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リアクション
第4章 魔将君臨【7】
神槍の加護が消え、蓄積された神気がガルーダから放たれた。
荒ぶる破壊の光は周囲の何もかもを喰らい、粉々に、跡形もなく、ガルーダの意志を無視して滅ぼしていく。
それと同期して、苦しむ彼の身体はすこしづつ小さくなっていった。
「お、縮んでく縮んでく。セクシー衣装のグラマー美人も、あのサイズだとドキドキしないから良かったよー」
遠目に冗談みたいなことを言ってるのは、万年ピーカン少年甲斐 英虎(かい・ひでとら)である。
その横で、パートナーの甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)は傷付いた生徒達の治療にあたっていた。
草むらに寝かされているのは、陣にエヴァルト、旭、総司など。
「こんなところでは満足な治療は出来ませんがせめて応急処置だけでもさせていただきます」
「まぁ皆、命に別状なさそうで良かったなー」
うんうん、と頷き、明らかにヤバイ潰されかたした総司からは目をそらした。
「……ところでさ、ルミーナさんってアムリアナ女王より古い時代の女王の血筋だったりするのかな?」
「どうしたんです、急に?」
「なんか周りの会話を聞いてたらそんな話しが出てたからさー」
「うーん、どことなく高貴な感じはありますけど……」
「あ、でもガルーダって昔は有翼種族だったようだし、案外ガルーダの子孫だったり、とか……」
カンナ様は知ってるのかな、と唸りながら、戦況を窺っている環菜に目を向ける。
彼女はなにやら恋人の影野 陽太(かげの・ようた)と話しているところだった。
「……で、この全能弾を私にどうしろって?」
「ええ、この弾に君の『ルミーナさんを助けたい』と言う想いを込めて欲しいのです」
「そうすればおそらく彼女を救えるはず……、きっと一緒に込めたほうが上手くいくと思いますから」
「わかったわ」
全能弾の上に二人は手を重ね、想いを込める。
それから、弾丸を受け取った陽太はエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)に彼女の護衛を指示した。
「あら、もうよろしいの? もうすこし逢瀬を楽しんでも……」
「な、何言ってるんです。そんな状況じゃないでしょう。とにかく彼女を頼みますよ」
そそくさと飛空艇エンシャントに乗り込む。と、そこに環菜が駆け寄った。
「待って。私も行くわ」
「だ、ダメです。あんな危険な場所に……、大将は一番後ろでどっしり構えてるものですよ」
「私のパートナーを助けるのよ。全部人任せには出来ないわ。私にも行かせて」
「環菜……」
しばし迷ったが、実は考えるまでもなかった。こう言い出したら、彼女が意志を曲げるはずがないじゃないか。
幸いエンシェントは二人乗りでも高速戦闘が可能だ。彼女を乗せ、飛空艇は飛び上がった。
「わたくしは先を走って安全を見極めます。陽太たちはあとからついてきてくださいな」
ディテクトエビルや殺気看破、イナンナの加護を駆使しエリシアは狂った光を回避。
彼女の誘導に従って飛空艇は低空飛行でガルーダを目指す。
目標が射程に入ると、陽太はマシンピストルに全能弾を装填し構える……がふと環菜がそれを止めた。
「まだよ。今撃っても天眼で見切られる……このタイミングじゃないわ」
「ならばその隙、我が作ろう」
そう言ったのは仮面ツァンダーソークー1。
炎に包まれた森の樹々を軽々と踏み越え、仮面ツァンダーは縮みゆくガルーダの眼前に立つ。
「蒼い空からやって来て! ナラカもついでに護る者! 仮面ツァンダーソークー1!」
苦悶を浮かべガルーダは「貴様は……!」と仮面ツァンダーを見やる。
「言ったはずだ。貴公との決着は必ずつける、と……今が正にその時ッ!」
「図に乗るなよ……、トリシューラがなくとも貴様ひとりをくびり殺すなどわけはない……!」
「ふっ……、そんな表情で虚勢を張るな」
仮面ツァンダーはビシィと指を突きつける。
「小せぇ! ご大層な志を掲げるんなら! 好きな女に会う為に! その程度、気合で耐えろ! このヘタレ!」
「黙れ! 我が『天眼』の前に貴様の動きなど筒抜け、ナラカの塵に変えてやる……!」
炎を纏ったガルーダを前に、仮面ツァンダーは不敵に笑う。
「……そうだね、ボクの動きは見えてるかもね」
そして、マスクを外した。
すると、その下から出てきたのは幼さの残るティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)の顔。
「女……!?」
「行けっ! 仮面ツァンダソークー1ッ!!」
本物の仮面ツァンダー……風森 巽(かぜもり・たつみ)はツァンダースカイウィングを背に上空にいた。
全身を帯電フィールドで覆い、右足に錬気集中、雷気を一点に収束させる。
かてて加え、なんか調子に乗ったティアが撃ってきたサンダーブラストもその身に受けてフルボルテージ。
「愛した女を探し出す……、確かに貴公の思いを否定する事は誰にだって出来ないだろうさ」
カッと目を開き、青心蒼空拳の構えを取る。
「だけど! 誰もが貴公と同じ道を歩むと思うのは大間違いだ!」
次の瞬間、ティアの放ったシューティングスター☆ミが、彼の身体を引き寄せ急降下をさせた。
「空を切り裂く様に……駆け抜けるっ!! 流星っ! イナヅマッ!! キィィィィッックッ!!」
「ふん、またいつかのように焼き尽くしてくれる……!」
その手に紫炎をまとい迎撃態勢をとった……その時、遠方から無数の光の矢が飛来した。
それは英虎の創造した攻撃。彼からの援護射撃だった。無数の矢を見に受けて、耐性を崩すガルーダ。
「し、しま……!」
反射的に防御態勢をとったが、必殺の稲妻キックはガードを貫き、ガルーダの胸に突き刺さった。
さらにその刹那、蹴り込まれた全能弾が解放……ガルーダとルミーナを分つ、『分離の理』が発動した。
「ぐ……ああああああ!!」
再びガルーダ本体のビジョンがルミーナと重なるようにしてぶれ動く。
陽太はゴクリと息を飲んで引き金に指をかけた。
「愛する人との邂逅を願って暴走する君の気持ちはよくわかります。俺ももし環菜があのままだったとしたら……」
「陽太……」
「何千年も積もった想いには感じ入ります。しかし、手段と目的を取り違えてしまっては何にもなりません」
環菜は陽太の手にそっと手を重ねた。二人は見つめ合う。
「さあ、彼の目を早く覚まさせてやりましょう」
「はいっ!」
二人の想いを乗せた弾丸がガルーダを貫く。
同様の『分離の理』によって、朧げだったガルーダの像がはっきりと浮かび、ルミーナから引き剥がされる……!
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