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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
 いきなり増大した敵の数に、ココ・カンパーニュたちも防戦一方となった。
させないっ……!
 再びカプセルにむかって襲いかかってくる魔導球の群れにリネン・エルフトとフェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)が突っ込んでくる。多少自分の身体に魔導球がぶつかるのも構わずに、敵を蹴散らす。フェイミィ・オルトリンデに随伴してきたオルトリンデ少女遊撃隊が遅れて加わり、カプセルの周りの防御を固めた。
「ここは、私たちに任せて早く!」
 リネン・エルフトが叫んだ。
「中からだけじゃ……。ヘイリー、イーリで頼む!」
 その間に携帯を取り出すと、フェイミィ・オルトリンデが外にいるヘイリー・ウェイクに連絡をとった。
「急いで、ホワイトの救出を」
 襲ってくる魔導球を大剣で防ぎながらペコ・フラワリーが言った。
「分かるのかい?」
 困ったようにシリンダーについている操作パネルを見つめているチャイ・セイロン(ちゃい・せいろん)に、マサラ・アッサム(まさら・あっさむ)が訊ねた。
「さあっぱりい分かりませんわぁ。困りましたあ」
 むやみにはいじれないと、チャイ・セイロンが困っていると、後ろからベリート・エロヒム・ザ・テスタメント(べりーとえろひむ・ざてすためんと)がやってきた。
「こんな物は、適当に叩いたって動く物です。ここは、テスタメントにお任せ」
 そう言うと、コンソールのボタンをでたらめに押しかけた。間一髪、アラザルク・ミトゥナがその手をつかんで止める。
「私がやろう。方法は、あの騎士が教えてくれた」
 アラザルク・ミトゥナが、操作パネルに解除コードを入力していった。眠り姫のアストラルミストを受け継いだときに、いくらかの記憶をも受け継いだらしい。
「まだなのぉ?」
 秋月 葵(あきづき・あおい)が、サイコキネシスで魔導球同士の軌道を変えて衝突させながら言った。
「今、イコンとの接続を一つずつ解除している。時間はかかる!」
 メイちゃんたちと共にアルディミアクのカプセルを守りながら、アラザルク・ミトゥナが答えた。どうやら、アルディミアク・ミトゥナの意識は、この巨大イコンとリンクしている状態らしい。無理に引き剥がすことは危険だった。
「早く出て来てほしいデース。準備ならもうすぐできマース」
 すぐ傍で、この状況にもかかわらず携帯調理セットでカレーを作っているアーサー・レイスがニコニコしながら言った。眠り姫はカレーを勧める前に姿を消してしまったが、アルディミアク・ミトゥナにはおめざカレーを絶対に食べさせるのだと野望に燃えている。
「せめて、破片だけでも拾って屑鉄屋に売ってやるんだからあ」
 床に散らばった魔導球の破片を拾い集めながら、日堂 真宵(にちどう・まよい)が叫んでいる。死んでもただでは戻らないつもりだ。
「サイコキネシスが使えるならぁ!」
 秋月葵が、魔導球の破片のいくつかをサイコキネシスで宙に浮かべた。
「ああっ、私の破片が、お小遣いがあ」
 待ってと、日堂真宵が空中の破片をつかみ取ろうとする。
「いっけー!」
 秋月葵が、浮かんだ破片をアラバスターへと投げつけた。それをアラバスターが払いのける隙に、一気に接近して格闘戦を仕掛けようとする。
 だが、直前で、高周波ワイヤーを振り回した魔導球が襲いかかってくる。紙一重でスライディングすると、秋月葵は下から魔砲ステッキの一撃で魔導球を砕いた。
「アラバスターは?」
 敵を探すが、すでに移動している。この乱戦では、なかなかに近づくのも難しい。
「アルディミアクに近づけはさせません」
 エシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)がアナイアレーションで一気に決めようとしたが、活性化した遺跡の中では取り出した光条兵器の輝きは生まれなかった。
 だが、一応警戒したアラバスターが素早く移動する。
 その間に、エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)がレセプターの陰に機晶爆弾をセットしていった。セットが終わると、効果はないと分かっても、レーザーガトリングで敵の注意を引く。その間に、今度は、エシク・ジョーザ・ボルチェが機晶爆弾を仕掛けていった。
 チャンスがあれば、それを爆発させてふいをつく作戦だ。
「このイコンの制御などはさせんぞ!」
 アラバスターが魔導球を突っ込ませて、ついさっきまでけんちゃんが突き立てられていた台座を破壊しようとした。
「させません!」
 すかさず、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が古代シャンバラ式杖術を駆使して、魔砲ステッキで魔導球を打ち返した。
「台座を壊そうとしているのか?」
 御凪 真人(みなぎ・まこと)が、アラバスターの意図を読みとろうとした。
 意図的に壊そうとするのであれば、それは都合が悪いと言うことだ。だとかれば、それは自分たちにとっては逆に現状打破のキーポイントになるはずだ。
「台座を破壊させてはいけません。きっと、隊長にとって都合悪い物のはずです!」
