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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第2回/全3回)

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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第2回/全3回)

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世界樹

 
 
「操縦感覚は、以前に近い……、いえ、やはり違いますな。今のうちに慣れておきませんと」
 イルミンスールの森上空を飛びながら、クリュティ・ハードロック(くりゅてぃ・はーどろっく)は受領したばかりのジェファルコンの慣熟飛行を行っていた。閃崎静麻に渡す前に、できるだけ補助できるようになっていなければならない。
 レーダーで確認すると、近くにプラヴァーの反応もある。そちらも新型機らしく、今のところは慣らし運転をしているような機動だ。他には、イルミンスールに向かう機影が一つ……、いや、どうやらアルマインが二機くっついて移動しているようだ。他に、森の中に見慣れぬ機体が一機、さらに高高度に機影が……、いや、すぐに消えたのでこちらは雲塊か何かかもしれない。
「しばらく、索敵でもしておきますかな」
 クリュティ・ハードロックは遺跡を中心にして旋回行動に入った。
 
    ★    ★    ★
 
「さて、乗ってきたはいいけれど、どうやってシフに渡した物かしら」
 ジェファルコンタイプのカスタム機アイオーンを運んできたはいいが、迂闊に遺跡に近づけなくて四瑞 霊亀(しずい・れいき)は森の中で困っていた。
 遺跡の周囲には、偵察機らしきイコンが無視できない数飛んでいる。その中をどうどうとイコン格納庫に入っていくのは、傭兵の存在を暴露してしまうのではないだろうか。
「えー、こんな所に入り口があ、たまさか歩いていたらとんでもない物を見つけてしまったあ、どうしよう……って、棒読みで言えば許してもらえるんじゃないの?」
「そんなわけないでしょ」
 無邪気なミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)に、四瑞霊亀は言い返した。
 追加外装などで艤装しているとは言え、まだ機体数の少ないジェファルコンでは、迂闊な行動はすぐにパイロットを特定される危険性がある。普通の作戦行動ならばそれをよしとすることもできるが、今回の作戦はどうも全体的に胡散臭いので、できればそれは避けたいところだ。
「じゃあ、もう少し整備しておこうよ。エクスプローシブ・ボルトとかの調整もしておきたいし」
 そう言うと、ミネシア・スィンセラフィが、ここまで飛んできたデータを元にして各部の再調整を始めた。
 
    ★    ★    ★
 
「遺跡が見えますね。まあ、まん丸ですよ。地面の下はどうなっているのでしょう」
 アルマイン・マギウスのモニタで遺跡を確認しながら『空中庭園』ソラが言った。
『う、うん、そ、そうだね』
 ややあって『地底迷宮』ミファから答えが返ってきたが、どうやら彼女の方はたった一人で慣れないイコンを操縦することに手一杯のようだ。とりあえずは、世界樹に行って新しい機体を運んでくればいいので、飛ばすことさえできればいいのだが。
 なんとか世界樹のイコン発着場まで辿り着くと、そこは予想以上の慌ただしさにつつまれていた。
 ぼろぼろになったアルマイン・マギウスを修理用ハンガーに固定すると、二人はやっとほっと一息ついた。その近くを、一人の精霊が通りすぎて……いや、なぜかレオタードを着て背中につけ羽根をつけたジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)であった。
「どうも、まだあまり慣れないのだ」
 お尻の部分のレオタードを引っぱって皺を伸ばしながら、ジュレール・リーヴェンディがまだ少し恥ずかしそうに言った。
「なんでそんなコスプレを……」
 思わず『空中庭園』ソラがつぶやく。
「知らぬのか。サブパイロットとしては、ちゃんと正規のパイロットスーツを着ないといけないのだ」
「それが、イルミンスールの正規のパイロットスーツなんですか?」
 『地底迷宮』ミファが聞き返すと、もちろんとジュレール・リーヴェンディが力強くうなずいた。
「私たちも、ああいう格好しないといけないのかしら……」
 何か納得できなくて、『空中庭園』ソラと『地底迷宮』ミファが顔を見合わせた。
 その間に、ジュレール・リーヴェンディがポンと床を蹴って深き森に棲むもののコックピットに飛び込んでいった。見た目背中の羽根で飛んだかにも見えるが、実際には機晶姫の能力で浮遊しただけである。
「さて、急ぎ戻るのだ」
 ジュレール・リーヴェンディは深き森に棲むものの羽根を広げると、遺跡にむかって飛びたった。
 
    ★    ★    ★
 
 世界樹の大型飛空艇の発着場には、風森望のシグルドリーヴァがすでに到着しており、負傷者の収容におわれていた。
「負傷者をお願い。それから、引き返すときに、あちらにいるイコンに補給物資を持っていきますので、可能な物を積んでください」
 人の流れをてきぱきと指示しながら、風森望が物資の搬入を依頼していた。火事は収集したとは言え、遺跡の出現に今後何が起こるのか予想もつかない。消火仕様のイコンが多い中、何かあっても戦えなくては宝の持ち腐れだ。
「物資の搬入は任せましたわ」
 ノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)が、シグルドリーヴァの艤装を担当していた。クレーン代わりの世界樹の枝が大きく撓って、大型飛空艇に次々と砲を設置していく。
「謎の遺跡というものは、封印されていた怪獣とかがいきなり出てくるのがお約束ですから。そんなお約束がまかり通ってしまうのが、ここパラミタ大陸でありますもの! 備えあれば憂いなし、というやつですわ!」
 すでに何かやる気まんまんで、ノート・シュヴェルトライテはシグルドリーヴァを戦闘仕様に換装していった。