイ・ギュダンは少しほっとしたようだ。
 そのときだ、突然島が傾き始めた。
「まずい、飛びあがれ!」
 ジャワ・ディンブラが叫んだ。
 
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「あれが、にっくきゴチメイたちがいるひょっこり島ですか。許しません。やはりきゃつらゴチメイはだごーん様秘密教団の敵でした。幟などで応援したのが間違いだったのでしょう。目先の利益に目がくらみ大義を見失うとは、このぽに夫一生の不覚! この恨み、覚えました! 壊されたデジタルカメラの仇、必ずやとらせていただきます!」(V)
 空京がある島の西端で、いんすます ぽに夫(いんすます・ぽにお)が叫んでいた。みんな大橋の方へと避難したので、ここには彼と巨獣 だごーん(きょじゅう・だごーん)様の他には誰もいない。
「いあいあいあ。敵はあそこにあり。浮遊島が進む方向に障害物となるゴミをばら撒き、浮遊島をひっくり返すのです! お願いします、だごーん様!」(V)
「ジョソギギ。パガ ギンジボ ボゾリ、ビビ ドゾベジョグ。ギンゲンゼド ギズレ!」(V)
 だごーん様が、一所懸命廃品回収して集めてきた粗大ゴミを拾うと、間近まで近づいてきている浮遊島にむかって投げつけ始めた。
「ははははは、転覆してしまえばいいのです」
 そう、いんすますぽに夫が言ったとたん、なぜか本当に浮遊島が傾き始めた。
「さ、さすがはだごーん様。すばらしい!」
 いんすますぽに夫が歓喜の声をあげる。
 だごーん様の不法投棄が効いたのか、真横に傾いた浮遊島がまた元に戻りつつも進路を変え、空京の島をかすめるほどのぎりぎりで通りすぎていった。そのまま、雲海へと沈んで姿を消す。
「いあいあいあいあ。我がだごーん秘密教団に逆らう者の末路なのです!!」(V)
 津波のようにあふれてきた雲の直撃を受けてちょっと流されかけたところをだごーん様に助けてもらいながら、いんすますぽに夫は高笑いをあげ続けた。
 
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「えへっ、油断大敵……ですね」(V)
 ひっくり返りながら、ナナ・ノルデンがまるで人ごとのように言う。
「止めて、止めて、止めて!」
 わめきちらしながら、茅野菫が自ら空飛ぶ魔法↑↑でコンソールに飛びついてスラスターを逆方向に切り替えた。
 ほとんど九十度横転していた島が止まり、ゆっくりと水平に戻っていく。
 タイミングを見計らい、茅野菫が細かい噴射を行って島を安定させた。
「左スラスター、噴射角y+方向。推力1」
 その都度、エシク・ジョーザ・ボルチェが、細かくローザマリア・クライツァールに状況を伝えていった。
 
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「なんとか、戻すことは戻せたかしら」
 朝野未沙が、ほっと一息ついた。ローザマリア・クライツァールが伝えてくれる左スラスターの出力に連動させて細かい調整を行っていたのだ。
 なんとか、島は水平に戻り、進路も空京から外れる方向にむいたらしい。ただ、空京を離れる大きな気流に取り込まれたらしく、浮上することなく雲海に沈んだままになっている。
 そのおかげで、今度は別の問題が発生していた。戦闘で外界との扉を破壊された各施設に、雲海の雲が流入してきたのである。
 
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「急げ、このまま中に残っていたら、どうなるか分からないぞ」
 吹き込んでくる霧をかき分けて通路を進みながら、三船敬一が叫んだ。
 状況的に、これ以上島に残って機械を操作するのは危険であった。専用の装備や食料なども用意してない状態で、しかも雲海に沈んだ状態の島で過ごすのは自殺行為だ。いったん離れてしまえば、二度と戻ってこられる保証はないが、遭難して帰らぬ人になるよりはましだ。
「まったく、パンダ島じゃないんだから、こんな所で遭難してゾンビになるのはやだよー」
 カレン・クレスティアが泣きそうな声をあげる。グスグスしていて空京の位置を見失えば、本当に遭難だ。
「おや、皆さん、あわててどこへ行くのですか?」
 ばったりと、箒をかかえたクロセル・ラインツァートと一同が出会う。
「ちょっと、あなた、状況を理解していますの?」
 藍玉美海が突っ込んだ。
「ええと……。ははははは、困ったときの箒売り、何でも通販の雄、クロセル・ラインツァート、放送開始」
「意味は分からないし馬鹿だけど、その箒はもらった!」
 シャーミアン・ロウが、クロセル・ラインツァートを張り倒して空飛ぶ箒を奪い取った。
「みんな、これで脱出よ!」