 そう言いつつ、御凪真人がブリザードを放った。だが、中央コントロールルームに無造作に林立したエネルギーレセプターから目映い光が迸り、魔法を途中で吸収してしまう。
「魔法が使えないんだったら、今の俺には好都合だ」
 緋桜 ケイ(ひおう・けい)が、龍骨の剣を振って、御凪真人のブリザードでわずかに表面を曇らせた魔導球をカキンと小気味よく弾いた。だが、レセプターの六角柱にバウンドした魔導球が、別の角度から緋桜ケイに襲いかかろうとした。
「逸れよ!」
 御凪真人が風術で魔導球の機動をずらす。多少弱まっているとはいえ、収束した高エネルギーを持たない魔法は多少有効のようだ。
「おっと」
 風術でふらついた魔導球を、閃崎静麻がハンドキャノンで打ち砕いた。
「隊長さんよ、貴様、よくも俺たちをだまくらかしてくれたな。いったい、何が目的だ?」
「傭兵風情が、それを聞いてどうする。」
 閃崎静麻の言葉に、アラバスターが答えた。
「いや、なあにね、納得できる答えなんかをちょっと期待したりもしているんだが。教えてくれないか。別に減るもんじゃないだろ」
 執拗に話しかけながら、閃崎静麻が隙をうかがった。さりげなく、機晶爆弾を蹴ってアラバスターの足許へと転がす。
「ちょこまかと!」
 ココ・カンパーニュが、再びアラバスターに拳を叩き込もうと突っ込んでいった。
 タイミング悪く閃崎静麻の機晶爆弾が爆発して、ココ・カンパーニュとアラバスターが爆風に吹き飛ばされる。
「馬鹿野郎、こんな狭いところで爆弾を使うなよ!」
 尻餅をついたココ・カンパーニュが叫ぶ。
「しまった。だが!」
 間髪入れず、閃崎静麻がアラバスターを狙撃したが、レセプターの裏側へと逃げ込まれてしまった。
「逃がしません」
 レイナ・ライトフィードが、自分の視界に入ったアラバスターに乱撃ソニックブレードを放った。
 複数の風の刃が飛び、アラバスターを切り刻んだかに見えたが、直後に床に落ちて砕けたのは魔導球だった。
「幻影……、ホログラフですか」
 みんな惑わされるなとレイナ・ライトフィードが注意した。複数のアラバスターが、レセプターの間をランダムに移動していく。
「これは、さっさと外に出た方が賢明よね」
 伏見 明子(ふしみ・めいこ)が、さっさととんずらを決め込んでコントロールルームを後にする。
「ここは皆に任せて、ハーティオンは外でイコンを迎え撃った方がいいよ。鈿女も駆けつけるってさっき連絡があったし。中の様子は、あたしがここに残ってちゃんと伝えるから」
「分かった。くれぐれも無理をするではないぞ」
 ラブ・リトル(らぶ・りとる)に言われて、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)は自らをもっともよく生かせる戦場へとむかっていった。
「ここは、私怨を挟むべきではないですね。アラバスターよ、外で待っている。遊んでいないで、さっさとイコンの所へむかうのだな!」
 プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)を着た紫月唯斗が、あえてアラバスターを挑発した。
「若造が。言うものだな。待っていろ」
 紫月唯斗のすぐ傍でアラバスターの声がしたが、姿は見えなかった。
「分からないなら、全部倒せばいいんですよ」
 飛び出したサツキ・シャルフリヒター(さつき・しゃるふりひたー)が、カクタリズムで台座に迫ろうとしていた数人のアラバスターを吹き飛ばした。だが、巻き添えを食らって、台座近くにいた者たちも後ろに吹き飛ばされる。レイナ・ライトフィードが左手に持っていたレプリカデュエ・スパデが床に落ちて跳ねた。
 その混乱の間に、紫月唯斗たちもコントロールルームから姿を消していた。
「ふう、疲れましたあ……」
 メンタルアサルトでへたり込んだふりをするサツキ・シャルフリヒターの周囲に迫ってきた魔導球を、またたび 明日風(またたび・あすか)の釣り竿と雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)のゆる族の魔糸が牽制する。それに反応してワイヤーをのばした魔導球が、激しくそれらの糸と斬り合いをくりひろげて絡まった。
「こいつう……」
「私の釣り竿が!」
 巻き込まれかけて、雪国ベアとまたたび明日風が、あわてて得物を手放した。
「お任せを。そうれえ」
 糸巻き玉のようになった魔導球を、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)が絆の糸を絡ませて壁の方へと放り投げた。
「今だもん、リンちゃん、一緒に! どこへ逃げても撃ち抜くよ
 対神銃を構えた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、リン・ダージ(りん・だーじ)に声をかけた。
「いいわよ。それ!」
 素早くスカートの前をはだけると、リン・ダージが細い太腿のガーターリングに取りつけたホルスターからハンドガンを引き抜いて小鳥遊美羽と共に魔導球を狙撃した。
「うっ……」
 砕け散る魔導球と一緒に、思いっきりリン・ダージのショーツを目撃してしまったコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が、真っ赤になって鼻を押さえた。