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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

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「僕たちはどうするんですか?」
 ちょっと心配そうにコハク・ソーロッドが小鳥遊美羽に聞いた。一応の翼はあるものの、コハク・ソーロッドの翼は右側が羽根の翼で左側が光の翼だ。小鳥遊美羽とローゼンクライネの二人をだきかかえたまま長い距離を飛ぶ自信はあまりない……というか、いくらこの二人でも女性をずっとだきしめたまま飛ぶというのは……。
 いきなりリン・ダージの姿を思い出して、コハク・ソーロッドがあわてて鼻筋を押さえた。
「すいません、よければ乗せてくれません?」
 コハク・ソーロッドが役にたたないのを早々と感じとった小鳥遊美羽は、ジャワ・ディンブラに乗せてくれるように頼みに行った。
「ココたちは飛空艇に乗るようだからな。構わないぞ」
「わーい」
 快諾してもらったので、コハク・ソーロッドたちを呼んで、よいしょっと小鳥遊美羽がジャワ・ディンブラの背によじ登った。
「よし、多少不安定だが、なんとか飛べるだろう」
 バタンと、ソーマ・アルジェントがゴチメイ飛空艇のボンネットを閉めた。
「まあ、最近調子がいまいちでしたから。ありがとうございました。さあ、みんな、早く乗り込んで」
 ぺこりとお辞儀をしてから、ペコ・フラワリーがゴチメイのみんなに呼びかけた。
「よし、脱出だ」
 ココ・カンパーニュが、中型飛空艇に飛び乗る。
「ちょっと押さないでよ」
「なんで男が乗ってるのよ」
「痛い痛い」
「きついですわあ」
「ちょっと、この状況は」
「……」
うゆ、もうだめなの……
 いきなりぎゅうぎゅう詰めになって、中に入った者たちが悲鳴をあげた。
 ローザマリア・クライツァールたちと、清泉北都たちも便乗する形で乗り込んできたのである。それでなくても、ゴチメイのメンバーに加えてアラザルク・ミトゥナとメイちゃんたちも増えている。
「定員オーバーです」
 運転席のペコ・フラワリーが言った。十六人はさすがに定員オーバーだ。
「いてててて、えーい、めんどくさい。ペコ、さっさと出しちゃえ」
 今さら追い出すのもめんどくさいと、ココ・カンパーニュが叫んだ。
「ああ、私たちも乗せて……」
「見るからに無理だろうが」
 さらに便乗しようとした秋月葵をフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』があわてて引き止めた。
 ゴチメイ飛空艇が、よたよたしながら格納庫を出発していく。
「大丈夫なのか?」
 かなり心配しながら、小鳥遊美羽たちを乗せたジャワ・ディンブラが後に続いた。
「そのまま行かせるものですか。のせーてー。とうっ」
 格納庫から出た飛空艇が定員の重さでいったんがくんと沈んだところへ、日堂真宵たちが次々ジャンプして飛び乗ってきた。
「とうっ」
「とうっデース」
「きゃあぁぁぁ」
 飛空艇の屋根に、どかどかと四人が落っこちてくる。いや、いつの間にか混じっていたまたたび明日風も一緒だ。
「ば、馬鹿! そんなに乗ったら墜落すぅぅぅぅぅ!!」
 窓をあけてココ・カンパーニュが叫んだが手遅れだった。
 大勢を乗せた飛空艇が墜落していく。途中で、バラバラと日堂真宵たちが振り落とされていった。かろうじて、またたび明日風だけが車体にしがみつき続けている。
「ペコ、立て直せ!」
「やってます!」
 そのまま地面に激突するかと思われたとき、ガキッという衝撃と共に落下がとまった。
 ブーンという音をたてて、兼定が大顎で飛空艇を挟んで支えている。
「うぎゅう〜。どいてどいて」
「こら、どこ触ってる」
「重い〜」
「……」
 シェイクされて直立にされた飛空艇の中では、中にいた者たちが折り重なって悲鳴をあげていた。
「よくやった」
 頭の上にすっくと立った土方歳三が、兼定を褒めた。その後ろには、姿は見えないがフラワシの天国への扉もいる。
『なんでいきなりおっこってきたのかなあ』
 日堂真宵とアーサー・レイスを両手につかんだ深き森に棲むものの中から、カレン・クレスティアが呆れたように言った。
『大丈夫ですか?』
 脱出者の搬送をしていた久我浩一が、マインドシーカーでベリート・エロヒム・ザ・テスタメントをつかんで訊ねた。
「きゅう〜。テスタメントを早く下ろしてほしいのです」
 逆さ吊りでお猪口になっているベリート・エロヒム・ザ・テスタメントがかろうじてそれだけ言い返した。
「よかった、乗らなくて」
「うむ、まったくじゃ」
 惨状をまのあたりにして、ほっと胸をなで下ろした月詠司に、ウォーデン・オーディルーロキが言った。
「来たか、イーリ」
 近づいてくる大型飛空艇を見て、リネン・エルフトが自慢げな顔をした。
「さあ、乗り物のない者たちは早くイーリに乗って」
 リネン・エルフトに言われて、甲板を格納庫に合わせて接舷したアイランド・イーリに、悠久ノカナタと雪国ベア、瓜生コウや、月詠司たちや、樹月刀真たちが乗り込んでいった。フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』をかかえた秋月葵が、空飛ぶ魔法↑↑で、ふわりと甲板に降りる。
「ふう、やっと古巣に戻って来たって感じだぜ」
 部下たちを連れて、フェイミィ・オルトリンデがリネン・エルフトと共に艦橋に行く。
もうっ! 世話が焼けるわねっ。でも、お帰りなさい。御苦労様」
 ヘイリー・ウェイクが彼女たちをねぎらった。
「まだ終わってはいないわよ。ひとまず、この人たちを地上に運ぶのよ」
 リネン・エルフトがヘイリー・ウェイクに言った。
「対空監視、気を抜かないで。イーリ、発進!」
 ヘイリー・ウェイクの命令で、アイランド・イーリが遺跡から離れていった。