リアクション
「暴れ鹿の群れだあ!」 廊下を突っ走る猫車の少女と、ジガン・シールダーズたちを追いかける神代明日香たちと一緒になって、なぜか通路を走り回っていた鹿の群れが、広い展示室に走り込んできた。いや、これは、戻ってきたと言うべきだろうか。 「うわっ、なんだかたくさんやってきたよね。ここは動物園?!」 「そんなわけないよね。あっ、あっちに人だかり、ううん、鹿だかりができているんだもん」 唖然とする天王寺沙耶に、クローディア・アッシュワースが言った。 「行ってみましょう」 シャーリー・アーミテージが、一同をうながす。 展示室は、なだらかな芝生の公園と化していた。その中央に、鹿だかりがある。 「いや〜ん」 無数の鹿にたかられて、鹿せんべいを持ったマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)がイヤイヤをしている。 「ナイスです、グッドです、マナ様!」 シャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)が、そんなマナ・ウィンスレットの周囲を鹿の一頭のようにグルグルと回りながらパチパチと写真を撮り続けていた。 「これが、マナ様が行ったという、『修学旅行の思ひ出』。奈良とかいう場所の修学旅行の風景なのですね。さすがはマナ様です。気合いで、絵まで実際の物にしてしまうなどとは。あのぼんくらとは大違いです! あ、あれのことはふれなくてもよろしいですから。このかわいらしいマナ様を、もっともっと!!」 もう完全に危ないストーカーと化して、シャーミアン・ロウが叫んだ。 「そんなこと言っていないで、助けてなのだあ〜」 鹿に囲まれたマナ・ウィンスレットが助けを求めた。 なんとかして、すべての鹿にちゃんと餌をあげたいのだが、その意志は鹿には伝わりきらないようだ。ともすれば、マナ・ウィンスレット自身を囓りかねない勢いで群がっている。 「あたしも、おせんべあげたーい」 「危ないからダメだよ」 混じりたがるアルマ・オルソンを天王寺沙耶が押し止めた。 はっきり言って、鹿はどんどん増殖しているようにも思える。いったい、どこからこんな数がわいてくるのだろう。 「ああ、うろたえるマナ様もス・テ・キです!」 完全にシャーミアン・ロウは役にたたない。命の危険はないからと、鹿に弄ばれるマナ・ウィンスレットを十二分に堪能する気のようだ。 「やべぇ、マナ殿かわえぇ……」 アキラ・セイルーンが、微笑みながらそんなマナ・ウィンスレットを見つめた。 マナ・ウィンスレットにとっては、とてもかわいいと言われて喜べる状況ではないのだが、誰にも分かってはもらえないようだ。 「クロセル、笑ってないで助けてあげないと、マナ食べられちゃうワヨ。クロセル?」 アリス・ドロワーズがクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)の姿を探した。ところが、肝心のクロセル・ラインツァートの姿が、どこにも見あたらない。 「アキラ、探しに行くネ」 アキラ・セイルーンの腕をとると、アリス・ドロワーズがクロセル・ラインツァートを探すことにした。 地祇などのポートレートが飾られている近くの別の出口から、隣の展示室へと移動していった。 |
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