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ゴチメイ隊が行く5 ストライカー・ブレーカー

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ゴチメイ隊が行く5 ストライカー・ブレーカー

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「先に突っ走っていったのは、派手に始めたようだな。この隙に、俺たちは敵の本陣を叩くぞ」
 シス・ブラッドフィールドの救出をラルク・クローディスたちに任せて留まっていた桜葉忍が、ノア・アーク・アダムズたちをうながした。
 だが、こちらとて、敵の抵抗がないわけではない。
「ぬるいのう」
 黒い炎にも似たオーラを纏って、織田信長があたるを幸いにメイドロボを斬り捨てていく。そのかたわらをカバーするように桜葉忍が立ち、轟雷閃でメカ小ババ様たちを爆破していった。その後ろから、ノア・アーク・アダムズが続く。
「ふっ、次からもっと手ごたえのある奴を用意しておくことじゃ、まあ次があればじゃがな」
 前方の敵を駆逐した織田信長が、倉庫の中へ一番乗りしていった。
「おやおや、威勢のいいことで」
 柔らかい声と共に、無数の緑色の羽根が彼女の周囲に舞い散って視界をさえぎった。
「目くらまし程度で」
 何かが接近してくる気配に、織田信長が剣を横に薙いだ。だが手ごたえはない。次の瞬間、四方八方から魔導球が飛んできて織田信長の身体を激しく打ち据えた。
「信長!」
 あわてて、桜葉忍が助けに入った。乾坤一擲の剣と奈落の鉄鎖で、飛び交う魔導球を叩き落とす。
「口だけのことはありますね。では、少しだけ本気で」
 ジェイドがパチンと指を鳴らすと、魔導球が二人を中心に渦を巻いて回転し始めた。同時に、激しく振動して甲高い音をたてる。
「何を狙ってる」
 桜葉忍と織田信長が背中合わせに立って身構えた。その二人の剣が、突如激しく振動したかと思うと、細かい破片となって木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「何が起こったんだ!? ノアはくるな!」
 耳を押さえてうずくまる織田信長の隣で、桜葉忍が叫んだ。
 以前オプシディアンと戦ったことのあるイルミン生であれば魔導球には最大限の注意を払うところだが、他の学校の生徒たちにはほとんどその恐ろしさは伝わってはいない。それらに周囲を取り囲まれた場合、固有振動数による共鳴破砕やマイクロ波によってチンされてしまう恐ろしさは、彼らなら身をもって知っているのだが。
「もっと楽しませてくれなければ、私がここにいる意味がないじゃないですか」
 ちょっと落胆したように、ジェイドが言う。
「いつまでも、遊んでいるような口ぶりを……!!」
 怒号と共に、桜葉忍たちを取り囲んでいた魔導球が、パワーレーザーとドラゴンアーツとサンダーブラストの一斉攻撃で崩れた。ラルク・クローディスたちが駆けつけたのだ。
「そうこなくては。アクアマリン、本番ですよ」
「了解しました」
 ジェイドの言葉に、アクアマリンがメイドロボの起動スイッチを入れた。
 薄暗い倉庫に、目映い明かりが灯った。その床一面を埋め尽くすようにして待機していたメイドロボが、一斉にセンサーアイに光を点して動き始めた。
「黒龍騒ぎで、時間だけは充分にありましたからね。もう出し惜しみはしませんから、存分に戦ってください」
 ジェイドたちが地道にロボットを作っていただけはあり、圧倒的な物量だ。
「みんな、来るで!」
 大久保泰輔が叫んだ。
 
