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インベーダー・フロム・XXX(第1回/全3回)

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インベーダー・フロム・XXX(第1回/全3回)

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【0】PROLOGUE


「……と言うわけで、これがパトロールマップです」
 アイリ・ファンブロウ(あいり・ふぁんぶろう)はHCに海京の地図を表示させた。
 時刻は朝8時を過ぎた頃だろうか、登校する天御柱学院の生徒が通りに溢れている。
「今晩も出動しますから、寿子さんも目を通しておいてください」
 遠藤 寿子(えんどう・ひさこ)は一瞥して、不安気な顔を覗かせた。
「ほんとにやるの? しばらくは大人しくしてたほうがいいよ、危ないよぉ」
「大変な事が起こっているのに、私たちがビビってどうするんですか。あなたも魔法少女の自覚を持って下さい。最悪の未来を未然に防げるのは私たち魔法少女だけなんですよ。寿子さん……いえ、魔法少女ポラリス!
「はうー……」
 寿子のHCに転送された地図は、主に海京の西区が重点的にチェックされていた。
「……私の予想が正しければ、この事件は、単なる殺人・破壊事件ではありません。おそらくクルセイダーは2022年に起こったあの”大惨事”に関与しているはず……。あの大惨事だけは食い止めなくてはなりません」
「大惨事って、アイリちゃんが前に話してくれたあれの事……?」
「ええ、あなたにしか話していない未来の出来事です。そのためには、彼らに対抗出来るだけの仲間を集めないと……」
「でも、山葉会長の様子だと、信じてもらうのは大変そうだよね」
「そりゃ何の実績もない奴の言う事なんか、生徒会は信じやしないよ」
 とぼとぼと歩く二人の背中に、生徒会副会長の茅野 茉莉(ちの・まつり)が声をかけた。
「あんたの噂は聞いてるよ、アイリ・ファンブロウ。あたしは茉莉。茅野茉莉って言うんだ」
「私もあなたの事は知っていますよ。なんでも、罰掃除と反省文のエキスパートだとか。噂に聞いただけですけど」
「お互い、悪名ばっかり有名みたいね」
 茉莉はニヤリと笑い、それから、先ほど山葉とアイリが話しているのを偶然立ち聞きした事を告げた。
「まぁ、あたしも未来人だのなんだのってのは、正直信じられないけど。でも、あんたの言うクルセイダーが実在するならそいつをとっ捕まえてくれば、山葉やあたし達生徒会を納得させる十分な証拠になると思うわ」
「クルセイダーを、ですか……」
「むずかしい?」
「何度となく彼らとは戦いましたが、捕まえる事は一度も出来ませんでした……でも、それが確実な手段ですよね」
「証拠を突き付けられて、現実から目を背けるほど、うちの生徒会は馬鹿じゃないわ」
 それからもうひとつ、と茉莉は続けた。
「あたしが言うのもなんだけどさ。風紀委員に目ぇ付けられ過ぎだから、あんた」
「うぐ……!」
「校内で『魔法少女になってくださ〜い☆』なんて、宗教の勧誘か、完全にアタマ湧いてる奴だから」
「うぐぐぐ……!!」
「……ま、もう少しやり方ってもんを考えないと」
「そ、そこは私も悩んでるところなんです。何か良い方法はないでしょうか……」
「じゃあ、その……魔法少女の集まりを”同好会”にするってのはどう?」
「同好会?」
「一応、認可された団体になれば、そう風紀委員に睨まれる事もないだろ。勧誘も同好会の勧誘ってことになるし」
「なるほど。同好会か……そうですね、いいかもしれません。ありがとうございます。頑張ってみます」
「別にいいよ、礼なんて」
「……でも、どうして私達にそんな事を教えてくれるんです?」
「ま、副会長に立候補した時に、どんな小さな声にも耳を傾けるって公約した手前はね……」
 とは言ったが、彼女には”生徒会下部組織”としてアイリ達の活動を管理支援すると言う思惑がある。
(……風紀委員はやり過ぎる傾向にあるからね。勝手な真似をされる前にこちらでクルセイダーを確保しておきたい)
「あ、同好会の設立には最低5人は必要だから。頑張んなよ」
 茉莉はひらひらと手を振ると、学校への道を急いだ。