    ★    ★    ★
 
「なあに、ラジオ放送で、そんな事態になってるって言ってるの?」
 蒼空学園にいるヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)からの連絡を聞いて、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が小型飛空艇に乗りながら叫んだ。
『ええ。こちらでもえらい騒ぎでして。もっとも、ウイルスのタイプを識別した学生がいたらしく、こちらのXサーバーで対策が判明して、パートナー通信を利用して順次ワクチンの実行と再起動を指示しているとのことです。空京、および隣接被害を受けた海京のシステムは普及はすると思いますが、データリンクが切れて初期化されてしまった防衛システムを再構成するには時間がかかるとか。おかげで、イコンの管制システムも役にたたないので、すぐの出撃は無理のようです』
「えーっと、よく分からないけれど、よく分かったわ。つまりは、私たちでなんとかしなくちゃ、このままだと狐樹廊は野良地祇になって貧乏神同然になってしまうって言うわけね」
『ええと……、言っている意味は理解できませんが、一応理解しました。御武運を』
 少し間の抜けたやりとりが終わり、リカイン・フェルマータが眼下にそびえ立つ鉄塔を含む倉庫街を見下ろした。
 先ほどから、連続して爆発が起きている。間違いなく、そこで戦闘が行われているのだ。
「それで、どうするのよ」
 光る箒で空中に留まりながら、シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)が、リカイン・フェルマータに訊ねた。
「考えることはありません。空京を侵す者たちに神罰を。止めても無駄ですよ」
 珍しく、怒りを顕わにして空京稲荷 狐樹廊(くうきょういなり・こじゅろう)が言った。
「誰が止めるものですか。存分にやりなさい」
 リカイン・フェルマータの言葉を待つまでもなく、光る箒に乗って急降下していった空京稲荷狐樹廊が、自身の周りに展開させたファイアストームを降下する勢いのまま地面のメカ小ババ様たちに叩きつけた。
「骨の髄すら残らぬことを覚悟なさい! 炎舞・鳳閃渦!」
 広がる炎と共に、次々に小爆発が起きる。
「あらら、身も心もヒートアップしちゃってるみたいね。それじゃあフィスはクールにブリザードといこうかな」
 感心しているのか呆れいてるのかよく分からない口調で、後を追うシルフィスティ・ロスヴァイセがブリザードを放った。地表を、炎と氷が、二色に染めあげていく。
 二人の支援に回ろうとしたリカイン・フェルマータだったが、メカ小ババ様たちに追われながら鉄塔を登っている人影に気がついて、そちらの方へと小型飛空艇を寄せていった。ラスターエスクードでティザーガンのプローブを弾くと、必殺のバラをメカ小ババ様の口に投げ刺して倒す。
「こんな所で何をしているのよ」
 リカイン・フェルマータが、一番目立つ格好をしている悠久ノカナタにむかって訊ねた。
「もちろん、この怪しい鉄塔にある誘導装置らしき物を破壊するのだ」
「分かったわ、壊せばいいのね。任せて!」
「ちょっと待ってよね、もし使えるなら、奪い取って……」
 悠久ノカナタの返事を聞いて飛び出したリカイン・フェルマータには、ミルディア・ディスティンの言葉は届かなかった。
「狐樹廊、これこれ!」
 鉄塔のてっぺんにある発信機を指さして、リカイン・フェルマータが空京稲荷狐樹廊を呼んだ。
「それもか!」
 止まることを忘れた空京稲荷狐樹廊が、とって返してくる。それを追って、何条ものメイドロボからのビーム攻撃が燦めいた。
 すれ違い様に扇の一振りで放ったサイコキネシスで、空京稲荷狐樹廊が発信機の基部を破壊した。浮遊島に対して、マイクロ波とレーザーで誘導波を発信していた発信機が、そのまま地上にむけて落下する。
「落ちるんだもん」
 届かないと分かっていて、思わずミルディア・ディスティンが両手をのばした。
 空京稲荷狐樹廊を狙ったビームが、発信機に命中して爆発する。
「ああ、使えれば、浮遊島を別な場所に誘導できたかもしれなかったのに……」
 ミルディア・ディスティンが悔しがったが、今となっては本当にそうできたかは謎となってしまった。
 
    ★    ★    ★
 
「誘導波が止められたみたいです!」
 ノートパソコンの画面を見ていたアクアマリンが、すかさずジェイドに報告した。
「そうですか。だが、もう遅い。遅すぎますね。誘導波などなくても、直進するだけで島同士は激突するでしょう。むしろ、へたに誘導波を悪用されなくなっただけ、私たちの方が有利です。後は、島の方で彼らがうまくやってくれると、もっともっと楽しめていいのですが。もう少し、本気で戦いたいところではありますね」
 のんびりとお茶を飲みながら、ジェイドが言った。
 そこを狙ってときおりレーザーや衝撃波が飛んでくるが、そのたびにフォーメーションを組んだ魔導球がバリアを展開して無効化していく。
「あのー、けりをつけるなら、一斉にメイドロボのリミッターを解除すれば自爆だけでも半径百メートルほどは消滅させられますけど……」
 ちょっと丸眼鏡の位置をなおしながら、おずおずとアクアマリンが言う。
「そんな戦い方は無粋でしょう。己の力量で戦いを挑んでくる相手には、相応の戦い方をしませんと。けれども、この程度の玩具を突破できないのであれば、まだ手合わせは早いですね。仕様変更が改良になっていないのでは、上様の憤りもよく分かるというものです」
 ジェイドはこの程度と言うが、圧倒的な数で押してくる敵に、突入組はじりじりと倉庫の外へと押し返されていた。